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15 恐怖
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名前を呼ばれ振り返ろうとしたが、何かに掴まれかなりの力で引っ張られた。
ドサッと倒れこんだが、目の前は真っ暗で右も左も何も分からない。
『見つけた…』
「何…アラン!アランどこ?」
『お前だ!お前がごちゃごちゃ動くから話が変わってきてるだろ!』
「え?」
『俺の理想のローズが消える!!これ以上お前は動くな!!バグかお前は!!』
──何?なんの事…?怖い…アラン!!アラン助けて!!
真っ黒の中何も見えていないが確実に手で首をしめられ、苦しくなる。逃げようにもその力は強く逃れることができない。苦しくて苦しくて意識がなくなりそうになった時、一筋の光が見えたと思ったらパリンと割れるように黒い空間は粉々になって消えた。
「シルヴィ!!」
アランの声が聞こえて目を開ける。眩しさに顔が歪み目を細めたがゆっくりと目を開けると、シルヴィの顔を覗き込むアランと目が合った。
横たわっているシルヴィを抱き抱えたアランは真っ青で今にも泣きそうな顔をしていた。
「…アランだ…よかった…」
顔を見て安心したのかまた目を閉じ意識を失ったシルヴィをアランはきつく抱きしめた。
「アラン様お嬢様は大丈夫ですか?」
「すぐ屋敷に戻ろう」
横抱きにシルヴィを抱き抱え急いで馬車まで向かう。
馬車で急いで屋敷まで戻る。
アランはまだ意識の戻らないシルヴィの手を握り首元についている跡に目をやる。明らかに指の跡がついているが、先程のあの場所には誰もいなかった。
シルヴィに得体の知れない物が近づいているのは見えたがアレも人ではない。すぐに駆けつけ横たわっていたシルヴィを見つけ側に寄った時も誰も見ていないし誰かが逃げていく形跡もなかった。
あの茂みの奥に洞窟のような物はあるが狭い空間になっているだけで、抜ける事はできない。
後からついてきていたベネットも馬車にいた従者も誰も見ていないのだ。
──くそっ!側にいたのに…
アランは自分の拳で足を叩く。
ベネットも震えながらシルヴィを見つめている。
屋敷についてベネットが先に降り、中にいるスミスに知らせに行く。
アランが抱き抱えたまま急いで部屋まで連れていく。
ベッドに下ろしそのまま側に座り込む。
「シルヴィが襲われたって!!」
トリスタンが凄い勢いで入ってきてベッドまで駆け寄ってくる。少し遅れてフィナも入ってきた。
「すみません。僕が側にいたのに…」
「アラン、君のせいじゃないよ」
「そうよ。ベネットに聞いたけどあの噂の黒い塊なの?」
「よく…分かりせんが…見えたのはそんな感じでした」
フィナはベッドの側に座り娘の顔に手を当て心配そうに覗き込む。
トリスタンはずっと下を向いているアランの肩に手を置きそっとつぶやく。
「アラン、君も無事で良かった。シルヴィを連れて帰ってきてくれてありがとう」
「…」
我慢していたが自然と涙が溢れていた。トリスタンがアランの頭にそっと手をやり自分の肩に引き寄せる。しばらくその姿勢だったが涙を止め顔をあげる。
「フィナ、シルヴィを頼む。アランは一緒に執務室まで来てくれるか」
「はい」
トリスタンはベッドで寝ているシルヴィの額にキスを落とし踵を返して部屋から出ていく。アランも後を追って出ていった。
執務室の扉を開けトリスタンとアランは中に入る。
奥にはトリスタンが使う机があり、手前にはソファとサイドテーブルがあった。
アランにソファに座るように促し、机の上の書類をつかみアランに見せる。
受け取った書類を見てアランは眉を寄せ不快な顔をする。
「これは…」
「噂の目撃情報を集めた物だ。気がつく事あるかい?」
「段々とここの領地に近づいて来ている?しかも具体的になって…」
アランの向かい側に座りトリスタンは頷く。
「単なる噂だと始めは気にしていなかったが少し気になって調べさせていたら…まさかシルヴィに害が及ぶとは思ってなかったけどね」
「実際接触したのはシルヴィだけ?」
「たまたまなのか…とりあえず様子は見るが…」
「アラン、なるべくシルヴィの側にいて一人にしないようにしてくれるか?」
「はい!必ず守ります」
トリスタンは優しい笑顔でアランを見つめた。
「今日から護衛はつけるつもりだ。後で紹介する」
「はい」
執務室を出てシルヴィの部屋に戻る。フィナがベッドの側に座っていて後ろにベネットが控えていた。
アランが入っていくとフィナは顔を上げ微笑んだ。
「さっきからこの子笑っているのよ。多分何か美味しいものでも食べている夢を見ているのよ」
「フィナ様…」
「昔から少し変わっている子だったけど、面倒だったり嫌な事が不思議と円満に解決することが多かったわ。だから今回も大丈夫。母親の勘よ。当たるわ」
ふふっと笑いアランの手をとる。
「アラン、だからあなたも安心して。緊張で顔が怖いわよ。いつもの可愛いアランに戻ってね」
後お願いとフィナはベネットとともに部屋を出ていった。
アランはまだ目を開けないシルヴィを見て側に座る。
──緊張か…
分かっている。実際は緊張より恐怖だ。
シルヴィが目の前からいなくなることへの圧倒的な恐怖から顔が強ばる。
──君がいないとダメだ…
「シルヴィ…目を覚まして僕を見て…」
手を取り祈るように額を寄せる。
ドサッと倒れこんだが、目の前は真っ暗で右も左も何も分からない。
『見つけた…』
「何…アラン!アランどこ?」
『お前だ!お前がごちゃごちゃ動くから話が変わってきてるだろ!』
「え?」
『俺の理想のローズが消える!!これ以上お前は動くな!!バグかお前は!!』
──何?なんの事…?怖い…アラン!!アラン助けて!!
