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放課後、携帯電話に穂高から着信が来ていた。
話す気にならなかったから無視しようとしたが、しつこく何回も電話をよこしたから渋々出た。
「奈緒、今から会おう」
「今日はちょっと」
「今から迎えに行くから、今どこ?」
「今日は用事があって」
「嘘ついているのはバレてるよ。じゃあ、いつもの公園で待ってて。迎えに行くから」
気が進まなかったけど約束をすっぽかす勇気もなかったから仕方なく公園に向かい、穂高と落ち合ってホテルへ向かった。
触れられるのが嫌だった。
触れられても気持ち良くない。
それを察してか、穂高もいつもの倍くらい時間をかけて抱いた。
穂高は絶頂を迎えても、あたしには無理だった。
「奈緒、随分と酷い顔をしているね」
シャワーを浴びて戻ってきた穂高はあたしの顔を見てそう言った。
「まあね。あたしだって落ち込むことくらいあるし」
「あの男の子が原因だね」
あたしは答えなかった。
「奈緒、あの男の子を好きになったね?」
ついにバレたか。悟られないように気を付けていたのに。
「俺にはわかるんだよ」
穂高は急に私の頭を掴んで揺さぶった。
その豹変ぶりにあたしは驚き、恐怖を感じた。
元々怒りっぽいのは分かっていたけど、ここまで乱暴にされたのは初めてだった。
「恋をするということは、いずれ結婚するということだろう?子どもをつくるんだろう?女を捨てて、醜くなりたいっていうのか!?」
穂高の手で掴まれた痛み、脳の揺れ、罵声、すべてがあたしを萎縮させた。
「奈緒は美しい。決して醜くなることがないように」
あたしは穂高を睨みつけた。
恐怖に怯えながらも穂高に対抗した。
「いや」
もうなんとでも言えばいい。
穂高からどんなに酷い仕打ちを受けても、あたしは霜田を好きだ。
もう穂高の言いなりになんてならない。
あたしの返事を聞いて穂高のこめかみが一瞬動いたのが分かった。
「言う事聞けない悪い子にはお仕置きが必要だな」
あたしはベッドに倒されて頬を打たれた。
何度も何度も、両頬が何も感じられなくなるまで叩かれた。
涙が滲んだけど、それでも穂高を睨み続けた。
しばらくしてお仕置きは終わったけど、あたしは反抗的な態度を崩さなかった。
穂高はあたしを散々痛ぶって満足したのか、ベッドでぐったりしているあたしを見下ろしてほくそ笑んでいた。
「奈緒には弟か妹はいるんだっけ?」
涼しい顔をしていけしゃあしゃあと聞いてきた。
分かっているくせに。
いちいち聞いてくるのが頭に来る。
「前にも言ったでしょ。いないよ。あたしが小さい頃にママと弟は死んだんだから」
いずれ会うはずだったあたしの弟。
ずっと楽しみにしていたのに、ママと弟の命は同時に絶たれてしまった。
弟はこの世界の風景を見ることもできずに一生を終えてしまった。
「じゃあ、母親が子どもを抱いている姿の醜さを知らないんだね」
穂高は溜め込んだ怒りを少しずつ沸かすように力んで話し始めた。
穂高には歳の離れた弟がいると前に聞いていた。
あまり兄弟仲は良くないらしく、弟の話題になるといつも軽蔑を滲ませた口調になった。
「全ての愛を赤ん坊に注ぎ込む。こっちに振り向かせようと頑張っても、決して見向きはしない。子と母の二人の世界に入り込んだ憐れな姿を、奈緒は知らないんだね」
口調が速くなり語勢が強くなる。
自分の言葉に肩を怒らせている。
「赤ん坊って弱いくせにさ。ちょっと力を入れれば手足の骨なんて簡単に折れるくせに。自分が世界の中心であるかのように振る舞ってさ。馬鹿馬鹿しい。母親も馬鹿だ。赤ん坊なんて弱いものを宝のように抱えてさ。恍惚の表情を浮かべて。反吐が出る」
穂高の暴力的な発言はいやに現実味を帯びていた。
嫌な気分になりそうだったからあまり考えないようにした。
穂高の考えに同意することはできないけど、心情を推し量ることはできた。
そんな考えを持っていて、自分の感情に折り合いをつけられない彼に同情してしまう。
「穂高は弟さんにお母さんを取られて寂しかったの?」
