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本章5 手に入れたもの

王子達の戦い①

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 私が兄の事で思考を巡らせ、険しい表情になっている事に気づかれた。
「我が主は、リディアンヌ様と白い夜をお過ごしになっているのに、兄君殿下は何を考えているんですかね? 昼夜を問わず2人のいたしている声が、監禁部屋から聞こえると王城中の噂です。もし、カモメイルの娘が身ごもりでもしたら、王籍を剥奪されるのですから、第1王子の気が触れたんだって、城に関わる大半の人たちが笑っています」

「そもそも、外から中の様子が分かる監視用の部屋だからな……。兄が何を考えているのか……。気が触れたのか? 本当にあの娘が好きなのか? 何か企んでいるのか? 正直、この話がリディの耳に入らないかが心配だ」
「リディアンヌ様の傍にいるのは、殿下の他にはレイルだけですからね。使用人たちとの接点も少ないでしょうから大丈夫かと。王城内を歩く時は、過保護な殿下が常に一緒ですからね、ふふふ」
「あっ、当たり前だろう。私の目の届かない所で、兄が何かしてくるかもしれないんだ。正直なところ、あの日以降、兄がリディへの執着を見せて来ない所も、何かあるのではないかと、気が気ではない」

「リディアンヌ様が、兄君殿下に何かされそうになっても、魔法を使って対処なさるのではありませんか?」
「問題はそこではない。リディの性格は、根本的に優し過ぎるからな。覚えているか? 初めて討伐した、あのウサギの魔物のこと。彼女は無作為に雹を当てたと言っていたが、全ての魔物達が、核とは離れた背中の同じ場所に、雹が撃ち込まれていただろう。あの中にいた、体の大きい1頭だけが、気を失わず、リディに噛みつこうとしていたんだ。その後に起きた魔物達の暴走も、魔物達を穴へ落としてただけだ。むしろ魔物が人間に襲われないように、あの穴の魔物の世話までしている。リディは、いつだって全てのものに優しいんだ」

「リディアンヌ様がお優しいのは分かりますが、それと兄君殿下と何か関係があるんですか?」
「彼女自身を守るために、兄を傷つけたら、リディの意識に兄が残り続けるだろう。兄の爪痕なんて、少しもリディに残したくないからな」
「それはまた、すごい嫉妬の仕方ですね。そんな気持ち悪い発言をしていたら、慈しみ深いリディアンヌ様でも引いてしまいますよ、ふふふ」

「――しょうがないだろう。リディの事となると、余裕でいられないんだ。分かったら、戴冠式と併せて結婚式を行うから、準備を進めてくれ」
「…………それを断ったら、どうなりますか?」
「何度も同じ事を言っているが、結婚式を優先するために、戴冠式を遅らせるだけだな」
「何を考えてるんですか殿下! 戴冠式は主にとって、重要な式典なんですよ!」
 クルリが言いたいことは、私にとって分かり切った話だ。
 それでも、リディが私の横に並び立てる日を、早く見たいんだ。

****

 国王から、今後の事で話があると、突然の呼び出しを受けた。
 今後の事……。大半の案件は、この1か月で既に片付いている。
 思い当たることは、いくつかあるが……、いったい何が出てくるのか。
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