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カフェの一幕
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自転車を走らせて20分ほど。僕にとっては少し遠く感じる距離も、今回は気にならなかった。
いつも通る変わらない街並み。僕は、この街で育ってきた。
物凄く都会ってほどでも田舎ってほどでもない街。僕の家は大きい坂の上にあって、自転車で一気に坂を駆け下りる。その後、通っていた小学校がすぐ見えてそこを横切る。消防署とか神社とか病院とかバスターミナルとかを横切って、大きなスクランブル交差点に差し掛かるとカフェはもうすぐだ。
この交差点付近は、なんでもある。
ビルテナントの下に居酒屋やドーナツ屋、果物屋とか定食屋。1000円カットとかいろいろ。
左に行くとショッピングモールやガソリンスタンド、パチンコ屋、ケータイショップなんかも。
右に行くと個別指導塾が2つ、焼肉屋2つ、個人営業のフランス料理店と中華料理店、そしてチェーンの牛丼屋。
こう見ると都会よりでは間違いないのだろう。
でも、この街並み慣れてしまっているからか、田舎の生活を知らないからか。
これが当たり前だと思って、気にも止めていなかった。
スクランブル式の信号は長いので、このようなことを考えながら気長に待って、信号が変わり、直ぐに自転車を漕ぎ出す。
そしたら直ぐにカフェについた。
自転車を蔓草が生えたカフェの外観に置く。
そして僕は店内に入った。
カランカランと音が鳴る。
入れば、綺麗なケーキの並ぶ透明なショーケースと、チョコやクッキーのお菓子が積まれているオシャレな木の棚があり、これは今も昔も変わらなかった。
予約していたと、定員に申すと、直ぐに店内へと案内された。
そして、案内された席には彼女は着いていて、僕を待っていた。
「久しぶりだね。尚希」
「ほんと、久しぶり」
楓佳は、数年ぶりに会うと少し大人な雰囲気になっているように感じた。
髪が伸びたからだろうか。楓佳はショートカットのイメージがあった。
「尚希、、」
「ん?」
「ちょっと、大人っぽくなった?」
それは、彼女も同じみたいだったようで。
はにかんでそう問いかけてくる彼女に、自分もそう思っていたと打ち明けると、彼女は同じ事思ってるねと言って2人同士で笑いあった。
「でもさ、この街並みというかこの付近は4.5年前と変わんないねぇ」
「うーん、確かに雰囲気は変わんないね。ちょっと店とか潰れたり、変わったりしてるけど」
4.5年の間に新しくショッピングモールはリニューアルしたし、ビルテナントの下の店は畳んでしまった個人店も幾つかある。
「そうなんだ。やっぱり時の流れってちょっと悲しいよね」
「そうだね。あの頃は、楽しかったし、変わらないで欲しいものあるからなぁ。思い出補正ってやつ?」
「思い出補正かぁ、私たちん中にいっぱいあるよね」
楓佳は、昔を懐かしむ郷愁の思いを顔に滲ませながら目を細めて言った。
そんな顔を見て、僕も昔のことを思い出す。
近所の公園で遊んだこと。砂場とか滑り台とかジャングルジムとかで。
夏休みは、屋内の市民プールも一緒に行った。
リニューアル前のショッピングモールで、毎日集まって、そこのゲームセンターでメダルゲームを遊び尽くしたっけ。
思えば高校の時までずっと僕らは、学校でも学校外でもどんなときも一緒だった。
それが当たり前であったから、“気づけなかった”
彼女は、紅茶とモンブラン。
僕は、コーヒーとアップルパイ。
を頼む。
「尚希、やっぱりここのアップルパイ、好きなんだね」
「街は変わっても好みは変わらないなぁ」
僕は照れくさそうにそう言った。
「でも、楓佳は、昔ショートケーキじゃなかった?」
「うーん、最近はね、なんかモンブランが好きなの」
「そうなんだ。僕もさ、最近嫌いなものとかは食べられるようになってきたんだよね」
「へぇ~あんなに野菜嫌いだったのに、食べれるんだ?」
彼女は弄るようなニュアンスでそう言う。
「僕もこう見えて、成長してますから」
僕は、そう少し意地っ張り気に言って頼んだアップルパイをフォークで刺して食べる。
アップルパイの味は、昔と変わりない味なのに久しぶりに食べたからなのかとても美味しく感じた。
「うまっ」