私の言葉に穂高は目を見開いた。
そして渾身の力を込めてあたしの頬を平手打ちした。
この日一番の怒りだったと思う。
逆らわれるより同情されるほうが穂高にとっては嫌なのかもしれない。
「くだらないこと聞くんじゃない!」
図星のくせに。
あたしは打たれた頬に触れた。脈打つように痛む。
さっきから何回も打たれたことで、皮膚が熱を持っている。
「ふん。まあ、その弟も随分前に死んでるんだけど」
あたしは何も答えなかった。
本来なら哀悼の意を示すものだと思うけど、穂高の口ぶりから、弟さんの死を嘲笑う様子を感じられたから。
穂高はホテルの壁に書いてある花の絵を指でなぞって言った。
「綺麗な花はいずれは散りゆく。でも人間は美しいままでいられる。どういうことかわかるね?」
「子どもを産まなければいいんでしょ?」
「よくわかってるね。いい子だ」
「産まないなんて一言も言ってないけど」
穂高はふんと鼻を鳴らした。
「まあ、産ませないよ。その時が来たら全力で止めてみせる」
穂高はさっき叩いたあたしの頬を優しく撫でて、あたしを強く抱きしめた。
いつもだったらそれで許せたかもしれないが、今日の穂高を許すことはできなかった。
嫌悪感がひどい。
「俺は一度奈緒を殺そうと思ったことがあるんだよ」
「ずいぶん物騒なこと言うんだね」
「ずいぶん昔にね」
聞いても不快にさせられるだけだから、深くは訪ねなかった。
帰りは穂高に駅の近くまで送ってもらった。
車を降りると、道路を挟んで向かい側、ジェラート屋さんで高校生の男女が仲良くジェラートを食べていた。
暖かくなってきたとは言え、外で食べるのはまだ寒いのではないか。
でも二人とも楽しそうに、お互いのアイスを分け合っている。
少し羨ましくなった。
あたしも霜田と一緒に食べたいな。
霜田に会いたい。
フラれても、やっぱりあたしは霜田のことが好きだ。
初めて好きになった人だもん、簡単に諦められない。
もう一度、霜田に気持ちを伝えよう。
何回フラれたって諦めない、そう心に決めた。
あたし、変わったな。
話す気にならなかったから無視しようとしたが、しつこく何回も電話をよこしたから渋々出た。
「奈緒、今から会おう」
「今日はちょっと」
「今から迎えに行くから、今どこ?」
「今日は用事があって」
「嘘ついているのはバレてるよ。じゃあ、いつもの公園で待ってて。迎えに行くから」
気が進まなかったけど約束をすっぽかす勇気もなかったから仕方なく公園に向かい、穂高と落ち合ってホテルへ向かった。
触れられるのが嫌だった。
触れられても気持ち良くない。
それを察してか、穂高もいつもの倍くらい時間をかけて抱いた。
穂高は絶頂を迎えても、あたしには無理だった。
「奈緒、随分と酷い顔をしているね」
シャワーを浴びて戻ってきた穂高はあたしの顔を見てそう言った。
「まあね。あたしだって落ち込むことくらいあるし」
「あの男の子が原因だね」
あたしは答えなかった。
「奈緒、あの男の子を好きになったね?」
ついにバレたか。悟られないように気を付けていたのに。
「俺にはわかるんだよ」
穂高は急に私の頭を掴んで揺さぶった。
その豹変ぶりにあたしは驚き、恐怖を感じた。
元々怒りっぽいのは分かっていたけど、ここまで乱暴にされたのは初めてだった。
「恋をするということは、いずれ結婚するということだろう?子どもをつくるんだろう?女を捨てて、醜くなりたいっていうのか!?」
穂高の手で掴まれた痛み、脳の揺れ、罵声、すべてがあたしを萎縮させた。
「奈緒は美しい。決して醜くなることがないように」
あたしは穂高を睨みつけた。
恐怖に怯えながらも穂高に対抗した。
「いや」
もうなんとでも言えばいい。
穂高からどんなに酷い仕打ちを受けても、あたしは霜田を好きだ。
もう穂高の言いなりになんてならない。
あたしの返事を聞いて穂高のこめかみが一瞬動いたのが分かった。
「言う事聞けない悪い子にはお仕置きが必要だな」
あたしはベッドに倒されて頬を打たれた。
何度も何度も、両頬が何も感じられなくなるまで叩かれた。
