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弍話
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白々しいとも取れる声音に纈は反応を返すことも、ましてや振り返ることもなく足を踏み出した。
それに気を悪くした様子もなく、頭一つ分以上背の低い異業種は纈の隣をちょこちょこと小走りに進む。
異業種の顔の上半分を覆う装飾の施された真っ白な猫の仮面に青みがかった黒髪。小さな口は捻じ曲げられた針金のように弧を描き、纈の態度に慣れた様子で再び口火を切った。
「纈さん、纈さん、無視はいけませんやァ。あっしとてココロを持つ身。繊細なガラス細工を損ずるのは赤子の手を捻るのと同義ですのになァ。アァ傷ついた。」
「消えろボンクラ。その喧しい首を撥ねるぞ。」
「ややまァ、唐突すぎやしませんかいなァ。まっこと、ご機嫌麗しゅうなこって。そんなご不満溜めてっと、そのうちゃ眉間のシワ取れなくなっちまう!ややっ!纈さん、頭の天辺が薄くなってやしませんかィ?!」
なんともまぁ、五月蝿い男だ。一を言うと千を返す勢いでペラペラとまあ口が回るものだ。
纈は隣の異業種のお陰で増えた眉間の歪みもそのままに、すらりと軍刀を抜いて化野の眼球すれすれにその切っ先を突きつけた。
驚きのあまり閉口した化野だが、その雰囲気はどこか涼しげだった。
殺意が欠片もないことに気がついているのか、その余りの余裕っぷりに纈から堪らず舌打ちが出る。化野はそれを見届けて、にっこりと笑ったのだった。
「……質の悪ィ…」
「ややァ、纈さん。冗談は受け流すためにあるのになァ。見目は悪くないのにそこだけが、そこだけが勿体無ェや、これぞ家畜に真珠、宝の何とやら。くっくっ、少し違いますかいねェ?」
「化野、黙れ。」
その一言で、異業種の口はピタリと回るのをやめた。苛々と取り留めのない会話を切り捨て、纈の目に微かな殺気が浮かぶ。
そよぐ風に乗って漂うのは、鉄の臭いか。
突然の沈黙を溜息で破ったのは纈だった。軍刀を鞘に戻し、身を翻して歩を進めると化野も倣って半歩後ろをついてくる。
それと同時に背後の茂みがうっすらと不自然に揺れていた。
それに気を悪くした様子もなく、頭一つ分以上背の低い異業種は纈の隣をちょこちょこと小走りに進む。
異業種の顔の上半分を覆う装飾の施された真っ白な猫の仮面に青みがかった黒髪。小さな口は捻じ曲げられた針金のように弧を描き、纈の態度に慣れた様子で再び口火を切った。
「纈さん、纈さん、無視はいけませんやァ。あっしとてココロを持つ身。繊細なガラス細工を損ずるのは赤子の手を捻るのと同義ですのになァ。アァ傷ついた。」
「消えろボンクラ。その喧しい首を撥ねるぞ。」
「ややまァ、唐突すぎやしませんかいなァ。まっこと、ご機嫌麗しゅうなこって。そんなご不満溜めてっと、そのうちゃ眉間のシワ取れなくなっちまう!ややっ!纈さん、頭の天辺が薄くなってやしませんかィ?!」
なんともまぁ、五月蝿い男だ。一を言うと千を返す勢いでペラペラとまあ口が回るものだ。
纈は隣の異業種のお陰で増えた眉間の歪みもそのままに、すらりと軍刀を抜いて化野の眼球すれすれにその切っ先を突きつけた。
驚きのあまり閉口した化野だが、その雰囲気はどこか涼しげだった。
殺意が欠片もないことに気がついているのか、その余りの余裕っぷりに纈から堪らず舌打ちが出る。化野はそれを見届けて、にっこりと笑ったのだった。
「……質の悪ィ…」
「ややァ、纈さん。冗談は受け流すためにあるのになァ。見目は悪くないのにそこだけが、そこだけが勿体無ェや、これぞ家畜に真珠、宝の何とやら。くっくっ、少し違いますかいねェ?」
「化野、黙れ。」
その一言で、異業種の口はピタリと回るのをやめた。苛々と取り留めのない会話を切り捨て、纈の目に微かな殺気が浮かぶ。
そよぐ風に乗って漂うのは、鉄の臭いか。
突然の沈黙を溜息で破ったのは纈だった。軍刀を鞘に戻し、身を翻して歩を進めると化野も倣って半歩後ろをついてくる。
それと同時に背後の茂みがうっすらと不自然に揺れていた。
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