俺がゲームに大量課金した結果、異世界で自由を謳歌しています。

まかろんたわー

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第一章・美麺を制する者、世界を制す

兵糧の重要性

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つかつか、と黒のストラップシューズの足音を立てながら、工場の様子を視察する俺とカルメン。

衛生面は(この世界にも想にも中世的な知識しかないものの)徹底している。頭髪、垢などから発生する細菌に注意を払っている。

このラーメン会社「フェニックスヌードル」の社員達は茶色の防護服に身を包んで作業をしていた。

カルメンがどういう訳か持ち込んだ謎のカップヌードルの技術は、もはや「カップヌードル」とは呼べないほどにまで改良・改訂を重ねられていた。

「他国を強化するきっかけを与える国は壊滅するといいますが、この「フェニックスヌードル」の技術は秘蔵とされており、一部の北の国の幹部らにしか知られていません。
また、類似品が海外・国内共に一部出回っているようですが、本国のインスタントラーメンは他企業の模造品に比べ、品質・コスト的にも圧倒的に良質です。また、インスタントラーメンの売り上げ費用の一部を缶詰や他のインスタント商品などの研究費に回しており、他の食品メーカーの中でもダントツの実績を築いています」

そう自信たっぷりに語るのは軍の元補給部隊隊長であり現「フェニックスヌードル」社長・フィリッパ・ジュール。

流れるようなオレンジ色の髪をした少女だが、軍人としての気質は未だ衰えていない。表向きはただの商人であるが、商人もまた軍には必要不可欠な存在である。

「飯の切れ目が兵の切れ目というからな。衣食住が揃わないのに、なにが平和か」

俺は箱詰めされていくカップヌードル…いや、フェニックスヌードルをみながら言った。

「戦争指導者にとって最も大変なことは、武器を振るって戦う勇気でも、敵の作戦を読む知略でもありません。戦禍での最大の重要毎は、すなわち、食料であります」

フィリッパは言った。

「ああ、常温長期保存可能な食品の開発は、我が国の命運を握る。食品メーカーの世界№1を維持するということは、それすなわち我がアスワドがこの「スーパーソニックブレイド」界において№1だという事だ」

食品の開発に力を注ぐ事は、飢餓や略奪、強姦などの犯罪の減少、商人の質の向上、領土の荒廃の防止などメリットしかない。

なによりも、食料が安定する事で、軍の士気が上がる。

「そもそも、私、アデリナ・エッジワースが吸血鬼の王国・アスワドを作る以前、世界中の吸血鬼達は日光を避け、血液という餌を求めやみくもに各地を放浪する人狼族同様の流浪の民であった。その自由だが結束に欠ける吸血鬼族を世界一の軍隊に仕立て上げたのは、吸血鬼族らに愛郷心という名の軍としての結束と日光という強敵からの開放を与えたからに他ならない。

そして、血液はフェニックスヌードルと違い、未だ長期的な安全な保存が効かない。しかし、フェニックスヌードルを開発していく過程で、血液保存の研究にも役立つかもしれない」

現にその様な夢を見る北の研究者は多い。

「やはり、最大の目的は血液の長期的保存ですか」

カルメンがいう。

「そうだ。吸血鬼の最後の難関。それは吸血が必要だという事。それ故に、長年吸血鬼の民は他国の人々から畏怖され、忌み嫌われてきた。手酷い扱いを受けることもあった。だが…」

俺は理想を語る。しかし、夢で終わらせる訳にはいかない。

「その血液を人工的に作り出すことができれば、その数万年に渡る風評被害からも、開放される」

「……今はまだ夢ですがね」

フィリッパ。

「そうだが、明確な目的ではある」

俺。

基本的に軍人は戦争を望まない。なぜなら、戦争ほど軍を失うものはないからである。

戦争は軍事力を発揮できるチャンスだが、それと同時に軍事力の多大なロスに繋がる。

だから、この食料開発も軍事力という平和としての力の為には必要なのである。

軍事力の強化というと、戦争を望んでいるかのように誤解されがちだが、平和な国ほど軍事力に長けている。なぜなら、自治意識が高いからである。

戦争をして儲けようなどというのは、もはや古い中世的な考えでしかない。他国から資産を略奪した所で、自国の質が向上しよう筈がない。

かえって、倫理観などの民の質が劣化していくだけである。

戦争はやむを得ない時に行う必要悪であり、軍事力はあくまでも平和の為に活用すべきである、とアデリナは考えている。

「そもそも、領土を無理矢理奪い、王の強制的な命令だけで動く他国民を編成した軍隊では、士気が低く、効率も悪い上に、裏切り行為などのリスクが高いからな」

アデリナは飄々と言った。

「我が軍隊の者らは、みな漆黒の大地を同郷とする者ばかりです。そして、敵には同郷の者がいる事は絶対にありません。それは、すなわち他国の者を略奪して無理矢理兵にするという事がないという事です。ここまでの結束を高めるのに、何百年の月日を費やしたか…」

カルメンは遠い目をして言った。

「放浪の民に同郷心を芽生えさせる事は、筆舌に尽くし難い苦行であった。また他国の民を略奪しないという誓いを人狼の長と立てたのにも、デメリットはあった。だが、国が豊かになれば、自ずと同郷の者は増えていくものなんだよ…」

俺は工場を出た。漆黒の馬車に乗る。

「それでは、また」

フィリッパが軽く会釈した。

「ああ」
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