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第二部 魔王と少年トントン(更新中)
第19話 毒の姫 その1
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山の稜線に立つと、俺はまず状況を把握する為に、第一層の『絶対空間認識』の視線を辺り一帯に放った。
俺の脳内には、辺り一帯の地形的特徴から空を飛ぶワイバーンの数。そしてそのワイバーン達を待ち構える様に剣を構えるレイラの姿。それら全てが瞬時に俺の脳内に仮想世界として構築された。
眼下には裾野のように緩やかに広がる斜面。裾野の所々には突然突き出すように巨岩が隆起している。そしてレイラの姿は三方にその巨岩を配置したちょうど真ん中にある。
そして妹は、まるで上空のワイバーンを挑発でもするかの様に剣を高々と持ち上げて、降下してくるのを今かと待ち構えていた。
上空を旋回する飛竜は96体。その中には先ほどの個体の倍以上もあろうかという個体が2体混じっている。群れで行動する動物には、その群れを統率するボスが存在するのが一般的だ。このワイバーンと言うドラゴンモドキが群れで行動すると言うのであれば、そこにボス的存在がいてもおかしくはない。
そして一般的にボスというものは、猿にしてもライオンにしても、群れの中で一番その身体《からだ》がデカい。
俺にも、そこまでは想定内だった。
しかしここに一つの想定外がある。それはまさにイレギュラーと言ってもいいだろう。
なんと、レイラが剣を構えるその数百メートル先の岩陰に身を隠すようにうずくまる2人の姿があったのだ。一人は幼い子供、そしてその子供に覆いかぶさる様な姿で辺りを警戒しているのは、背恰好はエデンと同じくらいの少年のようにもに見える。
いずれにせよ、幼い二人だけでこの危険極まりない旧道をここまで歩いて来たとは信じ難いことである。言い換えれば、この二人がここまでやってこれた事自体が奇跡といってもいいだろう。
おそらくレイラは、ワイバーンの気をこの二人から反らせる為に、あんな目立つ位置で剣を構えているのだろう。
だが、俺としてもあのままワイバーンの総攻撃をレイラ一人に受けさせるわけにはいかない。そして俺は早急にレイラと合流するべく岩だらけの斜面を一気に駆け下っていく。
だが、その時。
レイラが岩陰に隠れる二人を指さした。
はて?それはどういう意味か……。妹なら当然俺があの二人に気がついていることぐらいは承知しているはずだ。ならば……。
「まさか……。もしかして、俺にあの二人を助けに行けってことか!?」
しかし、そんな事をしたら、百匹を超えるワイバーンの全てをレイラが相手しなければならない。
しかし……
どう考えてもそんな事は無理だ。もしこれがあのワガママ魔術師エイドリアンならば爆炎魔法だの古代魔法だのを心置きなくぶっ放してもらうのだろうが、なんせ相手は多勢。しかも空中だ。ここは絶対にあの二人を助けるよりもレイラを加勢したほうが得策なのだ。
だが、そんな俺の考えを見透かしたように、再びレイラの指が二人の隠れる岩陰を指し示す。
「クソッ!わかったよ。行けばいいんだろ行けば!」
理由はわからないが、言い出したらきかない妹の言う事は俺にとってほぼ絶対に等しい。俺は仕方しに、速度を落とすことなくレイラの横をそのまま通り過ぎて、二人の救出に向かう。
「お前が危なくなったら、あの二人は見捨てるからな。」
過ぎ去りざまに、俺はそうレイラに声をかけた。見ず知らずの他人より身内――それは俺の絶対なのだ。
レイラは振り向かない。あくまでもその視線と剣先は上空のワイバーン達を牽制し続ける。
そして、返って来た言葉は、ただ、一言だけ……。
「大丈夫だよお兄ちゃん。これでやっとあの人が動けるようになるから……。」
俺の脳内には、辺り一帯の地形的特徴から空を飛ぶワイバーンの数。そしてそのワイバーン達を待ち構える様に剣を構えるレイラの姿。それら全てが瞬時に俺の脳内に仮想世界として構築された。
眼下には裾野のように緩やかに広がる斜面。裾野の所々には突然突き出すように巨岩が隆起している。そしてレイラの姿は三方にその巨岩を配置したちょうど真ん中にある。
そして妹は、まるで上空のワイバーンを挑発でもするかの様に剣を高々と持ち上げて、降下してくるのを今かと待ち構えていた。
上空を旋回する飛竜は96体。その中には先ほどの個体の倍以上もあろうかという個体が2体混じっている。群れで行動する動物には、その群れを統率するボスが存在するのが一般的だ。このワイバーンと言うドラゴンモドキが群れで行動すると言うのであれば、そこにボス的存在がいてもおかしくはない。
そして一般的にボスというものは、猿にしてもライオンにしても、群れの中で一番その身体《からだ》がデカい。
俺にも、そこまでは想定内だった。
しかしここに一つの想定外がある。それはまさにイレギュラーと言ってもいいだろう。
なんと、レイラが剣を構えるその数百メートル先の岩陰に身を隠すようにうずくまる2人の姿があったのだ。一人は幼い子供、そしてその子供に覆いかぶさる様な姿で辺りを警戒しているのは、背恰好はエデンと同じくらいの少年のようにもに見える。
いずれにせよ、幼い二人だけでこの危険極まりない旧道をここまで歩いて来たとは信じ難いことである。言い換えれば、この二人がここまでやってこれた事自体が奇跡といってもいいだろう。
おそらくレイラは、ワイバーンの気をこの二人から反らせる為に、あんな目立つ位置で剣を構えているのだろう。
だが、俺としてもあのままワイバーンの総攻撃をレイラ一人に受けさせるわけにはいかない。そして俺は早急にレイラと合流するべく岩だらけの斜面を一気に駆け下っていく。
だが、その時。
レイラが岩陰に隠れる二人を指さした。
はて?それはどういう意味か……。妹なら当然俺があの二人に気がついていることぐらいは承知しているはずだ。ならば……。
「まさか……。もしかして、俺にあの二人を助けに行けってことか!?」
しかし、そんな事をしたら、百匹を超えるワイバーンの全てをレイラが相手しなければならない。
しかし……
どう考えてもそんな事は無理だ。もしこれがあのワガママ魔術師エイドリアンならば爆炎魔法だの古代魔法だのを心置きなくぶっ放してもらうのだろうが、なんせ相手は多勢。しかも空中だ。ここは絶対にあの二人を助けるよりもレイラを加勢したほうが得策なのだ。
だが、そんな俺の考えを見透かしたように、再びレイラの指が二人の隠れる岩陰を指し示す。
「クソッ!わかったよ。行けばいいんだろ行けば!」
理由はわからないが、言い出したらきかない妹の言う事は俺にとってほぼ絶対に等しい。俺は仕方しに、速度を落とすことなくレイラの横をそのまま通り過ぎて、二人の救出に向かう。
「お前が危なくなったら、あの二人は見捨てるからな。」
過ぎ去りざまに、俺はそうレイラに声をかけた。見ず知らずの他人より身内――それは俺の絶対なのだ。
レイラは振り向かない。あくまでもその視線と剣先は上空のワイバーン達を牽制し続ける。
そして、返って来た言葉は、ただ、一言だけ……。
「大丈夫だよお兄ちゃん。これでやっとあの人が動けるようになるから……。」
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