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第1章 気が付かない3人の関係
再会④
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目を丸くして慌てるマックスは、わたしが、ガラリとイメージチェンジしたことに驚いている。
「あっ姉上っ! どうしたんですか! その顔は一体何があったんですか? そっ、それに、その赤いドレス……、妃の試験に行くんですよね。どうしてそれを着てるのか知りませんけど、姉上は派手だから嫌だと言って、奥にしまい込んでいたでしょう。もしかして、他の令嬢の嫌がらせですかっ! それなら僕が他の妃候補に注意しますが」
想像以上に大袈裟な反応をしたマックスを見て、わたしは思わずニヤリとしてしまった。
どうやらわたしの武装した魅力は、一番身近な人が驚くほどの出来栄えなのだ。
右手の人差し指を左右に揺らして、マックスの疑念を否定しつつ、わたしの美しさに驚くマックスへ、少し得意気に教えてあげることにした。
「チッチッチッ! 違うわよ。マックスもわたしの美しさに驚いているのね。でも、これはねフレデリック殿下のためなのよ。マックスは知ってた? フレデリック殿下の好みは、美しくて魅惑的な女性なの。これまでのわたしには、美しさが足りなかったから。これならきっとフレデリック殿下の目に止まるはずだわ」
引きつった顔をするマックス。
まぁそうね、ことある度にわたしのことを「可愛い」と言ってるマックスは、幼顔が好み、なんでしょう。
でもフレデリック殿下は違うから。彼の理想は魅惑的な女性。
「いや、それは、ちょっと止めた方がいいと僕は思いますよ。姉上に全く似合っていませんし、むしろ可愛い姉上の容姿が、完全に台無しになっていますから」
「いいえ。マックスの好みが、わたしのような童顔だからそう思うのよ。フレデリック殿下は、1度見たら忘れられない美人がお好みなんですもの、これくらいやらないとね」
そうよ、でなきゃ女の戦いなんて勝てやしない。
「いいですか姉上。今の姉上の姿は、はっきり言って変です。でも、姉上がそれが良いと言うなら、悪い虫よけになるでしょうし僕は止めません。でも、もし姉上がそれで傷付いて、変な夢から醒めたら、2度とそんな馬鹿な気を起こさないように僕は全力で止めますよ」
確かに言われてみれば、リックに再会して気持ちが高ぶってしまった。そのせいで、わたしは少し調子に乗っていたかもしれない。
だけど、これだけは断言できる「わたしが幸せな夢から覚めることはない」、それだけは自信がある。
だって、フレデリック殿下とは運命の出会いをしているから。
「大丈夫よ。もし、フレデリック殿下と何も起きなかったら、そのときは、マックスに何とかしてもらうわ。婚期を逃した姉のために、公爵家の力を使って何としてでも、お相手を見つけてもらわないとね。じゃないと、わたしの母になる夢がかなわないから」
「姉上は、今の言葉を絶対に忘れないでください、絶対ですよ。そうなった時には、僕が納得する、後腐れのない相手を全力で探しますから」
「わたしが約束を忘れるなんて、あるわけないでしょ。だけど安心して、マックスが、わたしの結婚相手を探す日なんて来ないわよ」
これまで父の言いつけを守り、家に閉じこもって勉強ばかりしていたから、わたしは相当に自信がある。
昨日、教師が覚えるように言っていた建国史。
他の令嬢は、無理だと悲鳴を上げて嫌がっていた。
でも、わたしは6歳の時から暗唱できる。
だから、妃試験は何とかなる気がしている。
だけど、試験だけで妃になるのは違う気がする。
フレデリック殿下から、もう一度わたしを「好きだ」と言って欲しいから。
こう見えても、わたしはワーグナー公爵家の事業の大半を担っており、そちらも手を抜く訳にはいかない。
予想外の妃試験に時間がとられることになり、気になっていることをマックスへ依頼することにした。
「わたしは、しばらく妃試験で忙しくなるから、マックスに、お願いしたいんだけどいい?」
「何ですか?」
「フレンツ王国との取り引きは、何年か後には、できなくなるかもしれない、わたしは、そう分析しているの。あの国の急激な人口増加が少し気になっているから。フレンツ王国から買い付けている物の中で、近隣国ではどうしても買えない物が出てきそうなの」
「フレンツ王国は同盟国ですよ。あり得ません」
「今はね、でもこの先も続くとは限らないわ。わたしが妃になってからそうなれば、交渉するつもりでいる。だけど、もし間に合わなかったら」
「妃になるのが前提の話ですね」
「フレデリック殿下とは運命だもの、それは当たり前でしょ。だけどフレンツ王国がいつ動くか分からない。今から、ここから離れた国の言語も勉強しておきたいから漢字って文字で書かれた本をたくさん買い集めて欲しいのよ。読み漁れば、何とか理解できるかもしれないから」
「普通は知らない文字で書かれたものを見たって、分かるようになりませんけどね。まぁ、姉上ならできるのか。分りました、各国に当たって買い付けておきます」
突拍子もない話も、マックスであれば信じてくれると分かっていた。わたしの言動を疑わずに了承してくれる弟の存在にホッとしてしまう。
