おいでよ!死にゲーの森~異世界転生したら地獄のような死にゲーファンタジー世界だったが俺のステータスとスキルだけがスローライフゲーム仕様

あけちともあき

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スローライフよ永遠に!編

第93話 逢魔卿がスイムスーツに着替えたら

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『どうだ?』

「いいですな」

『おっ、タマル様が語彙を失って我のような口調になってますな』

 逢魔卿のスイムスーツ姿を見せつけられて、俺は唸るばかりである。
 あのローブの下にけしからん肉体が!

 黒と金色を主体にしたスイムスーツは、クールでゴージャス。
 逢魔卿の体のあちこちにヒレがついているので、これはスーツから出るようになっている。
 この人、もともと水棲生物か何かだったのだろうか。フグに乗ってるし、配下がリセンボンだもんな。

『これがスイムスーツか! 体にフィットする衣装というものは初めてだな! この姿で水に潜るのだろう? 楽しみでならぬ。さあ、早く案内せよ』

「逢魔卿かわいいー! 一緒に行こ、一緒に!」

『潜水というものを教えてあげるわ』

 ポタルがはしゃぎ、キャロルは先輩風を吹かせながら三人手をつないで逢魔卿を連れて行ってしまう。

「うーん」

『おやタマル様、何を満足げな顔で唸っておいでなのですかな? タマル様は基本的に女性に弱いですなあ』

「それは否定しない。俺はすこぶる女性に弱い……」

『みんなキュートですからねー! ミーにホットなボディがあったら放っておかないガールばかりでーす!』

「そういやフランクリンの元の肉体ってどうだったの」

『見た目は今とセイムですねー』

「もともと雪だるまだったんじゃないか。いつホットなボディがあったんだ」

 溶けない雪だるまだったとでも言うのか?

 そんな俺たちもスイムスーツに着替え、カルデラ湖へ向かう。
 ここにはこの間閃いたレシピで、非常用階段を設置してあるのだ。
 湖までショートカットできるぞ。

『ピピー』

 リボンを伸ばしたポルポルが、俺の背中にくっついてきた。
 多目的リボンはマニピュレーターとしても使えるようである。
 で、俺の肩の上にちょこんと乗る。

 歩幅が小さいポルポルは、こうして移動するのである。

『おおっ、これが退廃帝の城の跡か! ざまあみろ。城ごと沈んでいるな』

 逢魔卿が愉快げである。

「じゃあ逢魔卿、飛び込もっか!」

『なにっ』

「いち、にの」

『さんっ!』

 ポタルとキャロルが、逢魔卿の手を握ってジャンプした。

『うーわー』

 逢魔卿が抜けた悲鳴をあげながら、水の中に落ちる。
 シュノーケルがあるから、呼吸ができるので安心だ。

 待てよ。
 逢魔卿はもしかしてエラがあり、水中でも普通に呼吸ができるのでは?

『こらーっ』

「逢魔卿が怒ったー」

『どうせ飛び込むんだからいいじゃないねー』

 はっはっは、そんな事はどうでもよかったな。
 おお、寿命が伸びる光景だ……。
 眼福眼福……。

『タマル様のそんな欲望にまみれた幸せそうな顔を久々に見ますな。二日ぶりくらい』

「割りと最近だな……」

『創造神を連れ帰った時満足げでしたからな』

「常時俺はこの世界では満たされているかもしれない。スローライフを世界に伝導しているとな。脳内の報酬系が刺激されて快楽物質がドバドバ出る」

『おお、この正気とは思えぬ旅の数々はタマル様の趣味でしたか! 我は好きですぞ』

「わはは、ラムザーが俺を好きなことはよく知ってるぞー」

「そこ!! イチャイチャしない!!」

 ポタルが水中からザバーッと飛び出してきた。
 そして俺を横から抱えると、そのまま地面から引っこ抜くように水中へと投げ込む。

「ウグワーッ!?」

 頭から湖に叩き込まれた俺である。
 素早くシュノーケルを装着する。

 横を、スクリューの勢いでフランクリンが進軍していく。
 ポルポルが俺の上から、フランクリンに乗り移った。

『来たかタマル』

 真紅の髪を水になびかせて、逢魔卿がこちらに向かってくる。
 既にキャロルより泳ぎが上手い。

『美しい世界だ。ヘルズテーブルの真の姿は、かくも美しかったのだな。わらわたちが知るあれは、この世界を覆う偽りの姿だったのだ』

「兄弟神好みのアポカリプスな世界に染められてるんだろうな」

『うむ。人間どもを追い出してしまえば、人間が暮らしやすい世界を維持する意味などなくなるからな。多くの怪物が闊歩し、彼らが兄弟神を崇める世界こそが、あやつら神々の理想郷だった』

 この世界、人間がほとんどいないもんなあ。

「兄弟神全部やっつけたら人間戻ってくる?」

『戻ってこないぞ。ほぼ絶滅している。神々が敵に回った時点で、人間たちも仲違いを初めて内部分裂したからな。そこを衝かれて数を大きく減じた後、そこでもまた内部分裂して互いに争い始めた』

「これは救えないやつ」

 共通の敵が現れても、人間は一つになれないものである。
 じゃあ、流血男爵領の人間たちは絶滅危惧種だな。

『そんな事よりもタマルよ。次なる行き先は赤き湿原の迷宮だそうだな』

「ポタルから聞いた?」

『うむ。彼の地の魔人侯の噂を聞かぬだろうが、それは無理もない。あれは兄弟神の側仕えに過ぎぬ。赤き湿原の地にて、そなたは兄弟神そのものと対峙することになろう』

「えっ、神様が直々に統治してるわけ? 大人げないなあ」

『ああ、大人げない者があそこを支配しているのだ……。ちなみに彼の地の魔人侯は残影伯。慇懃無礼で、神の威光を笠に着る腰巾着よ』

「その顔。残影伯とか言うのめちゃくちゃ嫌いだろ」

『大嫌いだ。そんな面白くない話はここで終わりだ。今は水遊びを楽しむとするぞ。タマルよ、案内せよ。退廃帝の城の有様を眺めに行きたい』

「いい趣味だなあ」

 ウキウキしている風な逢魔卿の手を引いて、俺は退廃帝の城へと泳いでいくのだった。
 なお、ポタルが横に並んできては、ぼいんぼいーんと体当たりしてくるのだが。

「やめなされポタルさん、やめなされ」

「なんで逢魔卿ばっかり親切にしてるのー? 私もチヤホヤしてよー」

『同盟を結んだ高貴な者が相手をエスコートするのは当然だろう。何もおかしくない』

「逢魔卿もなんかきょとんとしてるし!! もういいから私もチヤホヤしてー!!」

 ということで、逢魔卿とポタル、かわりばんこに手を引きながら泳ぐことになってしまった。
 なんだこれは……!?
 モテ期か……!?
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