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教室で霜田と机を向かい合わせにして勉強していると、携帯電話に着信があった。
相手はタヌキおじさん。
あたしは小さい声で電話に出た。
「あ、奈緒ちゃん?今日、午後会えない?」
街中から電話をかけているのか、車が走行している音や青信号の合図の音が聞こえてくる。
「ごめんなさい。今日は無理なの」
「どうして?今まで奈緒ちゃんが断ったことなんてな無いじゃないか。おじさんのこと嫌いになっちゃった?」
「違うの。今日は用事があって」
あたしは初めてタヌキおじさんの誘いを断った。
霜田と勉強しているほうが楽しいから。
食い下がってくるタヌキおじさんを宥めて電話を切った。
「ごめん、盗み聞きする気はなかったんだけど、今のって、いわゆるパパ?」
霜田が化学の問題集から目を離さずに聞いてきた。
「うん」
「いいの?会わなくて」
「うん。いいの。学生は勉強しなくちゃ」
「まあそうだけど」
本当はそんなに勉強に義務感を感じているわけじゃ無いけど、適当に理由をつけて霜田と一緒に過ごせるようにした。
あたしは確実に霜田に恋をしている。
しかもその気持ちは日に日に強くなっている。
霜田が視界に入ると嬉しくなるし、話すと浮かれてしまう。
他人にこんなに感情が揺さぶられたことって今まで無かったから新鮮だった。
「そうだ、諏訪部。オペラ座の怪人の原作読んだ?」
「まだ。霜田におすすめされた方を読んでて」
「アルジャーノン?」
「うん」
「今どの辺?」
「アルジャーノンと迷路で競争してるところ」
「序盤じゃん」
「読むの大変なんだもん」
「まあ、最初はわざと読みづらく書いてあるからね。そうそう、諏訪部からおすすめされた本、読み終わったんだけど、感動したよ。お母さんにも貸したけど、満足そうだった」
褒められたのは本だけど、間接的にあたしを褒めてくれているみたいで嬉しかった。
そしてあたしが薦めたものを、霜田が自分の大切なお母さんに薦めているのが嬉しかった。
あたしももっと本を読もう。
霜田と共通の話題で話したい。
もっと勉強を頑張ろう。
霜田と教え合えるから。
あたしの行動原理は全て霜田に帰結するようになってしまった。
もう元には戻れない。
でも後悔はしていない。
霜田に恋をしている方が、以前よりずっと幸せだから。
「じゃあ、そろそろ帰ろうか」
「うん」
外はまだ明るいけど、霜田は門限が厳しいから高校生にしては早く帰る。
電車を降りて改札を潜り、駅を出た。
珍しくあたし達以外誰もいなかった。
霜田はいつもあたしを家まで送っていってくれる。
迷惑をかけているという自覚はあるが、どうしても霜田と一緒にいたいと思い、甘えてしまっている。
あたしの家の前に着くと、霜田は「じゃ、また明日」と言って背を向けた。
寂しさがあたしを覆い尽くした。
霜田の背中を見ていたら、あたしは急に霜田への気持ちを伝えたくなってしまった。
あたしの気持ちを伝えて、霜田の気持ちを聞きたい。
コップから水が溢れるように、あたしの霜田への気持ちは理性という器から溢れた。
「霜田!」
あたしは駆けつけて霜田の腕を掴んだ。
霜田が驚いて振り返る。
さらさらの髪が揺れて綺麗だった。
呼び止めたのはいいけど、霜田の顔を見たら急に緊張してきた。
普段おじさん達に何か言う時は全然緊張しないのに。
「どうしたの?」
鼓動が速くなるり、顔が火照る。
でももう立ち止まる事はできない。
「あたし、霜田が好き」
口に出してしまったら、霜田への気持ちがさらに強くなった。
抑えられない程に霜田が好き。
あたしは霜田の返事が早く聞きたかった。
しかしその反応は、期待していたのとは違うものだった。
霜田は目を見開いて、信じられないという顔をした。
「え、諏訪部が?」
あたしを指差す。
「うん」
「僕を?」
自分を指差す。
「うん」
「好き!?」
目をパチパチと瞬かせてあたしを見つめた。
予想外の反応にあたしは戸惑った。
失礼なやつだな。
霜田の反応を見たらどんどん気持ちが萎えていくのが分かった。
「うん。初めて人を好きになったの」
空気が漏れた風船のように萎む気持ちをなんとか奮い立たせて、霜田に再度気持ちを伝えた。
「そうなんだ。ありがとう。んで、えーと、その、僕は具体的に何をすればいい?」
何をすればいいって、そんなこと普通聞くか?
