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第18話
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「じゃあ、時間も押してるし早速始めようか」
「あ、うん」
サファイヤと連れだって2人で教室の真ん中に立つと、ロナルドがオレの横に立った。
「では、まずは基本のおさらいから。私がフランツ様と同じ動きをしますので、フランツ様はマネしてくださいね」
そう言ってロナルドは誰もいない空間に向かって一礼をする。
オレも見様見真似で礼をすると、サファイアが大きく腰を折って一礼した。
そしてロナルドが見えない誰かの手を握り、その腰辺りに手を添える。
その動きを真似して、サファイアの手を取り、ロナルドと同じようにステップを踏む。
案外簡単なそれに思わず興が乗り、気が付けばサファイアのリードもあってロナルドの踏んでるステップより複雑な動きになっていった。
「いつの間に、こんな動き覚えたんだい?」
サファイアがクルクル回りながら、オレに囁いた。
いつの間にかロナルドは動きを止めて、唖然としながらオレたちを見ている。
「いや、体が勝手に?」
「なんだいそれ?」
可笑しそうにサファイヤは笑ってオレの手を取りながらターンを決める。
そもそも、サファイヤがリードするから、それに合わせて動いているだけで、今踏んでるステップが本当に正しいかもオレには分からない。
ターンするサファイヤを受け止めて、また1番最初の姿勢に戻る。そこで、そっと手を離されて最初の時のように腰を大きく折った礼をサファイヤがして、ようやくオレはダンスが終わったのだと分かった。
オレも慌てて一礼すると、ロナルドが弾かれたようにオレの側に駆け寄って来た。
「フランツ様、ダンスは完璧でした。けど」
「けど?」
「うん、フランツの体力に、多分小さな令嬢はついていけないから、ほんと、程々にしておきなよ」
ロナルドの言葉を引き継ぐように、息も絶え絶えにサファイヤが言った。
そして、さっきの涼しげな様子と打って変わってグッタリと座り込んでいる。
「息が上がるほどダンスするなんて、久しぶりだよ。あぁ、堪えるな、君は平気なのかい?」
「まぁ、ちょっと汗はかいたけど」
「・・・・・・」
「・・・・・・ちょっと」
本当に人間かよって視線を2人から受ける。
いいじゃん、とりあえず上手に踊れたんなら!
「とりあえず、ロナルドが踊ってたみたいに踊ればいいんだろ?
それなら平気だよ、今のだってサファイヤのリードがなきゃやってないと思うし」
幼子が踊る用の簡単なステップくらいなら、今のオレなら簡単に覚えられる。
自信満々に言うと、サファイヤは少しだけむくれた。
「では、お二人とも次は本番と同じようにダンスホールで音楽を鳴らして練習しましょう」
「え、すぐ?」
いくらオレでも疲れてはないけど、朝ご飯からランチの時間まで何も食べてないのは辛い。
けど、ロナルドはオレが最初からそう言うと分かっていたように笑った。
「ダンスホールに本番さながらの軽食を用意しています。
今回はフランツ様とクラリス嬢以外も沢山の方がご一緒に踊られる予定なので、複数の方と踊りに慣れるようメイド達にも声をかけています。そこでまず、みんなでご飯を食べましょう」
「やったー!ご飯!」
オレが無邪気に喜ぶと、サファイヤは怪訝そうに眉をひそめた。
「フランツは、メイド達といつも食事を共にするのかい?」
王族なのに、とはさすがにサファイヤは言わなかったが、そこには確かにその言葉が込められていた。
「魔族だって、みんなでご飯食べるだろ?」
「まぁ、片付けの効率が良いからね。けど、人間は違うだろ?」
「うん、オレもサファイヤに会うまでは違ったんだけど、その話聞いて、皆で食べれそうなときはそういう風にしてって頼んだんだ」
「頼んだって、陛下に?」
「そ、効率的だしダメ?って」
父上は、頭の固い男じゃない。
むしろ言ってみようやってみよう精神の人だから、笑いながら承諾してくれた。
「人間の国ってそういう体裁を気にする方だと思っていたんだけど・・・・・・」
「サファイヤ様、我が国ではこうなだけで、他国はその、サファイヤ様のご想像通りかと思いますので」