アップルパイを食べながら、そう、思わず口にしてしまう僕に目線を向ける彼女は、頬杖をつきながら、ほんのりと笑みを浮かべていた。
いつも通る変わらない街並み。僕は、この街で育ってきた。
物凄く都会ってほどでも田舎ってほどでもない街。僕の家は大きい坂の上にあって、自転車で一気に坂を駆け下りる。その後、通っていた小学校がすぐ見えてそこを横切る。消防署とか神社とか病院とかバスターミナルとかを横切って、大きなスクランブル交差点に差し掛かるとカフェはもうすぐだ。
この交差点付近は、なんでもある。
ビルテナントの下に居酒屋やドーナツ屋、果物屋とか定食屋。1000円カットとかいろいろ。
左に行くとショッピングモールやガソリンスタンド、パチンコ屋、ケータイショップなんかも。
右に行くと個別指導塾が2つ、焼肉屋2つ、個人営業のフランス料理店と中華料理店、そしてチェーンの牛丼屋。
こう見ると都会よりでは間違いないのだろう。
でも、この街並み慣れてしまっているからか、田舎の生活を知らないからか。
これが当たり前だと思って、気にも止めていなかった。
スクランブル式の信号は長いので、このようなことを考えながら気長に待って、信号が変わり、直ぐに自転車を漕ぎ出す。
そしたら直ぐにカフェについた。
自転車を蔓草が生えたカフェの外観に置く。
そして僕は店内に入った。
カランカランと音が鳴る。
入れば、綺麗なケーキの並ぶ透明なショーケースと、チョコやクッキーのお菓子が積まれているオシャレな木の棚があり、これは今も昔も変わらなかった。
予約していたと、定員に申すと、直ぐに店内へと案内された。
そして、案内された席には彼女は着いていて、僕を待っていた。
「久しぶりだね。尚希」
「ほんと、久しぶり」
楓佳は、数年ぶりに会うと少し大人な雰囲気になっているように感じた。
髪が伸びたからだろうか。楓佳はショートカットのイメージがあった。
「尚希、、」
「ん?」
「ちょっと、大人っぽくなった?」
それは、彼女も同じみたいだったようで。
はにかんでそう問いかけてくる彼女に、自分もそう思っていたと打ち明けると、彼女は同じ事思ってるねと言って2人同士で笑いあった。
「でもさ、この街並みというかこの付近は4.5年前と変わんないねぇ」
「うーん、確かに雰囲気は変わんないね。ちょっと店とか潰れたり、変わったりしてるけど」
4.5年の間に新しくショッピングモールはリニューアルしたし、ビルテナントの下の店は畳んでしまった個人店も幾つかある。
「そうなんだ。やっぱり時の流れってちょっと悲しいよね」
「そうだね。あの頃は、楽しかったし、変わらないで欲しいものあるからなぁ。思い出補正ってやつ?」
「思い出補正かぁ、私たちん中にいっぱいあるよね」
楓佳は、昔を懐かしむ郷愁の思いを顔に滲ませながら目を細めて言った。
そんな顔を見て、僕も昔のことを思い出す。
近所の公園で遊んだこと。砂場とか滑り台とかジャングルジムとかで。
夏休みは、屋内の市民プールも一緒に行った。
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思えば高校の時までずっと僕らは、学校でも学校外でもどんなときも一緒だった。
それが当たり前であったから、“気づけなかった”
彼女は、紅茶とモンブラン。
僕は、コーヒーとアップルパイ。
を頼む。
「尚希、やっぱりここのアップルパイ、好きなんだね」
「街は変わっても好みは変わらないなぁ」
僕は照れくさそうにそう言った。
「でも、楓佳は、昔ショートケーキじゃなかった?」
「うーん、最近はね、なんかモンブランが好きなの」
「そうなんだ。僕もさ、最近嫌いなものとかは食べられるようになってきたんだよね」
「へぇ~あんなに野菜嫌いだったのに、食べれるんだ?」
彼女は弄るようなニュアンスでそう言う。
「僕もこう見えて、成長してますから」
僕は、そう少し意地っ張り気に言って頼んだアップルパイをフォークで刺して食べる。
アップルパイの味は、昔と変わりない味なのに久しぶりに食べたからなのかとても美味しく感じた。
「うまっ」
アップルパイを食べながら、そう、思わず口にしてしまう僕に目線を向ける彼女は、頬杖をつきながら、ほんのりと笑みを浮かべていた。
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