29 / 33
第二章
ガーデンパーティー(1)
しおりを挟む
「アンジェリカ、大丈夫なの?」
「えぇ、お義母様、大丈夫ですわ。」
レイザーン殿下が我が家を去った後、わたくしはまた、お義母様と向かい合っていた。
「でも、殿下がアンジェリカは体調が優れないようなので今日はこれで、と仰っていたのよ?やっぱり、医者に見せた方が・・・」
「ほ、本当に大丈夫ですわ、お義母様っ!」
「でも・・・」
シャンスお兄様が体が弱かったからだろうか。
お義母様は、先程からずっと医者に見てもらいましょうと譲らない。
勿論、私も医者に見せるほどでも無いので譲るつもりは無い。
しかし、お義母様に心配してもらうのは少しくすぐったくて嬉しい。
今日は、大人しくベットで横になる事にした。
「何かあれば直ぐに言うのよ。」
そう言って、お義母様は部屋を出ていった。
一人、部屋に残ったわたくしはベットから出てバルコニーに出た。
『アンジェ、気分、悪い?』
『ルビー、平気よ。心配させてしまったかしら。』
私が一人になると、ルビーは私の周りをふわふわと飛びながら話しかけてくる。
表情は見えなくとも、その声から、何となく想像することができる。
『ううん。アンジェ、ルビーがまもる。だから、何かあったら、言って。』
『ふふっ、ありがとう・・・。』
そう言ってルビーを撫でるように、手を動かす。
『アンジェ、あの子、嫌い?』
あの子?あの子って・・・。
『殿下のこと?』
『うん。アンジェ、あの子が来た時、苦しそう、だった。』
『っ、!』
(ルビーにまでバレていたなんて・・・。)
私も不思議だ。
ゲームで殿下の事を知っているとはいえ、実際に会うのは初めてのはずなのに・・・。
ずっと、ずっと、知っていた気がする。
あの目も、あの声も、あの笑みも・・・。
少しだけ、チクリと胸が傷んだ。
だが、きっと気の所為だ、と私は頭を振り、やはり疲れているのだろうと思い、ベットに戻った。
━━━━━━━━━━━━━━━
「アンジェっ!王宮で開かれるガーデンパーティーに行くって本当なのっ!?」
アレクシスとの買い物から帰ってきたお兄様が、挨拶もせずに私に問いかけてくる。
「えぇ、本当ですわ。」
「なっ!アンジェ、もしかして、殿下の事が・・・。」
「ちっ、違いますわっ!」
お兄様が何か勘違いをしそうだったので私は慌てて弁解した。
「わたくしは別に、殿下の事なんてなんとも思っていませんわっ!殿下だって、ただ、社交辞令で誘っただけですわ!」
「だけど、母上が、殿下とはとても良い雰囲気だったって、帰りなんて、お互い離れたくないと見つめ合ってたと・・・。」
(お、お義母様っ!何をどう見てそんな事をっ!?)
既に、シャンスお兄様は盛大に勘違いしていた。
このままではまずい、と思ったわたくしは、殿下と話したことをお兄様に言った。
「お、お兄様っ!わたくし、殿下に婚約者候補から外してもらうようにお願いしましたのっ!」
《ガシャーーーン》
「「えっ。」」
その時、何かが割れる音がした。
振り返って扉の方を見てみれば、エリナがいて、そして、その足元にはティーカップであったであろう、破片が散らかっていた。
「えーーと。エリナ?」
私は未だ固まって動かないエリナに恐る恐る話しかけた。
「お、お嬢様っ。今のお話は本当なのですかっ!」
「え?」
「で、ですからっ、殿下に、“婚約者候補から外してもらうようにお願いした”と。それは、本当、なのですか。」
「・・・う、ん。」
「では、お嬢様は殿下と、結婚したくない、という事ですか?」
「えっ、えぇ、そうよ。」
私のその返事にエリナが「そんな」と小さく呟く。
エリナはわたくしに殿下と結婚して欲しいのかしら?
エリナの焦った表情に私は首を傾げた。
「お、お嬢様、奥様が、先程、殿下との婚約の話を進めたい、と、返事をなさいました。」
今度は私が「そんな」と言う番だった。
「いや、でも、エリナ、婚約者候補はわたくしの他にもいると、言っていたわ。いくら、お義母様が、その手紙を出したからって、直ぐに決まるわけじゃないでしょう?」
私は自分に言い聞かせるように言いながら、エリナの返事を待った。
「ですが、お嬢様は、婚約者候補の中でも、一番地位が高いのです。もしかしたら、という可能性も・・・私がお嬢様の意志を確認していれば・・・。」
と、エリナが落ち込んだように言った。
「大丈夫よ。とりあえず、来週あるガーデンパーティーで、もう一度、殿下にお願いしてみるわ。」
私はそう言ってエリナに笑いかけた。
「とりあえず、片付けをしないと・・・」
床にちらばったままの、ティーカップであった破片を見ながらそう言うと、その声に被せるように、
「ねぇ、アンジェ、そのガーデンパーティー、僕も一緒に行っても良いかな?」
と、シャンスお兄様が良い笑顔でそう言った。
━━━━━━━━━━━━━━━
次回は王宮のガーデンパーティーです。
投稿遅くてすみません<(_ _)>
ここまで読んでくれてありがとうございます!
