朝が来るまでキスをして。

月湖

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4 変わらない関係  side hikaru

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ハマってる、っていうんだろうな。

あの自由で気高い人に。



練習生の頃からずっと憧れていた。

手足が長いから一つ一つの動きにダイナミックさがあって、なのに昔やらされたらしいバレエのおかげなのかどんなに激しい振り付けでもどこか余裕があって優雅だ。

焦げ茶色の少し長めの髪と瞳は一見柔らかい印象を持たせるけど、ダンスへの情熱は熱くクオリティへのこだわりは半端ない。

なのに歌もウマいってなんなんだよ。デビュー組に憧れていつか追い付く!とか息巻いてたのに同じ練習生の中に超えられなさそうな壁があった。

落ち込んださ。そりゃもう目いっぱい。このレベルでデビューしてないの!?え?俺絶対無理じゃね?って。

でも一応高校卒業まで頑張ってみてデビューできなかったらすっぱり諦めようって。無理なら普通に大学行ってサラリーマンしようと決めて無理やり奮起した。


まさかの一緒のグループデビューが決まって、少しは近付けたと思ったのに、いざ近付いてみればやっぱり自分との差が明らかになるばかりで。

グループの平均的なスキルでこなせる歌とダンスはナガレくんには窮屈そうに見えて、自由に飛びたいあの人に足枷を付けてしまったような心苦しさがあった。


せめて足手まといにならないようにとスキルを磨き、彼の隣に立つに相応しい自分になろうと必死だった。

・・・それは他のメンバーも同じだったけど。





ねえ、なんで俺だったの?

あの日、あんなことをしてなかったら自分の気持ちに気付く事も無かった。

そしたら、こんなに苦しくなかったと思うのに。




・・・でも、俺のこんな想いは知られちゃいけない。

あっちはその気なんて無いんだから。




あの日から俺達の関係は変わる事はない。

お互い彼女がいてもいなくても、視線が絡んでその気が見えたら口付けを交わす。

恋人同士のように激しいキスをしてもただそれだけ。



口寂しいから。

気持ちイイから。



そんな理由。

キモチなんて関係無いって、最初っから言われてた。



ほら、今だって俺とキスしてんのになんか考えてる。

適当な事言って喜ばせておいて、ちょっと調子に乗ったら突き落とされる。





ねえ、なんで俺とキスすんの?

なんで、俺にそんなキスすんの?

気持ちイイとか、もう聞き飽きたよ。



でも、あなたは俺達の関係が変わることを望んでないし、俺に対する気持ちが友達以上になる事もないんだろ?

妖しい視線で誘うだけ誘って、自分の満足するキスが終われば何も無かった様にふっと離れる。

それが全て。


だから今日も俺はこの感情を隠して、あくまで遊びのようにあなたに口付ける。

あなたの望む関係のまま。



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