緊張したのが馬鹿馬鹿しくなってきた。
あたしは恋愛ドラマのように昂っていたけど、それに対して霜田の反応はギャグ漫画のようで、この温度差で頭が痛くなりそうだった。
「付き合ってほしいの」
あたしはため息混じりに伝えた。
霜田がこんなに恋愛に鈍感だというのは予想外だった。
「付き合うって?」
「一緒に映画見たり喫茶店行ってお茶したりさー」
「それ今と変わらなくない?今でも映画行ったり勉強したりしてるじゃん」
言われてみるとそうかもしれない。
核心をついたツッコミにあたしはピコピコハンマーで殴られた気分になった。
そこまで痛くは無いけどダメージはある。
「あたしは!霜田に!あたしのことを好きになってほしいの!」
すると霜田はあからさまに困った顔をしていた。
「諏訪部は確かに大事な友人だけど……ごめん。僕の一番大事な人はお母さんだから」
そうだった。
あたしは気持ちが昂りすぎて大切なことを忘れていた。
霜田は誰よりお母さんが好きなのだ。
「じゃあ、また明日学校で」
霜田は手を振ってあたしに背を向けた。
あたしの勇気を出した告白は呆気なく終わってしまった。
帰り際の霜田の素っ気なさがあたしの気持ちを燻らせた。
後から聞いた話だけど、あたしのしょぼくれた顔を見たくなかったから足早に立ち去ったんだって。
でもあたしは、告白した直後に霜田がさっさと去ったもんだから、ショックで動けなく、その背中を見つめることしかできなかった。
どうやらあたしは霜田のお母さんには勝てなかったみたい。
あたしにとって初めての恋、初めての失恋。
部屋の中でぼーっと頭を整理していたら、霜田と気持ちが通じ合えなかったことを痛感し、猛烈に寂しくなった。
あたしは霜田のことが好きで、霜田のことで頭がいっぱいなのに、霜田はそうじゃなかった。
今までどんなおじさんに蔑まれようが別れを切り出されようが、何も感じないか怒りを感じるかのどちらかだったのに、霜田に振られるとこれほど苦しいなんて。
今までの霜田との思い出が全て否定されたように感じてしまう。
今ならエリックやドン・ホセの気持ちが分かるかもしれない。
霜田が好きであることがこんなに苦しい。
今すぐに霜田を連れ戻して、好きと言ってくれるまで拘束していたい。
そんなことできるわけないけど。
涙が溢れてきた。
カーペットにうずくまって泣いた。
また一人ぼっちになったような錯覚に陥った。
霜田に縁を切られたわけでもないのに。こんなに苦しいんなら、恋なんてしなければよかった。
でも、これ以上の苦しみがあるなんて、この時は思いもしなかった。
相手はタヌキおじさん。
あたしは小さい声で電話に出た。
「あ、奈緒ちゃん?今日、午後会えない?」
街中から電話をかけているのか、車が走行している音や青信号の合図の音が聞こえてくる。
「ごめんなさい。今日は無理なの」
「どうして?今まで奈緒ちゃんが断ったことなんてな無いじゃないか。おじさんのこと嫌いになっちゃった?」
「違うの。今日は用事があって」
あたしは初めてタヌキおじさんの誘いを断った。
霜田と勉強しているほうが楽しいから。
食い下がってくるタヌキおじさんを宥めて電話を切った。
「ごめん、盗み聞きする気はなかったんだけど、今のって、いわゆるパパ?」
霜田が化学の問題集から目を離さずに聞いてきた。
「うん」
「いいの?会わなくて」
「うん。いいの。学生は勉強しなくちゃ」
「まあそうだけど」
本当はそんなに勉強に義務感を感じているわけじゃ無いけど、適当に理由をつけて霜田と一緒に過ごせるようにした。
あたしは確実に霜田に恋をしている。
しかもその気持ちは日に日に強くなっている。
霜田が視界に入ると嬉しくなるし、話すと浮かれてしまう。
他人にこんなに感情が揺さぶられたことって今まで無かったから新鮮だった。
「そうだ、諏訪部。オペラ座の怪人の原作読んだ?」
「まだ。霜田におすすめされた方を読んでて」
「アルジャーノン?」
「うん」
「今どの辺?」
「アルジャーノンと迷路で競争してるところ」
「序盤じゃん」
「読むの大変なんだもん」
「まあ、最初はわざと読みづらく書いてあるからね。そうそう、諏訪部からおすすめされた本、読み終わったんだけど、感動したよ。お母さんにも貸したけど、満足そうだった」
褒められたのは本だけど、間接的にあたしを褒めてくれているみたいで嬉しかった。
そしてあたしが薦めたものを、霜田が自分の大切なお母さんに薦めているのが嬉しかった。
あたしももっと本を読もう。
霜田と共通の話題で話したい。
もっと勉強を頑張ろう。
霜田と教え合えるから。
あたしの行動原理は全て霜田に帰結するようになってしまった。