涙が滲んだけど、それでも穂高を睨み続けた。
しばらくしてお仕置きは終わったけど、あたしは反抗的な態度を崩さなかった。
穂高はあたしを散々痛ぶって満足したのか、ベッドでぐったりしているあたしを見下ろしてほくそ笑んでいた。
「奈緒には弟か妹はいるんだっけ?」
涼しい顔をしていけしゃあしゃあと聞いてきた。
分かっているくせに。
いちいち聞いてくるのが頭に来る。
「前にも言ったでしょ。いないよ。あたしが小さい頃にママと弟は死んだんだから」
いずれ会うはずだったあたしの弟。
ずっと楽しみにしていたのに、ママと弟の命は同時に絶たれてしまった。
弟はこの世界の風景を見ることもできずに一生を終えてしまった。
「じゃあ、母親が子どもを抱いている姿の醜さを知らないんだね」
穂高は溜め込んだ怒りを少しずつ沸かすように力んで話し始めた。
穂高には歳の離れた弟がいると前に聞いていた。
あまり兄弟仲は良くないらしく、弟の話題になるといつも軽蔑を滲ませた口調になった。
「全ての愛を赤ん坊に注ぎ込む。こっちに振り向かせようと頑張っても、決して見向きはしない。子と母の二人の世界に入り込んだ憐れな姿を、奈緒は知らないんだね」
口調が速くなり語勢が強くなる。
自分の言葉に肩を怒らせている。
「赤ん坊って弱いくせにさ。ちょっと力を入れれば手足の骨なんて簡単に折れるくせに。自分が世界の中心であるかのように振る舞ってさ。馬鹿馬鹿しい。母親も馬鹿だ。赤ん坊なんて弱いものを宝のように抱えてさ。恍惚の表情を浮かべて。反吐が出る」
穂高の暴力的な発言はいやに現実味を帯びていた。
嫌な気分になりそうだったからあまり考えないようにした。
穂高の考えに同意することはできないけど、心情を推し量ることはできた。
そんな考えを持っていて、自分の感情に折り合いをつけられない彼に同情してしまう。
「穂高は弟さんにお母さんを取られて寂しかったの?」
私の言葉に穂高は目を見開いた。
そして渾身の力を込めてあたしの頬を平手打ちした。
この日一番の怒りだったと思う。
逆らわれるより同情されるほうが穂高にとっては嫌なのかもしれない。
「くだらないこと聞くんじゃない!」
図星のくせに。
あたしは打たれた頬に触れた。脈打つように痛む。
さっきから何回も打たれたことで、皮膚が熱を持っている。
「ふん。まあ、その弟も随分前に死んでるんだけど」
あたしは何も答えなかった。
本来なら哀悼の意を示すものだと思うけど、穂高の口ぶりから、弟さんの死を嘲笑う様子を感じられたから。
穂高はホテルの壁に書いてある花の絵を指でなぞって言った。
「綺麗な花はいずれは散りゆく。でも人間は美しいままでいられる。どういうことかわかるね?」
「子どもを産まなければいいんでしょ?」
「よくわかってるね。いい子だ」
「産まないなんて一言も言ってないけど」
穂高はふんと鼻を鳴らした。
「まあ、産ませないよ。その時が来たら全力で止めてみせる」
穂高はさっき叩いたあたしの頬を優しく撫でて、あたしを強く抱きしめた。
いつもだったらそれで許せたかもしれないが、今日の穂高を許すことはできなかった。
嫌悪感がひどい。
「俺は一度奈緒を殺そうと思ったことがあるんだよ」
「ずいぶん物騒なこと言うんだね」
「ずいぶん昔にね」
聞いても不快にさせられるだけだから、深くは訪ねなかった。
帰りは穂高に駅の近くまで送ってもらった。
車を降りると、道路を挟んで向かい側、ジェラート屋さんで高校生の男女が仲良くジェラートを食べていた。
暖かくなってきたとは言え、外で食べるのはまだ寒いのではないか。
でも二人とも楽しそうに、お互いのアイスを分け合っている。
少し羨ましくなった。
あたしも霜田と一緒に食べたいな。
霜田に会いたい。
フラれても、やっぱりあたしは霜田のことが好きだ。
初めて好きになった人だもん、簡単に諦められない。
もう一度、霜田に気持ちを伝えよう。
何回フラれたって諦めない、そう心に決めた。
あたし、変わったな。
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