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夏の栄冠
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口の中が、塩っぱくて、血の味がした。
俺は、思わず唾を飲み込まずにはいられなかった。
太陽はまるで俺たちに挑戦状を叩きつけるかのように、ギラギラと燃えるような光を浴びせていることが、背中からでも分かった。
グラウンドの一番上、マウンドの上に立つ俺は、全ての注目の的、熱視線を受けて立っていた。
俺の背番号は1
このチームの、主将として、そしてエースとして、負ける訳にはいかない。
何としても絶対勝ってやる。
甲子園大会決勝。俺たちは、夏の栄冠を取るために、今ここにいた...!
決勝戦は、互いに譲らない展開だった。5回表までは0ー0。俺は味方の援護を待って、粘り強く何とか力投していたが、5回裏、ついに均衡が破れ、一点を取られてしまう。でも、7回表、3番ショート黒木のタイムリーツーベースで、逆転する。2ー1、ゲームはそのまま最終回を迎えた。
9回裏、あとアウト3つ。3人打ち取れれば勝ち。
でも、俺のスタミナは寸前で持たなかった。
ワンナウト取ったあと、連続フォアボールで、ピンチを迎える。対するバッターは相手の4番打者。
ここが大一番だった。
スタンドからは大きな手拍子と大歓声、アルプスからの吹奏楽の音色はより一層の大きくなり、スタンド全体が揺れていた。
それでも俺は、平常心で、やるべき事をいつも通りやるだけだった。
それは、キャッチャー山下のミット目掛けて一球入魂で、ボールを放ること。
キャッチャーの山下がサインを送る。
勝負球のサインは、スライダーだった。
俺は首を振った。
俺は、一番自信のある真っ直ぐで勝負をしたかったからだ。
もう一度出したサインに俺は頷く。山下に俺の気持ちが通じたみたいだった。
俺は渾身の力を振り絞って、脚を上げ、腕を振る。
全身全霊をかけて投げたそのボールは山下のミット目掛けて吸い込まれていく。
しかし、その直前に金属バットの芯が、ボールを捉えた。
その衝撃音は凄まじいもので、空気を切り裂くような、金属音がした。
相手の4番が振り抜き、天を見上げる。
俺も同じように、ボールの行方を追って、天を見上げた。
もう、ボールは外野の遥か頭の上を超えていた。
俺はその瞬間、マウンドから崩れ落ちた。
色々な今までの辛かった思い出がよみがえった。
みんなと勝ちたかった。そしてここまで来れたから、絶対に負けたくなかった。
みんなは崩れ落ちる俺を見て、駆け寄り、泣き崩れる俺によく頑張ったと背中を叩いて、肩を抱いてくれた。
「胸を張れよ、キャプテン。ここまで来れたのは、お前のおかげなんだから。ありがとうキャプテン」
そんな励ましの言葉が次々に聞こえてきた。
こちらこそだ。
こんなわがままで、強引に引っ張って来た俺に、着いて来てくれてありがとう。そう言いたかった。
みんなが着いてきてくれたから、ここまで来れたんだよ。ありがとうみんな。
俺は心の中でそう呟いた。
敗戦した後の挨拶で見るアルプスの景色は、涙のせいでぼやけていて、まともに見れなかったけど、励ましと賞賛の拍手で、朧気に色鮮やかに揺れていることがわかって、とても綺麗な景色だった。
その拍手により一層涙が溢れてきた。
俺は涙を流しながら、声を上げ、アルプスに一礼した。
先生、クラスメイト、監督、コーチ、マネージャー、両親、寮の管理人さん、近所の方々、球場に来て応援してくれた人達、そして、同じ部員である仲間達。色々な人に支えられて今がある。
時には勝てなくて、辛いこともあったし、練習もキツかった。監督に怒られたこともあった。仲間と意見が食い違って、喧嘩したこともあった。でも、そんな悪い思い出も全て含めて、今となっては、本当に良き思い出だった。俺にとって大切な、今後一生忘れないような思い出だ。
惜しくも準優勝。夏の栄冠は取れなかったけど、
でも、、俺たちの絆と支えてくれた方々の想いは、どんなものにも負けない、まさに夏の栄冠だ。
ありがとう、甲子園。
俺は、思わず唾を飲み込まずにはいられなかった。
太陽はまるで俺たちに挑戦状を叩きつけるかのように、ギラギラと燃えるような光を浴びせていることが、背中からでも分かった。
グラウンドの一番上、マウンドの上に立つ俺は、全ての注目の的、熱視線を受けて立っていた。
俺の背番号は1
このチームの、主将として、そしてエースとして、負ける訳にはいかない。
何としても絶対勝ってやる。
甲子園大会決勝。俺たちは、夏の栄冠を取るために、今ここにいた...!
