78 / 116
第3章 貴女をずっと欲していた
運命の赤い糸⑧
しおりを挟む
【SIDE アリーチェ】
わたしの事を間者だと勘違いしていたって…………、そんなあり得ない話を真面目な顔で言うフレデリック様。
「酷い。わたしが間者って……、どうして変な想像しちゃうんですか? もう。どうやっても見えないでしょう、ふふっ」
「もし、アリーチェが本当に敵国の間者でも、それならもう、アリーチェに溺れて死んでもいいと思った。その覚悟を決めるのに時間が掛かり過ぎてしまった。迎えに行かない私の所へ、アリーチェから2回も来てくれるとは」
わたしが敵国の間者でもいいって、フレデリック様。
もう……この国の王子様なのに、馬鹿なんだから。
「フレデリック様が好きだから」
「信じられない、夢でも見ているようだアリーチェ……。私は、アリーチェの為なら、命をかけられる、それくらい愛してる」
ギュッとフレデリック様に抱きしめられて、これは夢じゃないって実感した。
今まで、何度も勘違いをしてきたけど、今度こそ本当なんだって、堪らなく幸せな気持ちになった。
「――でも、まさか本当に、私が、ベッドに連れこまれて、服を脱がされるとは思ってもいなかった」
フレデリック様が、また何を言っているのか、わたしは分からなかった。
だってそんなこと、していないのに。
してたッッ――!
「え――…………。ギャッ、本当だ、ちっ違います。そんなんじゃないですから」
フレデリック様のお怪我に夢中になって、ままっまさか、わたし、なんてことをしてたの。穴があったら入りたい。いや、ないから、恥ずかしくて、ここから逃げ出したい。
わたしは、立ち上がって逃げようとした――。
「そう、違うのか……」
違うのか、と言われてズキンと心に痛みが走る。
だって、わたしは、ずっとフレデリック様を待っていたから。
だから自分で選んだ気持ちは――、これしかなかった。
「――ううん、やっぱり違わない!」
わたしからフレデリック様の胸に飛びこんで、彼をギュッと抱きしめた。
本当の夫婦のキスは、舞台の夫婦のとは全然違っていた。
お互いの吐く息さえも求め合うようなキスは、2人の糸を結びつけるみたい。
彼のキスで、まるで自分の体が溶けていくみたいに力が抜けてしまう。
何度も息が苦しくなって離れても、もう1度彼のことを求めずにはいられなかった。
頭の中が痺れていくと同時に、もっと、もっと、フレデリック様と1つになりたいと、勝手に体がうずいて教えてくれたから。
フレデリック様がわたしの体に触れると、体の奥から自然に声が漏れた。
初めて出る自分の声が、フレデリック様に快感を強請っているみたいに思えて、恥かしくてたまらなかった。
わたしが恥ずかしいと言えば、フレデリック様は妻に襲われた自分の方が恥ずかしいと笑って、また、2人だけの秘密の約束をした。
痛くてボロボロ泣くわたしに、何故か、フレデリック様も泣いていた。
わたしを大切にしてくれる、その優しい手が、わたしの嫌なことはしないって分かるから、怖くない。
2人の赤い糸が、2度と切れないように紡ぎ合って、初めて感じた温もりは、心地よくて、驚く程に熱かった。
こんな幸せな時間が、この世界にあるって、今まで誰も教えてくれなかったけど、大好きな王子様が初めて教えてくれた。
ううん、きっと、フレデリック様じゃなかったら、わたしはこの幸せを知らないままだった。
この腕の中、それ以上に安心する場所はないから。
あの日、リックに出会う奇跡がなかったら。
出会って直ぐに好きだと言ってくれたリックが、わたしの心の中にずっといなければ、わたしはきっと、もっと昔にマックスに流されてた。
弟しか知らなかったわたしは、フレデリック様と同じ位、優しい手の弟へ、何も考えずに恋心を抱いたはずだもの。
でも、好きな人と1つになった今なら分かる。
自分が安心できる人以外に、触れられるのは、絶対に無理だって心と体が拒絶する。
もし、マックスに流されていれば、わたしは……誰かと……。
それを分ってから、引き返すことのできない自分を想像して、思わず身震いする。
「アリーチェ、寒いの?」
「寒いのは苦手だけど、フレデリック様がいるから温かい」
「可愛いぃ」
わたしの瞳の映る、あの日のままの王子様に改めてドキッとした。
ずっと、わたしを引き留めていてくれて、ありがとうリック…………。
「フレデリック様の方がカッコいいわ。出会って直ぐにプロポーズするなんて」
「アリーチェに、悲しい想いをさせるつもりで言った訳じゃないんだ。目の前にいて、気づかないなんて、本当に自分が情けない。怒ってくれて構わない」
「少しも怒っていないから気にしないで。それよりも、わたしの大切な王子様は、この先も、わたしが守ってあげるから安心してください」
フレンツ王国…………。
この国を、属国にはさせないから。
「いや、絶対に何もするな。アリーチェは、ずっと私の傍にいるだけでいい。頼むから勝手に変なことはするな。守ってくれと、アリーチェには頼んでいない。1人で勝手に動かれる方が困る」
「フレデリック様酷い、そんな必死になって拒絶しなくてもいいのに。わたしのこと、やっぱり信用してないんだ。おかしいと思ったんです、急に優しくなったから」
「違う、そうじゃないから。アリーチェに何かあったら、私が困るから」
「ふふっ、こう見えて、しっかりしているんですよわたし。だから大丈夫です。王城の資料庫だって1人で行って、ちゃんと調べられるし」
「駄目だ、アリーチェは1人では手に負えん」
「2人でやれば何とかなります」
大丈夫、フレデリック様となら絶対上手くいくもの。
わたしの事を間者だと勘違いしていたって…………、そんなあり得ない話を真面目な顔で言うフレデリック様。
「酷い。わたしが間者って……、どうして変な想像しちゃうんですか? もう。どうやっても見えないでしょう、ふふっ」
「もし、アリーチェが本当に敵国の間者でも、それならもう、アリーチェに溺れて死んでもいいと思った。その覚悟を決めるのに時間が掛かり過ぎてしまった。迎えに行かない私の所へ、アリーチェから2回も来てくれるとは」
わたしが敵国の間者でもいいって、フレデリック様。
もう……この国の王子様なのに、馬鹿なんだから。
「フレデリック様が好きだから」
「信じられない、夢でも見ているようだアリーチェ……。私は、アリーチェの為なら、命をかけられる、それくらい愛してる」
ギュッとフレデリック様に抱きしめられて、これは夢じゃないって実感した。
今まで、何度も勘違いをしてきたけど、今度こそ本当なんだって、堪らなく幸せな気持ちになった。
「――でも、まさか本当に、私が、ベッドに連れこまれて、服を脱がされるとは思ってもいなかった」
フレデリック様が、また何を言っているのか、わたしは分からなかった。
だってそんなこと、していないのに。
してたッッ――!
