Bitter Sweet Sweet

こうはらみしろ

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昼やすみ、教室で友人を待ってたらどこからか甘いにおいがしてきた。

「おい、だれか甘いもの食ってるだろ」

とたんに気分が悪くなってきて、甘いものを食べるときはいってくれと頼んだだろう……と苛立ちも隠さずにそのことを指摘する。

「悪い、さき。いうの忘れてた」
「すまん!」
「……気をつけてくれ」

まったくこれで何回目だ、とおもいながら横の窓を開ける。
その瞬間、ふわりと春風が髪を撫でた。

冬は寒いけど、こういうとき窓際は便利だ。

「はぁ……」

さっさと甘いにおいを消したくて、外から入ってきた新鮮な空気を肺いっぱいに吸いこんだ。
春らしいやわらかな空気に、すこしずつ気分がよくなってく。

ここまですればわかるだろうが、俺は甘いものが大嫌いだ。

甘い菓子はもちろん。
甘い空気も、甘い言葉も──

「崎せーんぱい! ご飯誘いにきました。一緒に食べましょう!」

甘いやつも大っ嫌いだ。

「断る」

俺はいつの間にか目の前にきた男を見ないまま言いはなつ。

「そんなぁ……今日こそはって思ったのにぃ……」
「諦めろ」

いま俺に絡んできてるやつは、御堂みどう かおるという1年生。
俺とは正反対のやつで、見ためから仕草からなにからなにまで甘ったるいやつだ。

正直いってうっとうしい。

「これで何回目だと思ってる。いい加減諦めたらどうだ」
「諦めません!」

こいつは、学校の人気者というやつだ。
そんなやつがなぜ俺のもとへとやってくるかというと──

「大好きな崎先輩とすこしでも一緒にいたいんです!」
「はぁ……」

というわけらしい。

にこにこ甘い笑みを浮かべ、好きだなんだと甘い言葉を吐いて……
本当に迷惑極まりない。

「俺は水野みずのと食べるんだ。お前の場所はない」
「水野先輩、学校きてるか怪しいじゃないですか」

──たしかにそうだ。

水野というのは俺の友人なんだが、少々……いや、かなりものぐさで、あまり学校にこない。
最近は、けっこうきてたんだけどな。

「今日はきてるぞー、御堂」
「水野」
「げ、水野先輩」

声のしたほうを見ると、ニヤリと笑った水野が教室の入り口に突っ立ってた。

「お前な、今日もって言えるようにしろよ」
「昨日だったら言えたんだけどなー」

昼食の入ったコンビニ袋をぶら下げながら、水野が気だるげに歩いて近づいてくる。
けどそのとき、俺の鼻があるにおいを感知した。

──ちょっと待て。

「水野、おまえ……」
「あ、バレたか」

水野は俺の前まできてまったく悪びれなく笑ってるけど、とてつもなく甘ったるいにおいがする。

絶対女の香水のにおいだ。
水野のはこんな甘いにおいはしない。

においに酔って、気持ち悪くなりそうだ。

「水野、離れろ」
「どうしたんすか?  崎先輩」
「崎は俺が女の匂いさせてるから妬いてんだよー」
「え゙っ、嘘っ!」
「嘘だ」

なに引っかかってるんだこいつ。
考えればありえないとわかるだろうに。

というか、水野に妬くような人間だとおもわれてるのか。
とてつもなく心外だ。

「御堂ー、崎にフられたもの同士一緒に食おうぜぇ」
「えっ、マジですか!」

水野の言葉に、俺のこめかみが怒りでピクリと反応する。

……水野、やってくれたな。

おまえが御堂を誘うとはおもわなかったぞ。
離れろといったのが悪かったのか。

「あの、崎先輩……いいですか?」

そろり……と伺うように御堂が俺を見る。
そんな仕草でさえうっとうしい。

「誘ったのは水野だろ」
「でも……」
「じゃあ、嫌だ」
「ゔ……」

俺の拒否の言葉を聞いたとたん、御堂は体を固まらせガックリと肩を落とした。
その姿がよけいうっとうしくて、俺はため息をついてある決意した。

このまま放置してうっとうしいままいられるよりはいいからな、仕方ない。

「──御堂、その甘ったるそうな菓子パンは食うな」
「へ?」
「一緒に食っていいってさ」

水野、また余計なことを……
しかもニヤついた顔でこっちを見てくるのも気に食わない。

俺は水野をひと睨みして、御堂をつけ上がらせないために話しかける。

「水野と食うのを許しただけだ。こっちにはくるなよ」
「はいっ!」

そう返事すると、御堂は俺の席からふたつ横の、水野の席の前に座った。
そのまま御堂はガサガサと袋をあさり出したから目をそらして、俺も鞄から弁当を取りだして食べはじめた。

食べはじめるとチラチラと御堂から視線が投げられてきて、そのうっとうしい視線に、やっぱり許したのは早まったか……と後悔する。

話しかけるのもかけられるのも嫌で、仕方なくうっとうしいその視線を無視してると、とうとう御堂に話しかけられた。

「崎先輩」
「……なんだ」

本当は返事なんかしたくなかったけど、無視すると面倒くさいことになりそうだから渋々御堂に返事をする。

「ありがとうございます」

それに返ってきたのは、たった一言の感謝の言葉。
けど、そう言って笑った御堂の顔はとても、とても甘くて──

「死ね」
「そっ、そんなぁ~っ!」
「気持ち悪くなってきた……」

やっぱり、甘いものは大嫌いだと思った。
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