真っ黒の中何も見えていないが確実に手で首をしめられ、苦しくなる。逃げようにもその力は強く逃れることができない。苦しくて苦しくて意識がなくなりそうになった時、一筋の光が見えたと思ったらパリンと割れるように黒い空間は粉々になって消えた。
「シルヴィ!!」
アランの声が聞こえて目を開ける。眩しさに顔が歪み目を細めたがゆっくりと目を開けると、シルヴィの顔を覗き込むアランと目が合った。
横たわっているシルヴィを抱き抱えたアランは真っ青で今にも泣きそうな顔をしていた。
「…アランだ…よかった…」
顔を見て安心したのかまた目を閉じ意識を失ったシルヴィをアランはきつく抱きしめた。
「アラン様お嬢様は大丈夫ですか?」
「すぐ屋敷に戻ろう」
横抱きにシルヴィを抱き抱え急いで馬車まで向かう。
馬車で急いで屋敷まで戻る。
アランはまだ意識の戻らないシルヴィの手を握り首元についている跡に目をやる。明らかに指の跡がついているが、先程のあの場所には誰もいなかった。
シルヴィに得体の知れない物が近づいているのは見えたがアレも人ではない。すぐに駆けつけ横たわっていたシルヴィを見つけ側に寄った時も誰も見ていないし誰かが逃げていく形跡もなかった。
あの茂みの奥に洞窟のような物はあるが狭い空間になっているだけで、抜ける事はできない。
後からついてきていたベネットも馬車にいた従者も誰も見ていないのだ。
──くそっ!側にいたのに…
アランは自分の拳で足を叩く。
ベネットも震えながらシルヴィを見つめている。
屋敷についてベネットが先に降り、中にいるスミスに知らせに行く。
アランが抱き抱えたまま急いで部屋まで連れていく。
ベッドに下ろしそのまま側に座り込む。
「シルヴィが襲われたって!!」
トリスタンが凄い勢いで入ってきてベッドまで駆け寄ってくる。少し遅れてフィナも入ってきた。
「すみません。僕が側にいたのに…」
「アラン、君のせいじゃないよ」
「そうよ。ベネットに聞いたけどあの噂の黒い塊なの?」
「よく…分かりせんが…見えたのはそんな感じでした」
フィナはベッドの側に座り娘の顔に手を当て心配そうに覗き込む。
トリスタンはずっと下を向いているアランの肩に手を置きそっとつぶやく。
「アラン、君も無事で良かった。シルヴィを連れて帰ってきてくれてありがとう」
「…」
我慢していたが自然と涙が溢れていた。トリスタンがアランの頭にそっと手をやり自分の肩に引き寄せる。しばらくその姿勢だったが涙を止め顔をあげる。
「フィナ、シルヴィを頼む。アランは一緒に執務室まで来てくれるか」
「はい」
トリスタンはベッドで寝ているシルヴィの額にキスを落とし踵を返して部屋から出ていく。アランも後を追って出ていった。
執務室の扉を開けトリスタンとアランは中に入る。
奥にはトリスタンが使う机があり、手前にはソファとサイドテーブルがあった。
アランにソファに座るように促し、机の上の書類をつかみアランに見せる。
受け取った書類を見てアランは眉を寄せ不快な顔をする。
「これは…」
「噂の目撃情報を集めた物だ。気がつく事あるかい?」
「段々とここの領地に近づいて来ている?しかも具体的になって…」
アランの向かい側に座りトリスタンは頷く。
「単なる噂だと始めは気にしていなかったが少し気になって調べさせていたら…まさかシルヴィに害が及ぶとは思ってなかったけどね」
「実際接触したのはシルヴィだけ?」
「たまたまなのか…とりあえず様子は見るが…」
「アラン、なるべくシルヴィの側にいて一人にしないようにしてくれるか?」
「はい!必ず守ります」
トリスタンは優しい笑顔でアランを見つめた。
「今日から護衛はつけるつもりだ。後で紹介する」
「はい」
執務室を出てシルヴィの部屋に戻る。フィナがベッドの側に座っていて後ろにベネットが控えていた。
アランが入っていくとフィナは顔を上げ微笑んだ。
「さっきからこの子笑っているのよ。多分何か美味しいものでも食べている夢を見ているのよ」
「フィナ様…」
「昔から少し変わっている子だったけど、面倒だったり嫌な事が不思議と円満に解決することが多かったわ。だから今回も大丈夫。母親の勘よ。当たるわ」
ふふっと笑いアランの手をとる。
「アラン、だからあなたも安心して。緊張で顔が怖いわよ。いつもの可愛いアランに戻ってね」
後お願いとフィナはベネットとともに部屋を出ていった。
アランはまだ目を開けないシルヴィを見て側に座る。
──緊張か…
分かっている。実際は緊張より恐怖だ。
シルヴィが目の前からいなくなることへの圧倒的な恐怖から顔が強ばる。
──君がいないとダメだ…
「シルヴィ…目を覚まして僕を見て…」
手を取り祈るように額を寄せる。
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