だけど、これから妃試験に向かうんだもの、我が家の事業のことばかり考えている場合じゃないわね。
まずはフレデリック様を虜にする作戦を頑張らなきゃ。
「あっ姉上っ! どうしたんですか! その顔は一体何があったんですか? そっ、それに、その赤いドレス……、妃の試験に行くんですよね。どうしてそれを着てるのか知りませんけど、姉上は派手だから嫌だと言って、奥にしまい込んでいたでしょう。もしかして、他の令嬢の嫌がらせですかっ! それなら僕が他の妃候補に注意しますが」
想像以上に大袈裟な反応をしたマックスを見て、わたしは思わずニヤリとしてしまった。
どうやらわたしの武装した魅力は、一番身近な人が驚くほどの出来栄えなのだ。
右手の人差し指を左右に揺らして、マックスの疑念を否定しつつ、わたしの美しさに驚くマックスへ、少し得意気に教えてあげることにした。
「チッチッチッ! 違うわよ。マックスもわたしの美しさに驚いているのね。でも、これはねフレデリック殿下のためなのよ。マックスは知ってた? フレデリック殿下の好みは、美しくて魅惑的な女性なの。これまでのわたしには、美しさが足りなかったから。これならきっとフレデリック殿下の目に止まるはずだわ」
引きつった顔をするマックス。
まぁそうね、ことある度にわたしのことを「可愛い」と言ってるマックスは、幼顔が好み、なんでしょう。
でもフレデリック殿下は違うから。彼の理想は魅惑的な女性。
「いや、それは、ちょっと止めた方がいいと僕は思いますよ。姉上に全く似合っていませんし、むしろ可愛い姉上の容姿が、完全に台無しになっていますから」
「いいえ。マックスの好みが、わたしのような童顔だからそう思うのよ。フレデリック殿下は、1度見たら忘れられない美人がお好みなんですもの、これくらいやらないとね」
そうよ、でなきゃ女の戦いなんて勝てやしない。
「いいですか姉上。今の姉上の姿は、はっきり言って変です。でも、姉上がそれが良いと言うなら、悪い虫よけになるでしょうし僕は止めません。でも、もし姉上がそれで傷付いて、変な夢から醒めたら、2度とそんな馬鹿な気を起こさないように僕は全力で止めますよ」
確かに言われてみれば、リックに再会して気持ちが高ぶってしまった。そのせいで、わたしは少し調子に乗っていたかもしれない。
だけど、これだけは断言できる「わたしが幸せな夢から覚めることはない」、それだけは自信がある。
だって、フレデリック殿下とは運命の出会いをしているから。
「大丈夫よ。もし、フレデリック殿下と何も起きなかったら、そのときは、マックスに何とかしてもらうわ。婚期を逃した姉のために、公爵家の力を使って何としてでも、お相手を見つけてもらわないとね。じゃないと、わたしの母になる夢がかなわないから」
「姉上は、今の言葉を絶対に忘れないでください、絶対ですよ。そうなった時には、僕が納得する、後腐れのない相手を全力で探しますから」
「わたしが約束を忘れるなんて、あるわけないでしょ。だけど安心して、マックスが、わたしの結婚相手を探す日なんて来ないわよ」
これまで父の言いつけを守り、家に閉じこもって勉強ばかりしていたから、わたしは相当に自信がある。
昨日、教師が覚えるように言っていた建国史。
他の令嬢は、無理だと悲鳴を上げて嫌がっていた。
でも、わたしは6歳の時から暗唱できる。
だから、妃試験は何とかなる気がしている。
だけど、試験だけで妃になるのは違う気がする。
フレデリック殿下から、もう一度わたしを「好きだ」と言って欲しいから。
こう見えても、わたしはワーグナー公爵家の事業の大半を担っており、そちらも手を抜く訳にはいかない。
予想外の妃試験に時間がとられることになり、気になっていることをマックスへ依頼することにした。
「わたしは、しばらく妃試験で忙しくなるから、マックスに、お願いしたいんだけどいい?」
「何ですか?」
「フレンツ王国との取り引きは、何年か後には、できなくなるかもしれない、わたしは、そう分析しているの。あの国の急激な人口増加が少し気になっているから。フレンツ王国から買い付けている物の中で、近隣国ではどうしても買えない物が出てきそうなの」
「フレンツ王国は同盟国ですよ。あり得ません」
「今はね、でもこの先も続くとは限らないわ。わたしが妃になってからそうなれば、交渉するつもりでいる。だけど、もし間に合わなかったら」
「妃になるのが前提の話ですね」
「フレデリック殿下とは運命だもの、それは当たり前でしょ。だけどフレンツ王国がいつ動くか分からない。今から、ここから離れた国の言語も勉強しておきたいから漢字って文字で書かれた本をたくさん買い集めて欲しいのよ。読み漁れば、何とか理解できるかもしれないから」
「普通は知らない文字で書かれたものを見たって、分かるようになりませんけどね。まぁ、姉上ならできるのか。分りました、各国に当たって買い付けておきます」
突拍子もない話も、マックスであれば信じてくれると分かっていた。わたしの言動を疑わずに了承してくれる弟の存在にホッとしてしまう。
だけど、これから妃試験に向かうんだもの、我が家の事業のことばかり考えている場合じゃないわね。
まずはフレデリック様を虜にする作戦を頑張らなきゃ。
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