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2章 視線交錯~アイズパニック~

第28話

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「今回はレクティスでいいんですよね?」
「はい、陸戦メインだろうしガルーディアだとちょっと分が悪いかなって」
 俺はザラタンの格納庫でレクティスに乗り込み機体の調整をアオイさんとおこなっていた。
「敵がバジリスクなんで近距離高火力系で行こうと思うんですけど」
「不安定なコアユニットが気がかりですね」
 現状俺の機体はこの前のMAXモード使用以来コアが不安定らしいがこの前のAI戦など問題はなかった。
「とりあえず武器はAAスプレッドを使おうと思ってます。あれならバジリスクの外皮も貫通できるでしょうし」
「わかりました、用意しておきますね」
 AAスプレッドはドラムマガジン搭載の連射式ショットガンであり実銃のAA-12に似た形状をしている。近距離での破壊力は抜群な武器であるため今回の戦闘にはもってこいだろう。
「ユニットは何使います? 前回みたいにスタンダードな感じでいきますか?」
「いえ、今回は敵がバジリスクとわかっているし恐らく群れで乱戦になる可能性、外皮の硬さとかを考えてブレイカーユニットで行こうと思ってます。ありますよね?」
「ありますけど、レクティスだとエネルギー不足な可能性が……」
 ブレイカーユニットとは近接戦に特化した重装備の一種で圧倒的な破壊力、制圧力を発揮するが燃費が悪く扱いにくい欠点があるのだ。
「スラスターをステップからパワードに変更してバックパックに増加エネルギーユニットを追加装備して行こうかと」
「それならどうにか扱えそうです、バラットさんこういう重装備系も使うんですね」
「状況次第ですけどね」
「私はてっきりナイトスレイヤーみたいな高機動近接型が好みかと」
 はははと笑ってみせた。実際高機動機は得意だがゲームでの愛機が曲者だったためいろいろな状態の機体に慣れてしまったのだ。
「相手の数がわかりませんし、魔獣の行動って予想できないところがありますから一撃が致命傷になりかねない軽装より重装の方が現実的ですからね」
「了解です、ただ色が合わせられないですけど大丈夫ですか?」
「気にしないですよ」
「了解しました、ではユニットの換装を始めますね」
「お願いします」
 今回はあらかじめポジションを決めてそれに合わせて装備選択をしている。俺とゲンジさんが前衛で群れに飛び込み、ミコとレミィが後方支援というツーマンセル構成でいく作戦だ。
「バラットさん、クローの展開確認お願いします」
「了解」
 機体を操作する。ブレイカーユニットの特徴的な装備として背部ユニットからアームで接続された二機の大型のシールド、これはアームによりフレキシブルに稼働する上にブレイクシザースという鋏状に展開する大型クローが内臓されており敵の捕縛、攻撃、防御とあらゆる面で活用できる万能ユニットである。
「おっけーです、問題なく動きますね。ついでですし腕部装備も一緒に確認しちゃいましょう」
 腕部には接続型小型シールドと内臓の斬撃剣が装備されているブレイカーエッジを装備している。前回使ったストライクカタールを大型化したような装備である。
「展開問題なし、行けそうですね」
「脚部スラスターユニットと増加装甲も装備してバランス調整しますね」
「胸部増加も使います、四連装マシンガン付いてるやつで。牽制に使えると思います」
「一応ヘッドバルカンもありますけど?」
「小型のバジリスクなら倒せると思うのでお願いします」
「了解です」
 結構な重装備になってしまったがどうにかなるだろう、こういう拡張性の広さがレクティス最大の強みであるのだ。
「やっぱ少し重いですね」
「レクティスのスペックだと少しパワー不足な装備ですからね」
 機体としては問題なく装備はできる。しかし、グリップやレバーなどの重さなど操作感覚が明らかに違ってくるのだ。
「ゲーム内設定より少し重くなっています。性能は同等と保証できますけど」
「これくらいなら、どうにかできます。大丈夫」
 やはり重量などすべてがゲームと同じようにというわけにはいかないらしい。
「バラットさんの機体はもう大丈夫です、あとはこっちで完成させておきますよ」
「アオイさん、ありがとうございます」
 俺はコックピットから降りて他の皆の様子を見に行こうとした時声が聞こえた。
「バラットさん、ちょっといいですか?」
「ティアさん、なんでしょうか?」
 ティアさんから突然声を掛けられた。バジリスク戦はドロイドメインの戦闘になるため出番は無さそうだが、陰虎のメンバーも同乗しているとのことだった。
「ちょっとお願いがありまして、ついて来てください」
「了解です」
 ついて行くと第二格納庫だろうか? メイン格納庫とは別の格納庫でありそこには漆黒の塗装に黄色に光るバイザーが印象的なレクティスが二機立っていた。
「影虎部隊にもドロイドが配備されることになったんです、一応専用仕様なんですよ?」
「かっこいいですね!」
 漆黒の機体とは男心をくすぐる、いいカラーリングだ!
「ユニットは機動性重視のナイトスレイヤーを基本としました」
「確かにナイトスレイヤーなら汎用力もありますし悪くないですね」
「そこで、バラットさんに操縦を少し教えてもらえればと思いまして」
「ティアさんが乗るんですか?」
「はい、正確には私を含め数人が乗り回せる環境を作りたいのです」
 状況に合わせてパイロットを変えるということなのだろうか、さすが特殊部隊だ。
「現在操縦支援OSを作っているところなのですが、ちょっと意見とかテクニックを教えてもらいたいのです」
「いいですよ、了解です」
 にこっとティアさんは微笑み一号機の方に歩いて行った。
「バラット様、いらっしゃいませ」
「クーナ?」
 コックピットまでやってくるとスピーカーからクーナの声が聞こえてきた。
「クーナさんにOSの作成をお願いしているのです。バジリスク討伐にギリギリ間に合う予定です」
「バラット様のナイトスレイヤー装備時の戦闘データをベースにサポートOSを作成しております」
「え、あれ結構むちゃくちゃやってたけど大丈夫?」
 実際MAXモードの使用や特殊兵装機との戦闘で無茶をだいぶした戦闘だったのだが、そんなの参考になるのだろうか?
「ですので修正もかねて調整に付き合ってください」
「そういうことね、わかったよ」
「では、お乗りください」
 こうして俺はティアさんに操作を教えながらOS作成のための修正や調整を開始するのであった。後から聞いたのだがこの時の会話は影虎内で共有されていたらしく後でめっちゃ感謝された。
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