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忌み子王子の婚約式
しおりを挟む本来、忌み嫌われる黒色と反対に、白には神聖な意味がこめられている。
俺は、少しでも婚約者に好かれるため、髪の毛を染めることにした。
黒から白へ。何故今まで思いつかなかったのだろうと思うほど、自分では凄くいい思いつきに思えた。
そして、どうしようも無い醜い顔と忌まわしい黒目は、仮面で隠すことにした。
これで俺が近くにいても、怖がらないで居てくれるだろうか·····。
鏡で何度も確認し、補佐のアレンにも確認してもらう。
「殿下、もう時間ですよ」
「ああ、分かった·····」
少し不安は残りつつも、いつもとは違う白髪に仮面という姿に、少し心が浮き足立った。
中々、似合ってる気がするな!
俺は満足気に部屋をあとにすると、婚約者を待つために、会場へと向かった。
会場に着くと、そこには既に、俺の両親と、婚約者の兄が話に花を咲かせていた。
三人は入ってきた俺に気づき声をかけようとして固まった。
「シリウス·····、あなた、その髪はどうしたの?!」
そういうのは母上だ。もう暫く言葉を交わすことの無くなっていた母上の、びっくりした顔を見るのは初めてだ。
「怖がらせてはいけないと思い·····」
俺はそう言いながら、三人に近づく。
「それにお面も·····」
「·····やっぱり、変ですか?母上」
「い、いえ、変では無いわ·····」
「! そうですか、それは良かった」
その言葉に少しだけ安心した俺は、ゆっくりと婚約者の兄。この先は自分の兄にもなるリレット王国の第1王子にも声をかけた。
「初めまして、シリウス・ロウ・アスランです。これから、よろしくお願いします、ローランド・ルス・リレット殿」
「ああ、妹共々よろしく頼む」
若干、口元を引くつかせながらも、ローランド殿は挨拶を返してくれた。差し出された手を握り返す。
そして、その時はやって来た。
ガチャ·····、騎士の手により丁寧にあいた扉。そして、その先には、空と海の国、リレット王国の王族の証である青色の髪と瞳を持った、一人の美しい女性が、こちらへ向かって歩いてきた。
思わず見惚れてしまっていたのは言うまでもない。これまで、これ程美しい女性を見たことがあっただろうか。
そして、婚約者が自分なんかでいいのか。
きっと、直ぐに逃げ出さてしまうだろう·····。
「初めまして、わたくし、アナベル・ラ・リレットと申しますの。これから、よろしくお願いしますわ、わたくしの婚約者様」
そう言って、アナベル姫は優雅に微笑んだ。
その笑顔に思わずドキドキしてしまったのは仕方がない事だろう。
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