「えぇ、お義母様、大丈夫ですわ。」
レイザーン殿下が我が家を去った後、わたくしはまた、お義母様と向かい合っていた。
「でも、殿下がアンジェリカは体調が優れないようなので今日はこれで、と仰っていたのよ?やっぱり、医者に見せた方が・・・」
「ほ、本当に大丈夫ですわ、お義母様っ!」
「でも・・・」
シャンスお兄様が体が弱かったからだろうか。
お義母様は、先程からずっと医者に見てもらいましょうと譲らない。
勿論、私も医者に見せるほどでも無いので譲るつもりは無い。
しかし、お義母様に心配してもらうのは少しくすぐったくて嬉しい。
今日は、大人しくベットで横になる事にした。
「何かあれば直ぐに言うのよ。」
そう言って、お義母様は部屋を出ていった。
一人、部屋に残ったわたくしはベットから出てバルコニーに出た。
『アンジェ、気分、悪い?』
『ルビー、平気よ。心配させてしまったかしら。』
私が一人になると、ルビーは私の周りをふわふわと飛びながら話しかけてくる。
表情は見えなくとも、その声から、何となく想像することができる。
『ううん。アンジェ、ルビーがまもる。だから、何かあったら、言って。』
『ふふっ、ありがとう・・・。』
そう言ってルビーを撫でるように、手を動かす。
『アンジェ、あの子、嫌い?』
あの子?あの子って・・・。
『殿下のこと?』
『うん。アンジェ、あの子が来た時、苦しそう、だった。』
『っ、!』
(ルビーにまでバレていたなんて・・・。)
私も不思議だ。
ゲームで殿下の事を知っているとはいえ、実際に会うのは初めてのはずなのに・・・。
ずっと、ずっと、知っていた気がする。
あの目も、あの声も、あの笑みも・・・。
少しだけ、チクリと胸が傷んだ。
だが、きっと気の所為だ、と私は頭を振り、やはり疲れているのだろうと思い、ベットに戻った。
━━━━━━━━━━━━━━━
「アンジェっ!王宮で開かれるガーデンパーティーに行くって本当なのっ!?」
アレクシスとの買い物から帰ってきたお兄様が、挨拶もせずに私に問いかけてくる。
「えぇ、本当ですわ。」
「なっ!アンジェ、もしかして、殿下の事が・・・。」
「ちっ、違いますわっ!」
お兄様が何か勘違いをしそうだったので私は慌てて弁解した。
「わたくしは別に、殿下の事なんてなんとも思っていませんわっ!殿下だって、ただ、社交辞令で誘っただけですわ!」
「だけど、母上が、殿下とはとても良い雰囲気だったって、帰りなんて、お互い離れたくないと見つめ合ってたと・・・。」
(お、お義母様っ!何をどう見てそんな事をっ!?)
既に、シャンスお兄様は盛大に勘違いしていた。
このままではまずい、と思ったわたくしは、殿下と話したことをお兄様に言った。
「お、お兄様っ!わたくし、殿下に婚約者候補から外してもらうようにお願いしましたのっ!」
《ガシャーーーン》
「「えっ。」」
その時、何かが割れる音がした。
振り返って扉の方を見てみれば、エリナがいて、そして、その足元にはティーカップであったであろう、破片が散らかっていた。
「えーーと。エリナ?」
私は未だ固まって動かないエリナに恐る恐る話しかけた。
「お、お嬢様っ。今のお話は本当なのですかっ!」
「え?」
「で、ですからっ、殿下に、“婚約者候補から外してもらうようにお願いした”と。それは、本当、なのですか。」
「・・・う、ん。」
「では、お嬢様は殿下と、結婚したくない、という事ですか?」
「えっ、えぇ、そうよ。」
私のその返事にエリナが「そんな」と小さく呟く。
エリナはわたくしに殿下と結婚して欲しいのかしら?
エリナの焦った表情に私は首を傾げた。
「お、お嬢様、奥様が、先程、殿下との婚約の話を進めたい、と、返事をなさいました。」
今度は私が「そんな」と言う番だった。
「いや、でも、エリナ、婚約者候補はわたくしの他にもいると、言っていたわ。いくら、お義母様が、その手紙を出したからって、直ぐに決まるわけじゃないでしょう?」
私は自分に言い聞かせるように言いながら、エリナの返事を待った。
「ですが、お嬢様は、婚約者候補の中でも、一番地位が高いのです。もしかしたら、という可能性も・・・私がお嬢様の意志を確認していれば・・・。」
と、エリナが落ち込んだように言った。
「大丈夫よ。とりあえず、来週あるガーデンパーティーで、もう一度、殿下にお願いしてみるわ。」
私はそう言ってエリナに笑いかけた。
「とりあえず、片付けをしないと・・・」
床にちらばったままの、ティーカップであった破片を見ながらそう言うと、その声に被せるように、
「ねぇ、アンジェ、そのガーデンパーティー、僕も一緒に行っても良いかな?」
と、シャンスお兄様が良い笑顔でそう言った。
━━━━━━━━━━━━━━━
次回は王宮のガーデンパーティーです。
投稿遅くてすみません<(_ _)>
ここまで読んでくれてありがとうございます!
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
446
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる