バッドエンドの女神

かないみのる

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 エミリーはお姫様です。

お父さんは優しい王様、お母さんは美しいお妃様。

二人の愛情を受け、無邪気にすくすくと育っていきました。



 エミリーの成長を見て、お城の者も、国民も、幸せそうな顔をしていました。

エミリーが広場へお散歩に行くと、国民は憧れの眼差しを向け、跪くのです。

国民達は「王女様!」「エミリー王女様!」と声をかけます。

それに笑顔でエミリーは応えるのです。

国も栄えて、王宮はこれ以上ないくらいの幸せに満ちていました。



「エミリー王女様!幸せですか?」



 少年が無邪気に声をかけます。エミリーは満面の笑みで頷き、手を振りました。



 ある朝、ベッドから起きると王宮の中が騒がしいのが分かりました。

足音、悲鳴、怒鳴り声が聞こえてきます。

エミリーは不安でベッドの上で震えていました。

使用人のマーサが慌てて部屋に入ってきました。



「エミリー様、逃げましょう!」



 エミリーは寝巻きのまま、マーサに手を引かれ部屋を出ました。

しかし、階段を降りたところで、武装した兵士のような男達に取り囲まれてしまいました。

マーサはその場で斬り殺されてしまいました。

エミリーは捕らえられ、引き摺られるようにして広場まで連れ出されました。

広場にはお父さんとお母さんが縛られていました。

周囲を国民が不安そうな顔で囲んでいます。



 目の前には木を組み合わせた台のようなものがあります。

柱が二本、それを繋ぐように大きな斜めの刃物が浮いています。

エミリーはこれから何が起こるのか分かりました。



「どうしてこんな事をするの!?」



 エミリーは男達に聞きました。



「なんでだろうね?」



 男の一人はそう言ってピューと口笛を吹きました。

男達は口々に「なんでだろうね?」と言って馬鹿にするように笑いました。

エミリーが男達を睨みつけると男の一人がエミリーの頭を掴み、台まで引き摺り、刃の下に首が来るように押しつけました。

男はエミリーの耳元でささやきました。



「この世は理不尽なんだよ」



 男が後ろに下がると、物凄い勢いで刃物が落ちてきて、エミリーの首はコロコロと転がりました。



 エミリーは斬首刑で殺されてしまいました。

何の理由もなく、理不尽に殺されてしまったのです。
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