ロナルドが少しずれたフォローをして、サファイヤは何も言わずにうな垂れた。
「あ、うん」
サファイヤと連れだって2人で教室の真ん中に立つと、ロナルドがオレの横に立った。
「では、まずは基本のおさらいから。私がフランツ様と同じ動きをしますので、フランツ様はマネしてくださいね」
そう言ってロナルドは誰もいない空間に向かって一礼をする。
オレも見様見真似で礼をすると、サファイアが大きく腰を折って一礼した。
そしてロナルドが見えない誰かの手を握り、その腰辺りに手を添える。
その動きを真似して、サファイアの手を取り、ロナルドと同じようにステップを踏む。
案外簡単なそれに思わず興が乗り、気が付けばサファイアのリードもあってロナルドの踏んでるステップより複雑な動きになっていった。
「いつの間に、こんな動き覚えたんだい?」
サファイアがクルクル回りながら、オレに囁いた。
いつの間にかロナルドは動きを止めて、唖然としながらオレたちを見ている。
「いや、体が勝手に?」
「なんだいそれ?」
可笑しそうにサファイヤは笑ってオレの手を取りながらターンを決める。
そもそも、サファイヤがリードするから、それに合わせて動いているだけで、今踏んでるステップが本当に正しいかもオレには分からない。
ターンするサファイヤを受け止めて、また1番最初の姿勢に戻る。そこで、そっと手を離されて最初の時のように腰を大きく折った礼をサファイヤがして、ようやくオレはダンスが終わったのだと分かった。
オレも慌てて一礼すると、ロナルドが弾かれたようにオレの側に駆け寄って来た。
「フランツ様、ダンスは完璧でした。けど」
「けど?」
「うん、フランツの体力に、多分小さな令嬢はついていけないから、ほんと、程々にしておきなよ」
ロナルドの言葉を引き継ぐように、息も絶え絶えにサファイヤが言った。
そして、さっきの涼しげな様子と打って変わってグッタリと座り込んでいる。
「息が上がるほどダンスするなんて、久しぶりだよ。あぁ、堪えるな、君は平気なのかい?」
「まぁ、ちょっと汗はかいたけど」
「・・・・・・」
「・・・・・・ちょっと」
本当に人間かよって視線を2人から受ける。
いいじゃん、とりあえず上手に踊れたんなら!
「とりあえず、ロナルドが踊ってたみたいに踊ればいいんだろ?
それなら平気だよ、今のだってサファイヤのリードがなきゃやってないと思うし」
幼子が踊る用の簡単なステップくらいなら、今のオレなら簡単に覚えられる。
自信満々に言うと、サファイヤは少しだけむくれた。
「では、お二人とも次は本番と同じようにダンスホールで音楽を鳴らして練習しましょう」
「え、すぐ?」
いくらオレでも疲れてはないけど、朝ご飯からランチの時間まで何も食べてないのは辛い。
けど、ロナルドはオレが最初からそう言うと分かっていたように笑った。
「ダンスホールに本番さながらの軽食を用意しています。
今回はフランツ様とクラリス嬢以外も沢山の方がご一緒に踊られる予定なので、複数の方と踊りに慣れるようメイド達にも声をかけています。そこでまず、みんなでご飯を食べましょう」
「やったー!ご飯!」
オレが無邪気に喜ぶと、サファイヤは怪訝そうに眉をひそめた。
「フランツは、メイド達といつも食事を共にするのかい?」
王族なのに、とはさすがにサファイヤは言わなかったが、そこには確かにその言葉が込められていた。
「魔族だって、みんなでご飯食べるだろ?」
「まぁ、片付けの効率が良いからね。けど、人間は違うだろ?」
「うん、オレもサファイヤに会うまでは違ったんだけど、その話聞いて、皆で食べれそうなときはそういう風にしてって頼んだんだ」
「頼んだって、陛下に?」
「そ、効率的だしダメ?って」
父上は、頭の固い男じゃない。
むしろ言ってみようやってみよう精神の人だから、笑いながら承諾してくれた。
「人間の国ってそういう体裁を気にする方だと思っていたんだけど・・・・・・」
「サファイヤ様、我が国ではこうなだけで、他国はその、サファイヤ様のご想像通りかと思いますので」
ロナルドが少しずれたフォローをして、サファイヤは何も言わずにうな垂れた。
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