封印された魔王を解放してしまいましたが、私が何とかしますので放っといてください〜奇跡の力を持つ1人の女性は、2人の王子から愛を捧げられる〜
瑞貴◆後悔してる/手違いの妻2巻発売!
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本章1 本当の姿
最強の癒しの力
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執事のハースに案内されたのは、邸にほど近い大きな通り。
通りといっても、この先にあるのは我が家しかないのだから、敷地と言っても過言ではない。
遠目からでも事態の深刻さを理解する。
我が家の馬車が横転している……
何が起きたら、こんなに激しく馬車が壊れるの?
横転しているのに、何故か馬車の屋根の損傷が著しい。
空から何かが……
――――!?
目の前の事態を落ち着かせたら、次はそっちね!
横転した馬車を持ち上げる従者たち。
――――!
無意識にも関わらず、私の足は自然と速度を増す。
馬車に挟まれたケントと馬車の間にできた僅かな隙間から、すかさず弟を抱きかかえる。
血の気のない顔……。
……ぐったりとして、反応はない。
怖くて直視できない……。弟の腕が……。
いつもより短くなった腕から流れ続ける血液……。
先日、王都の邸の庭で、私が癒した小さな弟の手は……体から離れて……。
上下の胸の動きは、僅か……もう間もなく呼吸が止まってしまう。
この場に誰が立ち会っていようとも、躊躇する気持ちは一切ない。
一刻の猶予もない。
私は、迷わず癒しの力を弟に使う。
その瞬間! 腕が再生して、全ての傷が塞がる。
冷え切っていた弟の体に温もりが増し、顔色が戻ってくる。
絶え絶えだった呼吸は……、すぅーすぅーという寝息に変わっている。
良かった……間に合った!
痛かったね。頑張ったね。
弟を強く抱きしめる。
私は弟を抱えたまま、母の元へ駆け寄る。
「お母様!」
美しい顔に酷い傷――。露出している肌からも無数の傷が見える。
声をかけると同時に、癒しの力を発動させる。
母に触れた瞬間……
無数にあった傷は、大きさも深さも関係なく、跡かたもなく一瞬で治る。
「リディ……ありがとう。本当にありがとう。ケントを助けてくれて、ありがとう」
こらえきれない感情に、母は泣き出してしまった。
助けるなんて、当たり前じゃない。
泣いている母をなだめながら、私は空間全体に、癒しの力を放出する。
我が家の従者や護者も皆それぞれ、大なり小なりの負傷をしている。
混乱したこの場所で、一人ずつ治療する時間はないわ。
ましてや、この程度の怪我であれば、それで十分ね。
****
シェルブール伯爵邸から、リディを追って来たジュリアス王子。
今、ここで起きた全てを、瞬きする間も惜しんで見つめていた。
端正な顔立ちの方がするのは受け入れがたいが……口をぽかんと開けて、何が起きたのか分からない表情をしたかと思えば、物思いの表情をして、リディが一息つくまで、何も言えずに立ち尽くしていた。
通りといっても、この先にあるのは我が家しかないのだから、敷地と言っても過言ではない。
遠目からでも事態の深刻さを理解する。
我が家の馬車が横転している……
何が起きたら、こんなに激しく馬車が壊れるの?
横転しているのに、何故か馬車の屋根の損傷が著しい。
空から何かが……
――――!?
目の前の事態を落ち着かせたら、次はそっちね!
横転した馬車を持ち上げる従者たち。
――――!
無意識にも関わらず、私の足は自然と速度を増す。
馬車に挟まれたケントと馬車の間にできた僅かな隙間から、すかさず弟を抱きかかえる。
血の気のない顔……。
……ぐったりとして、反応はない。
怖くて直視できない……。弟の腕が……。
いつもより短くなった腕から流れ続ける血液……。
先日、王都の邸の庭で、私が癒した小さな弟の手は……体から離れて……。
上下の胸の動きは、僅か……もう間もなく呼吸が止まってしまう。
この場に誰が立ち会っていようとも、躊躇する気持ちは一切ない。
一刻の猶予もない。
私は、迷わず癒しの力を弟に使う。
その瞬間! 腕が再生して、全ての傷が塞がる。
冷え切っていた弟の体に温もりが増し、顔色が戻ってくる。
絶え絶えだった呼吸は……、すぅーすぅーという寝息に変わっている。
良かった……間に合った!
痛かったね。頑張ったね。
弟を強く抱きしめる。
私は弟を抱えたまま、母の元へ駆け寄る。
「お母様!」
美しい顔に酷い傷――。露出している肌からも無数の傷が見える。
声をかけると同時に、癒しの力を発動させる。
母に触れた瞬間……
無数にあった傷は、大きさも深さも関係なく、跡かたもなく一瞬で治る。
「リディ……ありがとう。本当にありがとう。ケントを助けてくれて、ありがとう」
こらえきれない感情に、母は泣き出してしまった。
助けるなんて、当たり前じゃない。
泣いている母をなだめながら、私は空間全体に、癒しの力を放出する。
我が家の従者や護者も皆それぞれ、大なり小なりの負傷をしている。
混乱したこの場所で、一人ずつ治療する時間はないわ。
ましてや、この程度の怪我であれば、それで十分ね。
****
シェルブール伯爵邸から、リディを追って来たジュリアス王子。
今、ここで起きた全てを、瞬きする間も惜しんで見つめていた。
端正な顔立ちの方がするのは受け入れがたいが……口をぽかんと開けて、何が起きたのか分からない表情をしたかと思えば、物思いの表情をして、リディが一息つくまで、何も言えずに立ち尽くしていた。
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