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キラキラ? 私の夏休みラスト編
第94話 さらば愛しき夏休み伝説
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夏休み最終日……。
午前中を、あれをしなくちゃ、これをしなくちゃ、という思案の中で過ごす私。
うおおおお、何をやってもダメな気がしてきた!
だって昨日なんか、そうめん作って食べてPOPと自撮りして終わりだよ!?
想像を遥かに超える虚無だった。
いや、楽しかったけど。
「だ、だめだ。私一人では何も出てこない。頭の中スッカスカだあ」
私は絶望の鳴き声を漏らした。
困った時にはどうする?
こう言う時には……。
「お昼ごはんよー」
「はーい」
そう、栄養補給だね!
今日は母の作ったそうめんだった。
お昼の麺類生活とも今日でしばらくはおさらば。
私は三束くらい食べた。
お腹いっぱい。
「本当によく食べるわねえ」
二束食べた母がなにか言ってる!
さて、お腹が膨れると気持ちも落ち着いてくるので、さっきまであった焦燥感が消える。
「自分の中にアイデアが無いなら、自分の外に求めればいいじゃない」
これぞナイスアイデア!
ということで。
「カンナちゃん、お知恵を貸して下さい……」
『あー、はづきちゃんも夏休み最終日だもんね! 私もー。今日はオフだし、そうだ、二人で遊びに行こっか!』
「行こう行こう!」
あひゃー!
持つべきものはカンナちゃん!!
頼りになるお姉さんだ。
新宿で待ち合わせした。
すぐに合流。
人混みを掻き分け、暑い中を二人でぶらぶらと散策する。
途中で喫茶店チェーンを見つけ、飛び込んだ。
ふふふ、以前はこんな陽のオーラ漂うお店に耐えられなかった私だけど、今は平気なのだ。
「……ということで夏休み最終日が切なくて」
「分かる分かる。私もずーっとそうだったもん。大学に入ってからはそうでもないけど」
「えっ、なんでですか!?」
「大学は講義を自分で取捨選択して、どの日にどれだけ講義を受けるって組み立てられるの。必修だけ押さえておけば自由なのよ。だから私は割りと日々が半休みたいな暮らしをしてて、後は配信生活だから……」
「いいなあ! 羨ましい!」
「文系はこんな感じだけどね! もちろん勉強はきちんとしてる。レポート多いし。ただ、理系はそこまで自由は無い……」
「うっ」
私が進むのは多分理系の大学なのだ。
そうか……。
私は今みたいな感じで進んでいくのだな……。
「でも、い、今はもうちょっと夏休みの残り香を楽しみたくて……」
「詩的な表現するねえ! そうだなあ……じゃあ、ダンジョン行く?」
「ダンジョンに!? 最終日にわざわざ!?」
「だって、ずーっとダンジョン配信してたでしょ。ダンジョン配信が青春みたいなものじゃない」
「わ、私の青春はダンジョン配信……!!」
言われてみるとそんな気がしてきた。
ちなみに、オープンスペースの会話なので、お互いの名前は出さないように気を使った。
ピョンパルさんの時はそれでバレそうに……あ、あの時はあひったんだったっけ。
「じゃ、じゃあツブヤキックスでダンジョン検索するね。あった」
私が一瞬でダンジョンを見つけたので、カンナちゃんは驚いたようだ。
「早いなー」
「最近ダンジョンの情報探すのすごく上手くなって。あ、この人、ダンジョン情報呟いてるのでフォローするといいですよ」
「ほんと!? でもほら、うちって会社に報告しないとだからフットワークが」
「あー」
二人で店を出てダンジョンへ向かう。
