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26、エンディングで奴隷からの告白に期待しちゃう悪役令嬢。

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 ‥‥‥由々しき事態。

 『肉じゃが』がお預けとなった。

 ───全てあんにゃろうのせい。

 色々とあったので、ご主人様に料理を作る時間がなくなったためである。
 ブラッドリィ家お抱えの料理人さんが作った、いつもの美味しい夕食ではあったのだが‥‥‥。
 
 ───ガルシア伯爵を絶対に許さない。

 俺は、そう心に刻みつけたのだった‥‥‥。


「何黙ってんのよ‥‥‥。あんたカッコつけてんの? カッコいいとか思ってんの? そんな手に私が簡単に引っかかるとか思ってんの?」

「‥‥‥あ、ちょっと考え事してました」

「キモッ」

 毎晩の恒例となっている、ご主人様の部屋で行われる【イチャイチャな会話】イベント。
 ガルシア伯爵の件もあったので、本日のイベントは開催されないものかと思っていたのだが、夕食後に普通に呼ばれたのでノコノコと参上致しております。

「‥‥‥大丈夫ですか?」

「大丈夫」

 ご主人様の頬は赤く腫れていた‥‥‥。

「すいません。俺、何も出来なかったですね」

「‥‥‥なんであんたが謝んのよ‥‥‥」

「そういえば‥‥‥なんででしょうね?」

「‥‥‥」

 別に俺はご主人様のボディーガードじゃない。
 それに相手は、血が繋がっていないとはいえ父親である。
 普通に考えると、口を挟んで良い問題じゃない気はするが‥‥‥。

「ところでご主人様って、王子と結婚したいんですか?」

「‥‥‥何それ?」

「最終意思確認です」

「ブラッドリィ家にとっては最優先事項」

 それだと、完璧な操り人形です。

「いや、そうじゃなくて、ご主人様本人はどうなんです?」

「‥‥‥」

「ご主人様の幸せはどうなる事なんですか?」

「‥‥‥した方がいい?」

「はい?」

「‥‥‥王子と結婚した方がいい?」

 なんで俺に聞く?
 俺が決めたら、それこそ前までと変わらないだろ‥‥‥。

「それはご主人様が決める事です」

「‥‥‥わかってるわよ、単細胞」

 なんだかはっきりしないな。

「色々思う所はあると思うんですが、ご主人様に必要なのは自由です」

「自由?」

「誰かに何かを縛られて生きてる事に、なんの意味もないんじゃないかと思ったんです」

「‥‥‥で」

「大会で優勝し王子と結婚して生きる以外にも、何か他に方法があるかもしれない。俺はそれを探そうと思います」

「‥‥‥もう大会頑張らないの? 休みの日の木の実集め、もうしないの?」
 
「まだはっきりしてませんが、大会で優勝しなくてもご主人様が自由になれる道があるなら、それを選択するつもりです。‥‥‥休日は、木の実集めなんかより、もっと有意義な行動があるかもしれませんね」

「‥‥‥」

「いや‥‥‥そもそもの所、大会なんてどうでも良くなるなら、俺はもう学園について行って、屋上でブラブラしてる必要すらないかも‥‥‥あの時間は相当もったいない」

 謎の大会ルールで、奴隷は学園に通学する令嬢と一緒に居ないといけない。
 ‥‥‥もしかしてだけど、反則負けになってしまうってのもありかもしれない。
 そうすればガルシア伯爵の嫌がらせも止まるんじゃね?

「あんた、奴隷の分際で1人で行動するつもりなの?」

「色々動くならその方が良いでしょ? それに、ご主人様はちゃんと学園ライフを楽しんでください」

「‥‥‥優勝したい」

「‥‥‥は?」

「今まで通り頑張るわよ」

「それはちゃんとしたご主人様の意思ですか?」

 俺が想像してるよりもご主人様にとって、ガルシア伯爵の呪縛は大きいのかもしれないな‥‥‥。

「ねえ、一つ聞いてもいい?」

「はい」

「‥‥‥あんたはどうしたいの?」

「俺ですか? 俺はご主人様を自由に‥‥‥」

「なんで、あんたがそこまですんのよ‥‥‥」

「‥‥‥さあ‥‥‥なんででしょう?」

 さっきも思ったが、俺の目的はなんだ?

「理由も言えないような胡散臭い変態に、私が付いて行くと思ってんの?」

「まあ、確かに‥‥‥」

 別に付いてこいとは言ってない。
 俺が勝手に行動するだけです。

「‥‥‥‥‥‥上がってる」

「何がです?」

「ウジ虫の好感度‥‥‥今日で凄く上がった‥‥‥」

「いくつになりました」

「‥‥‥78」

 ‥‥‥あ、なるほど。
 それで幸せになって欲しいのかもな‥‥‥。

「馬鹿みたいに上がりましたね」

「‥‥‥なんで?」

「なんでって‥‥‥」

 多分、ご主人様が王子と結婚しないエンディングを探す決意をした時点で、俺の中で何かのリミッターが外れたと思われ‥‥‥。

「‥‥‥私は優勝したい」

「だから、ご主人様はいい加減自分の意思をですね」

「違う。王妃には興味ない」

「じゃあなんで───」

「人の話は最後まで聞きなさい」

「‥‥‥はい」

「優勝したら‥‥‥もう一つ選択肢があるんでしょ」

 もう一つの選択肢。
 エンディングでの選択肢の事かな?

 ‥‥‥あっ。

 この世界の奴隷には人権がない。
 もちろん結婚して子を作るなんて、許されるわけもなかった。

 大会で優勝した令嬢へのご褒美。

 王子を選ばなければ、奴隷との結婚が認められる。

「‥‥‥ご主人様、それって‥‥‥」

「‥‥‥う、うるさい。調子に乗るなっ。 もう出てけ変質者っ!」

 ───‥‥‥それじゃ、ただのツンデレです‥‥‥。


 俺はその後、頬の腫れなんて分からなくなるくらい真っ赤なお顔の、可愛いご主人様に速攻で部屋から追い出されたのだった。

 ‥‥‥コレは80を軽く超えてしまったかもしれません。





 方向性は決まった。
 まず、大会で優勝する。
 そして、王子と結婚しなくてもご主人様が生存するエンディングを探す。

 それが意味するのは───


 ガルシア伯爵との真っ向勝負。


 ───覚悟しとけよ、お義父様とうさま
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