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第一章 出会い?
悪夢
しおりを挟むあぁ…思いだした、これで何度見たであろう…この夢を。
そう…あの坊やがお父様に願い出てから今日で1週間経つのだ。
毎日毎日同じ悪夢を見てしまう。
そして毎朝毎朝…色取り取りの花束が届けられる。
『マイ・ディァ…』と書かれたカードを添えて…。
さっきクレアが言っていた様に、あれから1週間後の今日…私とあの坊やの婚約披露の夜会が執り行われる…らしい。
私としては悪夢以外何モノでもない。
だって…私はこの婚約に最初から同意なんてしていないのだからっっ!!
あれは彼が願い出たその後の事…………。
「この様な場で誠に申し訳ありませんが、ここに居られる麗しき姫君…アンフィリアン・ユージェニー・レクストン様との結婚をお許し頂けないでしょうか?」
彼の持つ…テノーレ・スピントの様な重量感があって、その美しい姿に似合わず雄々しさのある声で国王であるお父様へと申し出た。
当然――――隣にいた私は吃驚…ええ、これ以上ないくらい驚いしまったわ。
まぁ…私だけでなくその場にいた者全てがね。
この国きってのイケメンで数多の女性と浮名を流した名うての遊び人であり、名門公爵家の当主が7歳も年上の…しかも行き遅れのユリの王女と名高い私への求婚。
有り得ない…全く以って有り得ないお話し。
国王であるお父様も一瞬玉座よりずり落ちそうになられ、慌ててお母様が引っ張り上げたくらいですもの。
お兄様もお顔が引き攣っていらっしゃるのが見て取れたわ。
マリーローズはとても愉しそうだったけど…。
当の私は…情けない事に顔を引き攣ったまま立っているのがやっとだった。
姪のルーレシアは遠くでこの話を聞きつけて、恐ろしい勢いと形相でホールの真ん中を突っ切リ、気絶しそうな私の身体をゆさゆさ揺らす。
「ねぇ…嘘でしょっっ、嘘だと言ってアンっっ!! アンは何処へも行かないって何時も言っていたじゃないっっ!!」
ええ…言っていたわ、さっき…いいえ今でもそうなのだけど、愛しいルーレシア…お願いだからこれは夢だと言ってくれないかしら?
ルーレシアは泣きそうな顔で私に抱きつこうとした時だった。
「ルーレシア姫…私の愛しい姫に女性と言えど、あまり抱きつかないで頂きたいものです。彼女はもう…私のモノなのですから…」
「「「「「―――――――――…っっ!?」」」」」
「な…ななな――――――っっ!?」
「アンっっ…ま…誠なの…か?」
「アンっっ!!!」
「嘘も偽りもなく――――私の心は既にアンフィリアン様のもの。陛下…改めてフェンリーガ公爵家としてアンフィリアン王女を貰い受けたい」
その声は澱みなく澄みきっていた。
そして有無をも言わせない絶対的な威圧感は半端なかった。
フェンリーガ公爵家は王家よりも古く…影の王室と言われる程の絶対的な権力を有していた。
今までも色々と王家と支えてくれた筆頭の公爵家。
その公爵の望みは王家にひっそりと咲く百合の花。
勿論王族の結婚は会議に掛けられ認められなければいけない…が、公爵の望みはぼほ叶えられるだろう。
暫くしてようやく落ち着きを戻した国王は、公爵に告げた。
「わかった…取り敢えず会議に掛けさせて貰おう。しかし…姫は7歳も年上だが…」
父親として可愛い娘の嫁入り先はとなると、国王であっても気になる所…だがそんな杞憂する国王へ公爵は嫣然として微笑み言った。
「私は姫の全てを愛しております…年齢等と言う瑣末な事は何の障害にもなりはしません。私にとって姫こそが全てなのです」
「そうか…わかった、姫を頼むぞ公爵」
「勿論に御座います…陛下」
そうして公爵とアンはその場より下がって行った。
アン…私はただただ呆けてました。
何もかも信じられなくて…。
こんなに呆気なく…自分の気持ちを無視されて結婚とは決まるものかのか…と、今まで何の為に数ある見合いを断わってきたのだろう…と思えば何か非常に空しくなってしまった。
きっと王室会議での私の結婚は何の問題もなく決まるだろう…。
そして決まれば…もう私個人の意見なんて関係なく――――結婚させられてしまう。
こんな坊や…と思っている男性と…そう思うと堪え切れなった思いが、涙となって瞳から溢れてくる。
周囲はその涙を見て…感動の涙と思ったのだろう。
そんな私を公爵はそっと控えの間へと連れて行く。
その姿も周囲の者にとっては微笑ましく映ったらしい。
だが…私は感動なんてしてはいないっっ!!
これは怒りだっっ!!
自分の人生が思わぬ方向へ山から転がり落ちるおむすびの様に転落して行き、そしてそれを止める事も出来ない自分と…そう仕向けた公爵に対しての怒りなのだっっ!!!
ソファーへ腰を下ろした私へ公爵は良く響くテノール・スピントの声に男の色香を混ぜ合わせ、耳元で囁く。
「愛しいアン…どうかそんなに泣かないで」
普通の女性ならばその声音にゾクリと身を震わせ…きっと彼の命じるままに何もかも捧げるだろう。
だがしか~しっっ、私はそうはならない…いや、背筋をゾクゾクとした甘い痺れが上下に走っているのは自覚している…が、そんな事で負けてられはしないっっ!!
私の人生が係っているのだから…。
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