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本編
2 皇妃様のお茶会と言う名の集団お見合い ローゼSide
しおりを挟むうわぁ……いるわいるわよ、うようよ?
いえいえ彼女達は決して魔獣の類いではないわね。
遠く離れた私の場所からは、見目麗しい皇太子殿下のお姿なんてものは全くと言っていい程見えない。
まぁ別に率先して見たい訳でもない。
きっとあの令嬢達の中心におられるだろう殿下の周りには、伯爵家以上の令嬢達が我こそはと言わんばかりに未来の皇太子妃、若しくは側妃の座を狙い澄ましている。
いえいえ憐れ……でもないわね。
可哀想な子羊風を装った殿下を、涎を垂らし今にも獲物へと咬み付かんとする半野獣化となった令嬢達との様子は、見ていて実に小気味いいわ。
偶にお母様引よりき摺られる様にして宮殿へ伺候した折り、これまた偶然そこにいたと思われる皇太子殿下。
確かに殿下の容姿もだけれど、その姿全てが美し過ぎる。
でも私からすれば、何とも気持ち悪いくらい澄ました表情で、まるで笑顔の仮面を常に装着している様な感じがするのだもの。
誰に対しても卒の無い振舞い、皇族らしい横柄さは感じないものの、でも殿下は決して他を寄せ付けないオーラを常に周囲に放っている。
そう罷り間違いうっかり近づこうものならば、彼の放つだろう鋭い刃物で痛みを全く感じる間もなく、スーッと音もなく皮膚が綺麗にパックリと二つに裂けてしまう様な恐ろしい覇気を纏っている。
私は幼い頃より何故かそんな殿下の纏うものが怖くて仕方がなかった。
普通の人、そうねお父様やお母様でさえ全くお気づきになられない。
きっと何の抵抗も感じる事無く殿下へ近づく者達は、皆気付いてはいないのだろう。
殿下のお腹の中は闇よりも真っ黒である事に……。
そして何を隠そう私は、とても我が身が可愛いの。
また命は惜しい。
何故ならまだ7年しか生きていないのだものね。
そんな幼い私に出来る事はただ一つ――――。
災難へは自ら進んで近づく事なかれ。
だから今日のお茶会にもはっきり言って私は出席したくなかったの。
でもお母様に逃げられない様首根っこをしっかりと掴まれ、嫌がる私を馬車へと放り込み、あっという間にお茶会へと連れ込まれてしまった。
そうしてお母様達は微笑みながら別のサロンで大人だけのお茶会へと参加し、ここには頼りになる者――――はいない。
友人も何名か参加をしてはいるけれども皆殿下の許へと、少しでもお近づきになりたいらしい。
因みに現皇帝陛下には皇妃様と約三十人もの側妃様がいらっしゃる。
何でも遥か昔に天空におられると言う龍王族の血脈を、何を隠そう我がメーディス帝国の皇族方は連綿と受け継がれているらしい。
まあ高位貴族の幾つかの家は実際皇族との姻戚関係にもあるとかで、龍王族の血を受け継いでいるのかもしれない。
我が家ももれなくその幾つかの中に入っているわね。
でも角もなければ翼や鱗なんてものはないわよ。
私は至って普通の人間。
魔力も並みだもの。
そうそう皇太子殿下の頭には先祖返りの特徴が色濃く出たらしく、頭には太ーい二本の角がしっかりと生えているわ。
龍王族の方は皆この世と思えない程に見目麗しい方ばかりだとも伝えられている。
だから殿下の美しさも自身の血が持つ故なのかもしれない。
また龍王族は長命でもある所以なのか、兎にも角にも出生率が何故か低いのよね。
その高貴なる血を受け継いだ代償かもしれないけれども、特に皇族方には御子の誕生が本当に少ないの。
現皇帝陛下の御子は皇太子殿下と側妃様のお一人がお産みになった皇女様のお二人だけ。
あーんなに沢山の女性がいるのにも拘らずによっっ。
過去には側妃を五十人も召し抱えてやっとお一人だけの御子を授かったという歴史もある。
子供の私が聞いていても笑えない事実。
あの皇太子様は一体この先、どれだけの女性を召し抱えになるお心算なのかしら――――って、私には全く関係ないけれど……。
何故関係がないのかって?
ふふ、私はね、沢山いる中の一人は嫌なの。
お父様とお母様の様に、それから昔読んで貰った物語の様に私だけを愛する私の王子様と二人で仲良く、そして末永く幸せになるの。
きゃっ。
もっと大きくなって、何時か出逢うだろう私だけの王子様の事を考えるだけで顔がとても熱くなるわ。
ここで少し冷静にならなければね。
そうそう宮殿で作られるお菓子やケーキはとても美味しいの。
駄々甘くなく、すっきりとした甘さで幾つでも食べられるの。
気持ちを落ち着かせる為にも、大きなテーブルに綺麗に盛られたお菓子とお茶を楽しみましょう。
だあれも見向きもされない可哀想なお菓子さん達。
安心なさって頂戴。
私が沢山食べてあげましてよ。
この時の私はまだ何も気付いていなかった。
その行動の全てが見張られている事にね。
そして人生の墓穴を目下絶賛掘り出している自分を、全身全霊を込めて止めたかった。
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