ゴボウでモンスターを倒したら、トップ配信者になりました。

あけちともあき

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年度末な私の決戦編

第195話 オープニングイベント異常なし!伝説

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 今日は何の日?
 そう!
 カンナちゃんがVRフリースペースの総合ロビー拡張で、宣伝大使を務める日です!

 私が見に行かねばなるまい……。
 朝食の後でいそいそと準備をしていたら、兄からザッコで連絡が来た。

『今日は事務所に来ないのか? 研修生が会いたがっているが』

「カンナちゃんの晴れ舞台を見学に行くので……」

『そうか。伝えておこう』

 カンナちゃん関連だと物分りがいい兄。
 彼女が関わると、私のやる気が天元突破するのが分かってるんだな、きっと。

 そんなこんなで、オープニングイベントに顔を出しますよ!
 今日は完全なオフ。

※『こんな記念日をオフにするとは!?』とかお前らには驚かれていた気がするけど、『カンナに会いに行くからオフなんだろう……』とか真実を理解した人もいた。
 そういうことなのだよ、フフフフフ。

『あ、はづきっちオープニングイベント行くの?』

 たこやきから連絡入ってる。

「そうですー。楽しんできますー。一般アバター使うのでバレないと思いますー」

『そっか。じゃあね、僕が新しいの作ってみたからこれ仕込んでいって』

「なんなんです?」

『一般アバターの下に丼アバター仕込むMOD。さらに丼の中にきら星はづきアバター仕込めるよ』

「ま、マトリョーシカー!」

『その反応がほしかった。ありがとう! じゃあ楽しんできてね』

「はーい、こちらこそありがとうー」

 和気あいあいとやり取りを終えた。
 兄と父以外で肩肘張らずにおしゃべりできる貴重な異性だな。
 たこやきは大事にしよう……。

 ということで、面白いものをもらってしまった。
 私はリアルの私にちょっと似ている、一般のアバターを選択。
 顔とか髪型とかプロポーションは事前にいじってあるけど。

 シュッとした体型というのを経験してみたかったんだよね……。
 そしてVRへゴー!

 621ロビーに降り立っても、誰も私にそこまで注目しなかった。
 きら星はづきや丼じゃないと、こういう反応なのが普通なのね。

「これは行動しやすい……。注目されないのはこんなに楽なんだなあー」

 ほほほ、と快適さを堪能しながらフリースペースに移動する私だった。
 今後、フリースペースは総合ロビーという名前になるんだそうで。

 降り立ったら人、人、人!
 どこまでも続く、無限の人混み!

「あひー、とんでもないことに!」

 そうすると、なんか近くにいた角の生えたおじさん風のアバターが親切に教えてくれた。

『そりゃあそうさ! 日本中のVR者たちが集まってるんだ。今回のビッグイベントは土曜日に被せてきたし、みんな参加してくれって言ってるようなもんだぜ!』

「な、なるほど~」

『お前さんは誰かと参加するのかい? 一人? だったら気楽だな! 何よりも一人が最高だ。嫉妬しなくていいもんな。楽しんでいってくれよ! 最後には大罪的ビッグイベントも待ってるからよ! 糧になってくれ!』

「あ、はーい、ありがとうございますう」

 親切な人だなあ。
 私は一人、まったりと総合ロビーを行く。
 キョロキョロ見回し、セレモニーが行われる場所を探すのだ。

 おっ、あれは……。

『カンナちゃんまだかな』『楽しみー』『お嬢が出てきたらみんなで呼ぼうぜ』『今から練習しない?』『いいな!』『じゃあ声を合わせて……』『お嬢~!!』

 カンナちゃんのリスナーさんたちだ!!
 私はいそいそと彼らの中に混じった。

『お嬢~!』「お嬢~!」

 楽しくコールをして、和気あいあいと楽しむ。

『まさかカンナちゃんがこんなにビッグになるとはね! 嬉しい~』

「私も私も。デビュー前から絡みがあったけど、本当にビッグになってくれてうれしい」

『絡み……?』

 ハッ!

「で、デビュー前のアカデミー時代から追っかけてて」

『おおー、古参~!!』

 危ない危ない。
 私が配信者だとバレないようにしないと。
 でもまあ、あんまり個性を出してない一般アバターのままだから、そこまで怪しまれなかったみたい。

 配信者との特別な関係があるって吹聴する人は、よく出るしね!
 ツブヤキックスだと、よくおこのみが『俺は最初にはづきっちの配信見てた一人だぞ!』とか言って嘘認定されまくってるなあ。
 あれは本当なんだけどなあ。

 そんなこんなで時間を潰していたら、いよいよイベントの始まりがやって来た。
 私はカンナちゃんのリスナーさんに混じって、うおおおーっと歓声を上げている。
 この一体感!

 なるほど、アイドルのコンサートとか行ってみんなで叫ぶのはこの気持ちよさがあるのかあ!
 何事もやってみないと分からないものなのだ!

 カンナちゃんが笑顔で手を振ってくれる。
 水無月さんと卯月さんも、リスナーさんたちが来ていて声援を浴びているではないか。
 よきよき。

 トライシグナルもすっかり大きくなったなあ……。
 私は腕組みしながら笑顔で頷くのだった。
 いつもよりも腕を組みやすいぞこのアバター。

『みんなー! こんにちはー!!』

 トライシグナルの三人が、声を揃えている。
 爽やか~。

『総合ロビー公式サポーター、トライシグナル! リーダーのカンナ・アーデルハイドですわ! 皆様、ごきげんようー!』

 うおおー!
 カンナちゃーん!!

『同じく公式サポーター、トライシグナルの水無月みなでーす! この日のために禁煙して願掛けしてきました。よろしくー!』

 いつもはダウナーな水無月さんが今日は声を張り上げていて大変可愛い。

『みんなー! サクラサク! 卯月さくらでーす! あっ、公式サポーターです! あとトライシグナルね!』

 三人の中でのポン担当、卯月さんがいつものようにやらかしたので、ドッとみんな笑った。
 うんうん、いい感じいい感じ。

 さらにライブダンジョンのグループの四人が挨拶している。
 おお、リスナーの数はあっちの方が多いかもしれない。
 だけど熱量はトライシグナルも負けてないぞー。

『負けないように応援しなくっちゃ!!』

「で、ですねー!!」

 隣のリスナーさんと、頑張るぞーっと誓い合う私なのだ。
 ああー、配信者のファンってとってもいいものですねえ。
 なんだか元気を分けてもらえている気がする……。

 このイベントはもう大成功間違いなしですわ。
 何事もなく進んでいくに違いない……。

 私の心のなかで、お前らが『フラグ、フラグー!』とか叫んでいるのだった。
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