もう元には戻れない。
でも後悔はしていない。
霜田に恋をしている方が、以前よりずっと幸せだから。
「じゃあ、そろそろ帰ろうか」
「うん」
外はまだ明るいけど、霜田は門限が厳しいから高校生にしては早く帰る。
電車を降りて改札を潜り、駅を出た。
珍しくあたし達以外誰もいなかった。
霜田はいつもあたしを家まで送っていってくれる。
迷惑をかけているという自覚はあるが、どうしても霜田と一緒にいたいと思い、甘えてしまっている。
あたしの家の前に着くと、霜田は「じゃ、また明日」と言って背を向けた。
寂しさがあたしを覆い尽くした。
霜田の背中を見ていたら、あたしは急に霜田への気持ちを伝えたくなってしまった。
あたしの気持ちを伝えて、霜田の気持ちを聞きたい。
コップから水が溢れるように、あたしの霜田への気持ちは理性という器から溢れた。
「霜田!」
あたしは駆けつけて霜田の腕を掴んだ。
霜田が驚いて振り返る。
さらさらの髪が揺れて綺麗だった。
呼び止めたのはいいけど、霜田の顔を見たら急に緊張してきた。
普段おじさん達に何か言う時は全然緊張しないのに。
「どうしたの?」
鼓動が速くなるり、顔が火照る。
でももう立ち止まる事はできない。
「あたし、霜田が好き」
口に出してしまったら、霜田への気持ちがさらに強くなった。
抑えられない程に霜田が好き。
あたしは霜田の返事が早く聞きたかった。
しかしその反応は、期待していたのとは違うものだった。
霜田は目を見開いて、信じられないという顔をした。
「え、諏訪部が?」
あたしを指差す。
「うん」
「僕を?」
自分を指差す。
「うん」
「好き!?」
目をパチパチと瞬かせてあたしを見つめた。
予想外の反応にあたしは戸惑った。
失礼なやつだな。
霜田の反応を見たらどんどん気持ちが萎えていくのが分かった。
「うん。初めて人を好きになったの」
空気が漏れた風船のように萎む気持ちをなんとか奮い立たせて、霜田に再度気持ちを伝えた。
「そうなんだ。ありがとう。んで、えーと、その、僕は具体的に何をすればいい?」
何をすればいいって、そんなこと普通聞くか?
緊張したのが馬鹿馬鹿しくなってきた。
あたしは恋愛ドラマのように昂っていたけど、それに対して霜田の反応はギャグ漫画のようで、この温度差で頭が痛くなりそうだった。
「付き合ってほしいの」
あたしはため息混じりに伝えた。
霜田がこんなに恋愛に鈍感だというのは予想外だった。
「付き合うって?」
「一緒に映画見たり喫茶店行ってお茶したりさー」
「それ今と変わらなくない?今でも映画行ったり勉強したりしてるじゃん」
言われてみるとそうかもしれない。
核心をついたツッコミにあたしはピコピコハンマーで殴られた気分になった。
そこまで痛くは無いけどダメージはある。
「あたしは!霜田に!あたしのことを好きになってほしいの!」
すると霜田はあからさまに困った顔をしていた。
「諏訪部は確かに大事な友人だけど……ごめん。僕の一番大事な人はお母さんだから」
そうだった。
あたしは気持ちが昂りすぎて大切なことを忘れていた。
霜田は誰よりお母さんが好きなのだ。
「じゃあ、また明日学校で」
霜田は手を振ってあたしに背を向けた。
あたしの勇気を出した告白は呆気なく終わってしまった。
帰り際の霜田の素っ気なさがあたしの気持ちを燻らせた。
後から聞いた話だけど、あたしのしょぼくれた顔を見たくなかったから足早に立ち去ったんだって。
でもあたしは、告白した直後に霜田がさっさと去ったもんだから、ショックで動けなく、その背中を見つめることしかできなかった。
どうやらあたしは霜田のお母さんには勝てなかったみたい。
あたしにとって初めての恋、初めての失恋。
部屋の中でぼーっと頭を整理していたら、霜田と気持ちが通じ合えなかったことを痛感し、猛烈に寂しくなった。
あたしは霜田のことが好きで、霜田のことで頭がいっぱいなのに、霜田はそうじゃなかった。
今までどんなおじさんに蔑まれようが別れを切り出されようが、何も感じないか怒りを感じるかのどちらかだったのに、霜田に振られるとこれほど苦しいなんて。
今までの霜田との思い出が全て否定されたように感じてしまう。
今ならエリックやドン・ホセの気持ちが分かるかもしれない。
霜田が好きであることがこんなに苦しい。
今すぐに霜田を連れ戻して、好きと言ってくれるまで拘束していたい。
そんなことできるわけないけど。
涙が溢れてきた。
カーペットにうずくまって泣いた。
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