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本章5 手に入れたもの

王子達の戦い②

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 カモメイルの事件によって生じた議題は、国にとって重要な決め事ばかりだった。そのため、大臣達を交えて早急に対応し、結果は既に国民にも公表されている。
 
 カモメイルの直轄地である北東部の公爵が空位となった件は、新たな公爵として、私の姉が降嫁したモンテール家が任命されることとなった。これは、大臣達を含め全員一致の見解であった。
 だが、それによって空位となる侯爵位と侯爵領の管理については、大臣達によって意見が割れた。
 結果としては、私の一存によって半ば強引ではあったが、リディの父であるシェルブール家当主に、伯爵領と侯爵領の2つを管理してもらうことになった。
 当主は、昇爵には関心がないと辞退を申し出たが、領地の管理について、他の貴族達の理解を得るためにも、無理を言って承諾してもらった。

 大臣達からは、2つの領地を1人に任せることに異議が多かったが、私としては譲歩出来なかった。既に解決しているとは言え、聖女ミレーの生家がモンテール領にあるのは変わらないのだ。私の中で、あの地を任せられる者は、シェルブール家以外に想像もつかない。

****

「陛下、お待たせしました。急いで話したいなんて、何か問題でも起きましたか?」

「待っておったぞジュリアス。問題ではないが、カモメイルのあの娘が身ごもっているのを、医師が確認した。カールディンも、子の父であることを認めている」
「と言うことは、平民として2人で暮らし始めるということですか……」
「まあ、そうなるな。2人の今後の生活が気になるか?」
「暮らしが気になる訳ではありませんが、何処に行くのかは、気になります」
「そういう事か。カールディンには、モンテール公爵直轄地の雑兵として向かわせる。カモメイルが十分に管理をしていなかったせいで騎士の数も少ない上、魔物の暴走によって受けた被害の修復が、まだ十分にできていないからな。人手が足りなくて困っているそうじゃ」

「そうですか。では、兄はモンテール公爵直轄地で暮らすということですか……」
「何か問題でもあるか?」
「いえ、ただ、私の婚約者が、あの地を気にして、よく赴いているものですから」
「あーなるほどな。実際に接触する機会など、無いだろうから、そう気にするな」
「だと、良いのですが」
「それにしても、お前の婚約者の評判はすごいものだな。お陰で城の書庫には納まりきらないほどの礼状が、毎日届いておる」
「リディの慈愛を目の当りにしたら、そうなるはずです。それもこれも陛下が彼女の事を気にかけ続けてくれたお陰です。ちなみに、兄が城を出るのはいつになりますか?」
「政務が片付き次第、数週間以内には去ることになるな」
「そうですか……。では、兄の仕事は私が全て引き継ぎますので、こちらに回してください」

 唯でさえ忙しいのに、こんなことを言ったとクルリが知ったら怒るだろう。
 だが、兄が手放したものは全て、私が真に受け取らねばならないと決したのだ。私がやる以外の選択肢はないだろう。

 リディの力を知った時の兄の様子だと、リディを手に入れるために画策してくるかと思ったが、そうではなかったということか……。
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