道すがら、カンナちゃんはマネージャーさんに連絡。
「あ、はい。これからはづきちゃんと二人でダンジョン潜ります。配信しときますんで。はい、はい。報告書は後で出します」
会社所属は大変だなあ。
私はツブヤキックスで呟くだけ。
『お前ら、こんきらー。さっき見つけたダンジョンに今から潜ります。できたてダンジョンでーす』
※『フットワークがあまりにも軽い』『今回も突発か!』『夏休み最終日は配信しないのでは……!?』
『私の青春はダンジョン探索にあったんだよ……!!』
※『闇の中の青春!!』『確かに夏休み中の配信、はづきっちの情報密度は異常だった』『夏休み中にアクスタ三回増産掛かったってマ?』
それなりの数のリスナーさんが集まってきたようだ。
配信枠を取って、ダンジョンの前でバーチャライズ。
「それじゃ、始めよっか!」
ちょっと奥まったところにある、古いアパート。
この一室が今さっきダンジョン化したって。
どうやってこんな情報掴むんだろうなあ……。
出来上がってから30分くらいのダンジョンに、私とカンナちゃんは突入した。
「こんきらー! できたてほやほやダンジョンを攻略しまーす! カンナちゃんとコラボでーす!」
※『突発でコラボしとるw』『絶対街中で遊んでて二人で思いついただろ』
鋭い……。
「えっと、今回のダンジョンは、一人暮らしのお年寄りが住んでたはずのところです。亡くなった情報は無いんですけど、つまり……」
みなまで言うまい。
ダンジョンができて間もないので、半分は元のままの部屋。
扉をゴボウと剣で叩いて壊し、突入する私たちなのだ。
大家さんには伝えて鍵を開けてもらったので、外でハラハラしながら見守ってくれている。
「えっと、部屋がくさいのでまずは窓開けます!」
「はづきさん! モンスターは引き受けますから窓を任せますわよ!」
「はーい!」
窓は古くて立て付けが悪い……。
「えいっ」
※『おっ、パワーで窓を粉砕した!』『力づくで開けたら砕け散ったな』『まあダンジョン化したら保険が降りるそうだから大家さん平気でしょ』
あー。
流れるコメント。
襲ってくるモンスター。
生前の恨み言を叫びながら現れる怨霊。
それをカンナちゃんと二人で粉砕する。
この充実感!!
暗く湿ったダンジョンが普通の部屋に戻っていく感覚!
やっぱダンジョン配信って、青春だなあ……!!
こうして、私の夏休みは終わっていくのだった。
さらば、愛しき夏休みよ……!!
午前中を、あれをしなくちゃ、これをしなくちゃ、という思案の中で過ごす私。
うおおおお、何をやってもダメな気がしてきた!
だって昨日なんか、そうめん作って食べてPOPと自撮りして終わりだよ!?
想像を遥かに超える虚無だった。
いや、楽しかったけど。
「だ、だめだ。私一人では何も出てこない。頭の中スッカスカだあ」
私は絶望の鳴き声を漏らした。
困った時にはどうする?
こう言う時には……。
「お昼ごはんよー」
「はーい」
そう、栄養補給だね!
今日は母の作ったそうめんだった。
お昼の麺類生活とも今日でしばらくはおさらば。
私は三束くらい食べた。
お腹いっぱい。
「本当によく食べるわねえ」
二束食べた母がなにか言ってる!
さて、お腹が膨れると気持ちも落ち着いてくるので、さっきまであった焦燥感が消える。
「自分の中にアイデアが無いなら、自分の外に求めればいいじゃない」
これぞナイスアイデア!
ということで。
「カンナちゃん、お知恵を貸して下さい……」
『あー、はづきちゃんも夏休み最終日だもんね! 私もー。今日はオフだし、そうだ、二人で遊びに行こっか!』
「行こう行こう!」
あひゃー!
持つべきものはカンナちゃん!!
