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本章4 暴かれる真実

ジュリアス第2王子の困惑

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(SIDEジュリアス第2王子)

 昨日の私は、リディに想いを向けられている確信があった。
 だが、それは私の奢りで、酷い思い違いだったのか……?

 これまでの政務では、判断を誤ったことはない。
 だが、リディの事となると判断が鈍る。結局のところ私はフラれたのか? 
 リディが他の男と……など。嘘だと言ってくれ。

 リディの言っていた幼馴染は何者だ? 以前、シェルブール伯爵から聞いた男だろうが、リディから想いを向けられ拒む者など、この世に居る訳がない。

 本来ならカモメイルの処遇を、フル回転で検討すべきだが、リディの事が頭から離れず、思考が鈍る。
 カモメイルは、この国の最重要危険人物だ。奴は、いつ魔法を発動して人を害するか分からない以上、今日中に片を付けるべきだ。

 足早にカモメイルの元へ向かう途中、リディを乗せた竜が飛び立つのが目に入る。
 リディ……。私はあなたの行きたい所へ自由に行かせてやりたかったが、今あなたが向かう、その先に行くのは、貴女に嫌われたとしても、縛り付けて止めるべきだった。
 私には、あなたしかいないのに。

※※※※

 カモメイルの元には、暫く振りに会うレイルも居た。
 レイルはモンテール侯爵の元へ向かわせた後から、姿を確認できずにいた。
 健在であると報告を受けていたが、実際の姿を見て、やっと不安が消えた。
 昨日、リディが王城へ飛び込んで来る直前まで、2人で行動していたのだ。これまで何をしていたか、後で報告させる必要がある。

「ジュリアス殿下、長い間任務を外れてしまい、申し訳ございませんでした」
「変わらない様子に安心した。任務の事など気にしなくて良い。むしろレイルが無事に戻ってきてくれたことに感謝している。今戻ったばかりなのか?」

「いえ、昨夜のうちに王都内に戻っていたのですが、住人たちの緊迫状態が落ち着くまで、王都内の警備の指揮をとっておりました」
「疲れているのに、戻って早々すまないな。今はどうなっている?」

「陛下の伝令が行き届いた地域から、祭りムードに一変しております。余りの浮かれようで、朝から宴が開かれ、それはそれで危険ですが」
「そうか、宴か……。……まあ、住民たちが暴徒化するより、よっぽどましだな」

 私がカモメイルの件で動くと同時に、国王陛下も国民へ向けて動いていた。

 カモメイルの直轄地に魔物が出た後から、貴族達がこぞって武器を買い集めていた事で、不穏な空気は王都内に広がった。
 それは、事情を知らない平民たちにも影響し「隣国が攻め入って来る」など、あらゆる憶測が徐々に膨らみ、各地で住民たちの小競り合いが起きていた。

 実際は争いも飢饉も起きていないのだが、食料や日用品の買い占めによって、生活に与える影響が出始め、国への抗議行動が起きかけていた。

 本来なら、王都内の騎士たちで制圧に乗り出すべきだったが、兄が大半の騎士を遠征に引き連れて行ったことで手詰まりに陥っていた。
 当の兄は戻って来たが、王都の騎士達をカモメイルの直轄地に残して来る、想定外の問題まで起きていた。

 暴徒化した住民達が王城へ攻め込んで来るのは時間の問題だった。


 その最中、王城に竜が舞い降りた。
 始めは、竜の襲来と怯えた住民たちも、王城の庭で寛いでいる姿を目にした者から「ノマーン王国は竜を使役した」との噂が瞬く間に広がっていた。その好機を見逃すわけはない。

 国王陛下はシェルブール伯爵から、娘と第2王子の婚約の承諾を得て、異例とも言える速度でリディと私の婚約を公表した。
 たかが王子の婚約で、この国の国民は、そこまで騒がないだろう。
 歓喜の理由はリディに関する報告と、国王の命令だ。

『王子の婚約者は竜を完全に使役している。その竜は住人たちを襲うことは一切ない。だが、我々に甚大な協力をしてくれる存在である。竜をも味方に持つ我が国は、何も恐れることはない。
 そして、これからは王子の婚約者が乗る竜を王都のみならず王国中で見かける事になるだろう。
 王子の婚約者は、皆に癒しを与えてくれる存在だ。その癒しの力による恩恵が全ての国民に与えられるよう、領主達は竜が自由に降り立てるよう、速やかに土地の整備を行うよう命令する』

 ここまでは、順調に整ったのに…………肝心なリディの気持ちは…………。
「クルリ! カモメイルとその息子の処刑を急ぐぞ」


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