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第39話
しおりを挟むクレアさんとの話が盛り上がってしまって、気付けば夕方だった。
ヴィンスにもお礼をしに行かないといけないし、食材も調達してこないと。
クレアさんをお見送りした後に私も外へ出た。すると、食材を手に抱えたギルさんがいた。
ルーン村で積極的に育てているのは果物や野菜、穀物だけど‥最近は街から買い寄せた家畜の飼育も始めているし、食料を求める害獣達を駆除してその肉も食料になっている。その為、ギルさんが抱える紙袋には様々な種類の食材が入っていた。
「ギルさん!買い出ししてくださったんですね!ありがとうございます!」
ギルさんは常にエルマーさんやオリヴァーさんと協議を重ねて、人員を割り振ったり課題を見つけたり、今後の見通しを立てたりと大忙しだ。時には先頭に立って害獣を駆除したり賊と戦ったりもしてる。なんだか最近、プラスト領と他の地域との境界に砦を築いたりもしているとか。
それでもこうして、食材の調達や家事なんかも当たり前にやろうとしてくれるから、同居する私は感謝しっぱなしだ。
「今日はゆっくりしてろって言っただろ。どこ行くつもりだよ」
やれやれと言った様子で家の中へ入っていくギルさん。
「食材を買いに行こうかと‥!あと、ヴィンスへのお礼もまだだったので」
あぁ、そういえばあのお気に入りのワンピース、肩甲骨の部分破けちゃったんだよね。あとで縫って直さないと‥!
私気を失っちゃってたけど‥昨日目覚めた時にはあのワンピースはもう着ていなかった。一体誰が着替えさせてくれたのかな‥?クレアさんかな。まさかギルさんとかヴィンスってことはないよね‥?
思わず想像してしまった私は、あまりにも恥ずかしすぎる光景を思い浮かべて頬を赤くした。どうしよう、目の前にいるギルさんの顔が見えない‥!
「‥‥‥なんでそんなに赤くなってんだよ。
今日はもう遅いから明日でいいだろ」
「え?でもまだ夕日も出てますよ」
全然活動できる時間なんだけど‥
「いいから」
ギルさんがこうして言うのは凄く珍しい。よっぽど私の体を心配してくれてるのかな?なんだか嬉しいな。
「分かりました!」
最近どことなくギルさんが不機嫌な時があるんだよね。私、気付かないうちに何か気に触ることしちゃってるのかな‥
次の日、私はヴィンスにお礼として50000マナほどの魔力を篭めた剣を渡した。この剣には直接魔法陣が刻まれているから、剣を振りながら魔法が使えるという便利グッズだ。とりあえず受け取ってくれてよかった。使ってくれると嬉しいな。
*
穏やかな日々が続いていて、宝庫に入りきらない程の魔法石を一体どうしようかと悩みはじめた頃‥
「え?戦?」
私が起き抜けに驚いた声を上げると、ギルさんは平然と頷いた。
「ルーン村の特産物が増えて、金銭的にも潤いだしたことで‥公国への献上金を求められ続けてたんだ。ずっと無視してたんだけど、こっちも戦う準備が整ったから『独立』したよって宣戦布告したんだ」
「つまり、ルーン村(プテラス領)VSセブラ公国ってことですよね?!」
「そういうことになるな。まぁすぐには全面戦争にはもちろんならないだろうし、こっちはアイナの魔法石のお陰で村民全員が魔法庁長官以上になれる。勝ち試合だよ」
「よかったー‥」
「なにが??」
「いや、そろそろ宝庫に魔法石が収まらなくなるところだったんで‥」
私がそう言って笑うと、ギルさんも声をあげて笑った。
人の為にできることがあるって、嬉しいなぁ‥。
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