頼りになるお姉さんだ。
新宿で待ち合わせした。
すぐに合流。
人混みを掻き分け、暑い中を二人でぶらぶらと散策する。
途中で喫茶店チェーンを見つけ、飛び込んだ。
ふふふ、以前はこんな陽のオーラ漂うお店に耐えられなかった私だけど、今は平気なのだ。
「……ということで夏休み最終日が切なくて」
「分かる分かる。私もずーっとそうだったもん。大学に入ってからはそうでもないけど」
「えっ、なんでですか!?」
「大学は講義を自分で取捨選択して、どの日にどれだけ講義を受けるって組み立てられるの。必修だけ押さえておけば自由なのよ。だから私は割りと日々が半休みたいな暮らしをしてて、後は配信生活だから……」
「いいなあ! 羨ましい!」
「文系はこんな感じだけどね! もちろん勉強はきちんとしてる。レポート多いし。ただ、理系はそこまで自由は無い……」
「うっ」
私が進むのは多分理系の大学なのだ。
そうか……。
私は今みたいな感じで進んでいくのだな……。
「でも、い、今はもうちょっと夏休みの残り香を楽しみたくて……」
「詩的な表現するねえ! そうだなあ……じゃあ、ダンジョン行く?」
「ダンジョンに!? 最終日にわざわざ!?」
「だって、ずーっとダンジョン配信してたでしょ。ダンジョン配信が青春みたいなものじゃない」
「わ、私の青春はダンジョン配信……!!」
言われてみるとそんな気がしてきた。
ちなみに、オープンスペースの会話なので、お互いの名前は出さないように気を使った。
ピョンパルさんの時はそれでバレそうに……あ、あの時はあひったんだったっけ。
「じゃ、じゃあツブヤキックスでダンジョン検索するね。あった」
私が一瞬でダンジョンを見つけたので、カンナちゃんは驚いたようだ。
「早いなー」
「最近ダンジョンの情報探すのすごく上手くなって。あ、この人、ダンジョン情報呟いてるのでフォローするといいですよ」
「ほんと!? でもほら、うちって会社に報告しないとだからフットワークが」
「あー」
二人で店を出てダンジョンへ向かう。
道すがら、カンナちゃんはマネージャーさんに連絡。
「あ、はい。これからはづきちゃんと二人でダンジョン潜ります。配信しときますんで。はい、はい。報告書は後で出します」
会社所属は大変だなあ。
私はツブヤキックスで呟くだけ。
『お前ら、こんきらー。さっき見つけたダンジョンに今から潜ります。できたてダンジョンでーす』
※『フットワークがあまりにも軽い』『今回も突発か!』『夏休み最終日は配信しないのでは……!?』
『私の青春はダンジョン探索にあったんだよ……!!』
※『闇の中の青春!!』『確かに夏休み中の配信、はづきっちの情報密度は異常だった』『夏休み中にアクスタ三回増産掛かったってマ?』
それなりの数のリスナーさんが集まってきたようだ。
配信枠を取って、ダンジョンの前でバーチャライズ。
「それじゃ、始めよっか!」
ちょっと奥まったところにある、古いアパート。
この一室が今さっきダンジョン化したって。
どうやってこんな情報掴むんだろうなあ……。
出来上がってから30分くらいのダンジョンに、私とカンナちゃんは突入した。
「こんきらー! できたてほやほやダンジョンを攻略しまーす! カンナちゃんとコラボでーす!」
※『突発でコラボしとるw』『絶対街中で遊んでて二人で思いついただろ』
鋭い……。
「えっと、今回のダンジョンは、一人暮らしのお年寄りが住んでたはずのところです。亡くなった情報は無いんですけど、つまり……」
みなまで言うまい。
ダンジョンができて間もないので、半分は元のままの部屋。
扉をゴボウと剣で叩いて壊し、突入する私たちなのだ。
大家さんには伝えて鍵を開けてもらったので、外でハラハラしながら見守ってくれている。
「えっと、部屋がくさいのでまずは窓開けます!」
「はづきさん! モンスターは引き受けますから窓を任せますわよ!」
「はーい!」
窓は古くて立て付けが悪い……。
「えいっ」
※『おっ、パワーで窓を粉砕した!』『力づくで開けたら砕け散ったな』『まあダンジョン化したら保険が降りるそうだから大家さん平気でしょ』
あー。
流れるコメント。
襲ってくるモンスター。
生前の恨み言を叫びながら現れる怨霊。
それをカンナちゃんと二人で粉砕する。
この充実感!!
暗く湿ったダンジョンが普通の部屋に戻っていく感覚!
やっぱダンジョン配信って、青春だなあ……!!
こうして、私の夏休みは終わっていくのだった。
さらば、愛しき夏休みよ……!!
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