おいでよ!死にゲーの森~異世界転生したら地獄のような死にゲーファンタジー世界だったが俺のステータスとスキルだけがスローライフゲーム仕様

あけちともあき

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スローライフが攻めてきたぞーっ編

第42話 退廃帝のおでましと退場

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 そこは妙な空間だった。
 城の頂上にあるはずなんだが、天井がぽっかり空いていて、そこから見えるのが空じゃない。
 宇宙である。

「これは兄弟神と直接繋がったりしてない?」

『かも知れませんなあ』

 玉座の間なんだろうが、だだっ広い空間には氷ゾンビが一体もいない。
 そしてずーっとずっと奥に、玉座と妃の席が並んでいる。

 妃の席には、繭状になった何かが収まっていた。
 そして玉座の後ろには、ここに来るまで何度も見てきた肖像画が。

「いないねえ」

 ポタルがきょろきょろしながら一歩踏み出す。

「ほらー。そうやってホイホイ先に行く。死ぬぞ死ぬぞ」

 俺が慌ててポタルを後ろから引っ張った。

「あわわ」

 俺のところに倒れ込んでくるポタル。
 そんな俺たちの目の前で、肖像画が動き出した。
 絵の中がぐにゃぐにゃと蠢き、そこから立体化した腕が突き出してくる。

 気付くと、肖像画に描かれた退廃帝の姿は化け物になっていた。
 そいつが二次元から三次元に変わりつつ、這い出してくるのだ。

『誰か……。余の城に踏み入る愚か者は誰か……。ああ、足りぬ……足りぬ……。神の遺物が足りぬ……。捧げ、積み上げて、我が妻を呼び戻さねばならぬ……。民を積み上げた……。国を積み上げた……まだだ。まだ足りぬ……。世界の全てを積み上げねば……』

 なんということだ。
 俺は退廃帝を前にして唸った。

「こいつ絵から出てきたけど、何かあるたびにいちいち絵から出てくるの?」

『ワッツ!? タマルさんそこに反応したんですか!?』

「いや、だってさ。効果的な登場かもしれないけど、日常生活を送る分にはこのアクションは蛇足だろ……。スローライフどころじゃないぜ」

『さすがタマル様、スローライフのことしか考えてませんな』

 ちなみに、退廃帝もこっちのわちゃわちゃなんか聞いちゃいなかった。
 妃の席にある繭を撫でつつ、ぼそぼそなんか愛の言葉を囁いている。
 そしてこっちを鬼の形相で向き、

『我が妻は渡さぬぞ! 全てを捧げ、我が妻を取り戻すのだ! そのために積み上げる! あらゆるものを積み上げていくのだ!! うぬらも積み上げてくれよう!』

 退廃帝の外見は、ねじくれた角が生えた3mくらいあるおっさんである。
 クマみたいな体格をしており、なんか空気中の水分を氷結させてでっかい氷の斧を作り上げた。

 こっちにのしのし歩いてくるな。
 ボス戦である。

 だが、忘れてはいけない。
 これはスローライフなのだ。

 俺は悠然と退廃帝に向かって歩み寄り……。
 おもむろにティータイムセットをそこに設置した。

『ぬわあ!!』

 退廃帝は咆哮とともに、巨大な斧を振り回す。
 それがティータイムセットに当たって、ぼいーんと跳ね返された。

『氷の束縛をうぬらに!!』

 空中からダイヤモンドダストが出現し、俺やラムザー、フランクリンを包み込もうとする。

『オー! コーション、コーション! 退廃帝の束縛術式でーす! 凍てつかせて相手の生命を吸い取る恐るべき魔法でーす!!』

「なるほど!」

 魔法を使っている最中の退廃帝の目の前に、すでに俺がいる。

『果てよ、侵入者!!』

 振り回した斧の先に、氷の彫像を設置する。
 また斧がぼいーんと跳ね返された。

 氷の彫像は俺をかたどったものである。

『わ、我が城に侵入者の像を!? 冒涜である!! 束縛術式、第二限定解除……』

「そいっ」

 なんかかっこよく詠唱を始めた退廃帝を、虫取り網で叩いた。
 ピョインッと音がして、退廃帝がアイコンになった。
 勝利である。

『えっ!?』

 フランクリンが絶句した。

「虫取り網の前で、悠長に呪文を詠唱するやつがあるか。ティータイムセットと俺の彫像。二手詰みだな」

『た……退廃帝は恐るべき術式を使い、第二段階への進化も持っている恐ろしい魔人候だったのでーす……』

「隠し芸なんか出す前に捕獲しちゃうに決まってるだろ。……あ、あの繭は博物館に寄付しよう」

 俺は繭に近づき、虫取り網でゲットした。

『ウグワーッ! 退廃帝を撃破しました! 1000ptゲットです!』
『ウグワーッ! 妃の繭をゲット!』

 繭は珍しいアイテム扱いみたいだが、これ単体では何もレシピが浮かんでこない。
 博物館用のアイテムということだな。

 帰りに、氷ゾンビも数体虫取り網でゲットしておいた。
 博物館に寄付するなら、あまりポイント高くなくてもいいだろう。

 というか、退廃帝を捕獲したら氷ゾンビたちも溶けていってないか?

『彼らは退廃帝の力で留め置かれていた、いわばアンデッドでーす。その力が失われた今、消えていくのはアイネビタブリー』

「えっ、なんて?」

『必然って意味でーす』

「雪だるまの英語は難しすぎる」

『ソーリー』

「オーケーオーケー」

「またタマルとフランクリンが変な言葉でしゃべってる」

 下まで降りてきたら、馬車は無事であった。
 やっぱり手出ししないで無視してると問題ない系だったか、氷ゾンビ。

 途中、宝物庫に立ち寄った。
 浮遊石を三つばかりゲットである。
 あと一個で飛空艇が作れるな……!

「それでフランクリン、ここからどうするんだ?」

『アイノウ、退廃帝は恐ろしい力を持っていました。実はミーは命を掛けて自爆し、退廃帝に大ダメージを与えられる能力があったのでーす』

「なんと、最初から特攻するつもりだったのか」

『イエス。ですが、タマルさんがなんだかよく分からない力でぴょいっと退廃帝を倒したので、ミーの命の使い所がなくなりました。反故にする予定だったのですが、約束通りタマルさんの食客に加わりましょう』

「そうかそうか! はっはっは、うちのスローライフにもまた住民が増えたなあ!」

『ウグワーッ! 住民が増えました! 1000ptゲット!』


▶UGWポイント
 2000pt

 住民
 雪だるまのフランクリン

 獲得
 退廃帝の斧
 
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