「え――…………。ギャッ、本当だ、ちっ違います。そんなんじゃないですから」
フレデリック様のお怪我に夢中になって、ままっまさか、わたし、なんてことをしてたの。穴があったら入りたい。いや、ないから、恥ずかしくて、ここから逃げ出したい。
わたしは、立ち上がって逃げようとした――。
「そう、違うのか……」
違うのか、と言われてズキンと心に痛みが走る。
だって、わたしは、ずっとフレデリック様を待っていたから。
だから自分で選んだ気持ちは――、これしかなかった。
「――ううん、やっぱり違わない!」
わたしからフレデリック様の胸に飛びこんで、彼をギュッと抱きしめた。
本当の夫婦のキスは、舞台の夫婦のとは全然違っていた。
お互いの吐く息さえも求め合うようなキスは、2人の糸を結びつけるみたい。
彼のキスで、まるで自分の体が溶けていくみたいに力が抜けてしまう。
何度も息が苦しくなって離れても、もう1度彼のことを求めずにはいられなかった。
頭の中が痺れていくと同時に、もっと、もっと、フレデリック様と1つになりたいと、勝手に体がうずいて教えてくれたから。
フレデリック様がわたしの体に触れると、体の奥から自然に声が漏れた。
初めて出る自分の声が、フレデリック様に快感を強請っているみたいに思えて、恥かしくてたまらなかった。
わたしが恥ずかしいと言えば、フレデリック様は妻に襲われた自分の方が恥ずかしいと笑って、また、2人だけの秘密の約束をした。
痛くてボロボロ泣くわたしに、何故か、フレデリック様も泣いていた。
わたしを大切にしてくれる、その優しい手が、わたしの嫌なことはしないって分かるから、怖くない。
2人の赤い糸が、2度と切れないように紡ぎ合って、初めて感じた温もりは、心地よくて、驚く程に熱かった。
こんな幸せな時間が、この世界にあるって、今まで誰も教えてくれなかったけど、大好きな王子様が初めて教えてくれた。
ううん、きっと、フレデリック様じゃなかったら、わたしはこの幸せを知らないままだった。
この腕の中、それ以上に安心する場所はないから。
あの日、リックに出会う奇跡がなかったら。
出会って直ぐに好きだと言ってくれたリックが、わたしの心の中にずっといなければ、わたしはきっと、もっと昔にマックスに流されてた。
弟しか知らなかったわたしは、フレデリック様と同じ位、優しい手の弟へ、何も考えずに恋心を抱いたはずだもの。
でも、好きな人と1つになった今なら分かる。
自分が安心できる人以外に、触れられるのは、絶対に無理だって心と体が拒絶する。
もし、マックスに流されていれば、わたしは……誰かと……。
それを分ってから、引き返すことのできない自分を想像して、思わず身震いする。
「アリーチェ、寒いの?」
「寒いのは苦手だけど、フレデリック様がいるから温かい」
「可愛いぃ」
わたしの瞳の映る、あの日のままの王子様に改めてドキッとした。
ずっと、わたしを引き留めていてくれて、ありがとうリック…………。
「フレデリック様の方がカッコいいわ。出会って直ぐにプロポーズするなんて」
「アリーチェに、悲しい想いをさせるつもりで言った訳じゃないんだ。目の前にいて、気づかないなんて、本当に自分が情けない。怒ってくれて構わない」
「少しも怒っていないから気にしないで。それよりも、わたしの大切な王子様は、この先も、わたしが守ってあげるから安心してください」
フレンツ王国…………。
この国を、属国にはさせないから。
「いや、絶対に何もするな。アリーチェは、ずっと私の傍にいるだけでいい。頼むから勝手に変なことはするな。守ってくれと、アリーチェには頼んでいない。1人で勝手に動かれる方が困る」
「フレデリック様酷い、そんな必死になって拒絶しなくてもいいのに。わたしのこと、やっぱり信用してないんだ。おかしいと思ったんです、急に優しくなったから」
「違う、そうじゃないから。アリーチェに何かあったら、私が困るから」
「ふふっ、こう見えて、しっかりしているんですよわたし。だから大丈夫です。王城の資料庫だって1人で行って、ちゃんと調べられるし」
「駄目だ、アリーチェは1人では手に負えん」
「2人でやれば何とかなります」
大丈夫、フレデリック様となら絶対上手くいくもの。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
164
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる