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本章1 本当の姿

新たな仲間

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 竜が私に自己紹介を求めているの?

「私ですか? 最近、婚約者に裏切られていることを知った挙句、婚約破棄されたばかりの令嬢ですが!」

「いや! 違うだろう! 違わないが、竜が尋ねているのはそういうことではないと思うぞ、リディアンヌ嬢」

「ふふふ、的確な説明ですね、リディアンヌ様」
 ジュリアス王子の言葉で、間違ったかと思ったが、返答が間違っていないことに安心する。


『お前が、魔王の恋人か?』
 はい? 

「全く違います。魔王は500年前に聖女ミレー様によって、石像になっています。恋人になることはおろか、お会いしたことさえありません」
『昔に聞いた話。あれはお前ではないのか?』


 魔族と比べて、人間の寿命は遥かに短い。歴史の中で、魔王の想い人がいたのかもしれないけど……、人間に恋心を抱くなんて。
 人間に恋する魔王が、人々を襲っていたなんて、なぜ……。


「私とその方は別人です。ところで竜のあなたがこんなところで何をしているんですか?」

『……そうか。私はここで休んでいるだけだ。魔王が、魔力を欲して私を襲ってきた。油断していたから、魔力を半分ほど吸い取られてしまったんでな。あ奴は、魔力が枯渇しかけていたから、手っ取り早く魔力を補充したかったのだろうな。突然のことで無心で逃げてきたが、魔力が安定せずに、途中で落ちてしまった……。ここにやっと、辿り着いた』

「「魔王の封印が解けた!!」」

 あまりの衝撃に私とジュリアス王子の声が重なる。


『しばらく寝ていたが、起きたようだな。寝起きに水を欲するかのように、魔力を欲している』


 竜に会う前から気になることがあって確認する。
「竜様……」
『私はキュアだ、そう呼ぶと良い』

「キュア……。私はリディよ! あなたは魔力を吸われただけでなく、大きな怪我をしているのでは?」
『やはり、リディは普通ではないな? ああ、私は怪我をしている。魔王が魔力を吸い取るために、私の核を傷つけてしまったせいだ。魔物にとって、核が傷ついたらお終いだ。核だけは、自力で再生できないからな。徐々に弱っていき、寿命が尽きるのも、そんなに遠くはないな』

 やはり……

「魔王が寝ていた間、あなたが人間を襲わなかった理由は?」

『人間は我々の餌ではない。本来我々魔物は、植物に宿る力を核で魔力に変えるから、草食だしな』

「500年前、魔物達が人間達を襲っていた理由は?」

『500年前? いつのことを指すのかわからないが、ほんのひと時だけ、魔王が怒り狂って、人間を滅亡させようとしたことがあったな』

「原因は?」

『詳しい理由は知らんな。我々の王だから、魔物は魔王に従っただけだ』

「今も、魔王が指示したら、キュアも他の魔物も魔王に従うの?」
『私は、襲った奴の指示など金輪際聞くはずがない。他の魔物は……正直わからん。まだ、魔王も絶対の力を持っている訳ではないから、寝てた奴の指示に従うか……』


「わかったわ! 少しキュアに触れてもいいかしら?」

『人間に触られるのは、初めてだ……いやだ』

 キュアの声を聞いて、納得して私はキュアに触れる。
 癒しの力を、竜の核がある場所へ届ける。

 我が家の書物には、魔物の弱点について書いてあった。おそらく、そこが魔物の核なのだろうと確信があった。


「「「リディアンヌ嬢、危険です。嫌がる竜を触るのはっ! 離れて」」」


『リディは面白い人間だな。心から感謝する』

「何が起きた? リディアンヌ嬢は何をした?」

 噛み合わないやり取りに、ジュリアス王子がその2人へ問いかける。


『私は、この先リディを護るために、この命を使うことにする。お前はリディの恋人か?』
 
 ジュリアス王子を見ながら、キュアが問いかける。

「否、私は違う……」
『お前は見る目がないな。これほどの女子を……』

「ふふふ、見る目はあるんですがねー。自分のことには鈍くて、ふふふ」

『私の核を修復できるものがいるなんて、信じられん。いつでもリディの役にたとう。顔と名前が分かったのだから、いつでも念話で私を呼び出せ。直ぐに来る。しばらくここで魔力を回復させてから寝床へ戻るから、またなリディ』

「ありがとうキュア。早く魔力が戻りますように」

 キュアの足を抱きしめて、呼吸を意識し、魔力をキュアへ注ぎ込む。

 魔力は無事に、キュアに届いたようで『もう敵わん』と呟いている。

 キュアと、名残惜しく別れを告げた。

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