今日から死体と暮らします。

まぐろ

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うたた寝

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薄暗い明かりの中、優馬が俺の顔を見つめている。泣いていたのか目元は赤く、鼻をすする仕草をしていた。

「お兄ちゃん…お兄ちゃん…」

「どうした?優馬…」

いつも通りだった、可愛らしい声で俺のことを呼ぶ。だけど声は震えていて、泣いている優馬をどうにか慰めたくて、俺は優馬を撫でながら聞いた。
優馬はぽろぽろとあふれる涙を手の甲で拭いながら、少しずつ話しだした。

「あの、あのね、お兄ちゃん、迷惑かけてごめんなさい…っ」

「いいんだよ。迷惑なんかかかってない。寧ろ優馬がいないと俺は楽しみがなくなっちゃうから…」

優馬がいなければ俺は仕事も頑張れなくなる。一緒に遊ぶことが何より楽しかった。いつ来てくれるか、何をして遊ぶか、それを考えるのが毎日の楽しみだった。
だけど、優馬はますます涙をこぼして泣いてしまう。

「喋れなくてっ…全然、笑えなくてごめんなさいっ…お兄ちゃんいっぱい心配させて、お兄ちゃん僕のために頑張ってくれてるのに迷惑ばっかりかけて…っ」

「そんなこと言うなよ優馬…優馬は俺を選んでくれた。そうだろ?」

「お兄ちゃんと遊びたくて僕…っ、お母さんとお父さんと同じにならなくてぇっ…でもこのままじゃお兄ちゃんが血無くなっちゃう…」

僕のせいでお兄ちゃんが死ぬのは嫌だ、と優馬は泣いた。子供がそんな事を気にしなくたっていいのに。優馬の方が未来があるのだから生きてほしい。

「僕生きてるときにね、お兄ちゃんと結婚できたらなって思ってたの…だからお兄ちゃん…僕のせいでお兄ちゃんが死んじゃうなら僕…死体に戻るね。」

「なんで…なんでだよ…!優馬…!まだ俺っ…優馬を遊園地に連れてくって約束果たせてないんだよ…!嫌だ…!優馬ぁぁっ!!」

背を向けて歩く小さい背中を、必死で追いかける。走っているうちに、段々と周りが明るく──。

✱✱✱✱✱✱

「っぁ!!!っはぁっ!はぁっ!!」

俺は飛び起きた。ここは…家の床。そういえば休憩をしようとしたらそのまま寝てしまったんだっけ。
俺の上には優馬が乗っかっていた。

「うー」

「優…馬…?」

頬に冷たいものが落ちてくる。
俺を見下ろす優馬の目から落ちたものだ。
優馬は呻きながら泣いていた。少しだけ、少しずつだけど回復してきているんだ。

「優馬…!あのさ、俺さ…優馬がいないと駄目なんだよ…二人でさ、遊園地行こうな…!だから優馬、俺と一緒にいてくれ…っ」

優馬を抱きしめながらそう言った。
優馬もほっとしたように、俺の背中に手を回してくれた。
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