決勝戦は、互いに譲らない展開だった。5回表までは0ー0。俺は味方の援護を待って、粘り強く何とか力投していたが、5回裏、ついに均衡が破れ、一点を取られてしまう。でも、7回表、3番ショート黒木のタイムリーツーベースで、逆転する。2ー1、ゲームはそのまま最終回を迎えた。
9回裏、あとアウト3つ。3人打ち取れれば勝ち。
でも、俺のスタミナは寸前で持たなかった。
ワンナウト取ったあと、連続フォアボールで、ピンチを迎える。対するバッターは相手の4番打者。
ここが大一番だった。
スタンドからは大きな手拍子と大歓声、アルプスからの吹奏楽の音色はより一層の大きくなり、スタンド全体が揺れていた。
それでも俺は、平常心で、やるべき事をいつも通りやるだけだった。
それは、キャッチャー山下のミット目掛けて一球入魂で、ボールを放ること。
キャッチャーの山下がサインを送る。
勝負球のサインは、スライダーだった。
俺は首を振った。
俺は、一番自信のある真っ直ぐで勝負をしたかったからだ。
もう一度出したサインに俺は頷く。山下に俺の気持ちが通じたみたいだった。
俺は渾身の力を振り絞って、脚を上げ、腕を振る。
全身全霊をかけて投げたそのボールは山下のミット目掛けて吸い込まれていく。
しかし、その直前に金属バットの芯が、ボールを捉えた。
その衝撃音は凄まじいもので、空気を切り裂くような、金属音がした。
相手の4番が振り抜き、天を見上げる。
俺も同じように、ボールの行方を追って、天を見上げた。
もう、ボールは外野の遥か頭の上を超えていた。
俺はその瞬間、マウンドから崩れ落ちた。
色々な今までの辛かった思い出がよみがえった。
みんなと勝ちたかった。そしてここまで来れたから、絶対に負けたくなかった。
みんなは崩れ落ちる俺を見て、駆け寄り、泣き崩れる俺によく頑張ったと背中を叩いて、肩を抱いてくれた。
「胸を張れよ、キャプテン。ここまで来れたのは、お前のおかげなんだから。ありがとうキャプテン」
そんな励ましの言葉が次々に聞こえてきた。
こちらこそだ。
こんなわがままで、強引に引っ張って来た俺に、着いて来てくれてありがとう。そう言いたかった。
みんなが着いてきてくれたから、ここまで来れたんだよ。ありがとうみんな。
俺は心の中でそう呟いた。
敗戦した後の挨拶で見るアルプスの景色は、涙のせいでぼやけていて、まともに見れなかったけど、励ましと賞賛の拍手で、朧気に色鮮やかに揺れていることがわかって、とても綺麗な景色だった。
その拍手により一層涙が溢れてきた。
俺は涙を流しながら、声を上げ、アルプスに一礼した。
先生、クラスメイト、監督、コーチ、マネージャー、両親、寮の管理人さん、近所の方々、球場に来て応援してくれた人達、そして、同じ部員である仲間達。色々な人に支えられて今がある。
時には勝てなくて、辛いこともあったし、練習もキツかった。監督に怒られたこともあった。仲間と意見が食い違って、喧嘩したこともあった。でも、そんな悪い思い出も全て含めて、今となっては、本当に良き思い出だった。俺にとって大切な、今後一生忘れないような思い出だ。
惜しくも準優勝。夏の栄冠は取れなかったけど、
でも、、俺たちの絆と支えてくれた方々の想いは、どんなものにも負けない、まさに夏の栄冠だ。
ありがとう、甲子園。
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