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本章4 暴かれる真実

カールディン第1王子の嘆き

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(SIDEカールディン第1王子)

 王都の騎士を伴い遠征したことで、国王から呼び出しを受けた。
 騎士たちの所在を問われ、カモメイル公爵の直轄地での任務を命じてた事を報告すると、それまで穏やかだった国王の態度は一変し叱責に変わった。
 何故だ? 魔物達のせいで生活路が崩壊したのだ。愛しい婚約者の父が管轄している土地の整備で、ソフィアは間もなく妃となる。私にも関係する話のはずだ。

 カモメイル公爵の直轄地には、軍の駐屯地があるのだが、騎士達の数が十分とは言えなかった。恐らくは先日、住宅地に魔物が出没した件で、各地に出向いているのだろう。
 そうであれば、王都の騎士達に助力を指示して何が悪いのか?
 国王から激しく咎められたが、やはり納得がいかない。

 国王の激昂によって、異議申立ても出来ず、私の側近は直ぐに騎士達を王都へ連れ戻す為、再び馬を走らせる事になった。
 
 その上、カモメイル公爵とソフィアを呼び出して何かを問いただそうとしている。
 
 騎士達を置いてきたこと位で、ソフィアまで呼び出すなど、国王とジュリアスは何を考えている。

****

 訳も分からず、カモメイル公爵の尋問に立ち合っている。
 立ち位置としては、国王の隣だが私はソフィアの味方だ。

 っん? どういうことだっ! 
 尋問が始まると驚くべき議題が出てくる。
 悠長に捉えていた私だが、この件は容認できない重大な問題だ。奴の軍に十分な人員が揃っていなかったのもそう言う事かと、腑に落ちた……。
 国王とジュリアスが尋問している事は、紛れもない事実であろう。
 
 いやっ、だが待て! 
 父親が罪を犯していたとしても、娘は私のものだ。
 ソフィアがいるという事はこの後は、私との結婚について話が進むはずだ。
 壁際にシェルブール伯爵が控えている事も、そう言う事なのだろう。
 ちっ、国王もシェルブール伯爵も、リディを私の妃にするのを未だに諦めていないのか!

 このままソフィアと結婚することを、どうやって国王に認めてもらえるのか? 尋問の内容を聞く以上に、思考を巡らす。
 まあ、どこかの貴族の養女にさせれば、問題はないだろうが国王を納得させる家柄が、この短時間では見当がつかない。

****

 公爵がわめき出したと思った途端、ー-何かが飛んできた。
 全く状況が理解できないが、生ぬるい感覚が、脇から胸を伝わるー---。
 まさか――――。少しの時間を置いて、私の肩から先が切断されたことに気がついた。
 一瞬の事で、最早痛みも感じる事は無かったが、徐々に傷口が脈打つのを自覚する。気力を振り絞り、その場に座り込むのが限界だった。

 どういうことだ? カモメイル公爵が魔法を使ったのか? 
 何故、魔法が使える?  
 いや、それよりも、更に大きな疑問が頭の中を占拠する。
「魔法?」これが私の憧れ続けていた魔法だというのか? 魔法は国民の暮らしを助けるものだろう? 
 嘘だっ、こんなものが魔法である訳が無い。幼い頃から夢に見た力は、こんな事に使うものではない。
 魔法は人々を明るく照らすものだろう? 違うのか……?

****

 視界が霞む……リディが来たのか? 窓からどうやって? ああ夢か……?

 朦朧とする意識の中、ジュリアスがソフィアへ癒しの力を使うよう願い出ている。ふっ、弟よ……お前も知っているだろう、癒しの力では重傷者は救えないだろう……。そんなこと分かり切っているはずだ。

 だから、私の母上も助からなかったのだから……。
 癒しの力なんて、所詮その程度のものだ。
 そんなちっぽけな力では、もう意味はないんだ。

 あ――――そうだっ! そうなんだっ!

 なんて皮肉なことだ、死に際になってやっと気づくなんて!
 癒しの力なんて、こんなちっぽけなものにこだわって生きてきた人生はなんだったんだ?
 挙句に、やっと手に入れたソフィアが、まがい物とは…………。

 嘘の塊を手に入れる為、私は何を手放した?

 私にとって、人生で唯一胸踊らせた存在。話すのが楽しくて嬉しかった、大切な存在。
 輝くパールの髪に目を奪われたが、純真な心のあなたに、私の心は惹かれたんだ。
 あなたへの想いは、欲に溺れて得た感情ではなかったのに……。

****

 私が10歳の時、上から見つけた少女。欲にまみれてギラギラした目をしている貴族たちの中で、その少女一人だけ楽しそうに、国王の話を聞いていた。
  王城の庭を楽しそうに歩くお前を見て、もっと喜ばせたくて、私が庭を案内してやりたかったんだ。一番近くでその笑顔を、もっと見たかったから。

  私のくだらない魔法の話を、王城の教師達でさえ、呆れながら聞いていたのに、あなたは飽きもせずに俺の話に付き合ってくれたんだ。今でもあの時のあなた以上に感心を持って、魔法の話を聞く者は現れない。

 着飾らなくても、素直で可愛いあなたの事を、好きになったんだ…………。
 どうして私は、この気持ちを忘れてしまったんだ。どうして…………。

 これが走馬灯ってやつなのか? 

 私はあなたの心が好きだった……。今のリディに、最後に会いたかったな。

 一言、謝りたい。
 もし、生まれ変わったら……もう2度と、あなたを悲しませない。私の人生をかけて、あなたの人生を護るのに。

 あーリディの声が聞こえる? 
 ふっ、もう駄目だな、死の直前に、一番会いたいあなたの姿まで見えてくる。

 ここにリディが居るはずもないのに。

 自分で都合よく作り上げた幻覚は、出会った頃のリディのようだな。

 あ―そうだった、「もう2度と顔を見せるな」と、今に思えば酷い罵声を浴びせたんだ。
 傷付けた事を詫びたくても、それを伝える、声さえも、もう出せない。

 久しぶりに触れるあなたは、なんて温かいんだ……夢でも良い、もう少し触れていたい。

****

 ――――――リディ!? 
 これは、夢ではないのか!? 現実か!? あなたが治したのか?
 私の肩から先が全て再生している?
 駄目だ、思考が追いつかない。
 嘘だろう、こんな奇跡の力……。
 あなたは、本当に聖女様だったのか?

 いや、力なんて関係ない! 
 私はあなたの、優しさや心に惹かれていたんだ。何としても私のものにする。婚約はこのまま継続だ、もう2度と離さない。


 それなのに、国王陛下、いや父よ! なぜ、私とリディの事を認めない? 
 リディは私のものなのに。嘘だ嘘だ嘘だ!
 生まれ変わったら、あなたを護ると決めたのに。
 この想いはどうすれば良いのだ!?

****

 ソフィア!? リディの事で頭が溢れているのにお前は何を言っている。

 お前が私の子を身ごもっているはずはないだろう? 
 お前と体の関係があっても、一度も私の子種を、お前の中に与えたことはないだろう。
 わかっているだろう。お前は、そこまで嘘をつくのか?
 ましてや、この1か月は忙しくて、お前の部屋に行った最後は……。

 私が、長年こだわって手に入れたのは、嘘つきで、心のない、体だけだったのか。
 綺麗な心に魅了された、リディとの関係まで断って……。

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