朝が来るまでキスをして。

月湖

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81 代わりの印

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指先の冷たくなった手が俺の首を緩く締める。



「・・・ふふ」



何故か、喉の奥から笑いがこみ上げてきた。


これが・・・



「ナガレくん・・・?」



急に笑い出した俺に、俺の首に手を掛けたままのヒカルちゃんが訝しげに名前を呼んだ。



「これが、ヒカルちゃんの『好き』?」



激しい嫉妬と、狂ったような執着。



自分のものにならないなら、誰のものにもなるな。

もしそれを破ったら・・・、その時は?



俺は、首に掛けられた手を握る。



「ふふ・・・」



「・・・なにが、可笑しいの・・・」



表裏一体。

ってよく言うよな。

混在するものだとも。



「激しいな」



「・・・・バカにしてる?」



一気に不機嫌な表情になったヒカルは、俺に握られた手を解こうと動かす。

俺はそうさせまいと更に強く掴みそのまま彼の左手を唇に寄せ、くすり指の先をきつく噛んだ。



「っつ・・っ・・・なに・・・っ?」



「バカになんてしてねえよ」



「っん・・・」



痛々しいほどに赤くついた歯形に舌を這わせると、同時に、小さく声が上がった。



「印は付けれねえから、その代わり。
・・・俺のものでいたいなら、そんなカオ、誰にも見せんなよ?」



本人はそのつもりではなかったかもしれないけど、ヒカルちゃんなりの答えを見せてくれた礼とでもいうか。

多分、こんな事言われるの嬉しいんだろうなと思う言葉を口にして、チュッと音を鳴らして唇を離すと



「あなた以外に、誰が俺にこんな事すんのさ・・・」



ヒカルちゃんは少し呆れたように俺を見、



「・・・てか、そんなの言わないでよ」



すぐ後には、切なそうに眉を顰めた。



「そんな、嘘でも、誰かに嫉妬してるみたいに言われたら、少しでも俺を好きなのかって、期待しそうになる」



そして、



「そんなわけないのにさ」



ぼそりと呟き、目を逸らした。



「・・・・・」



ホントに・・・。

俺が嫉妬なんて、するわけ、ないじゃん?







でも。



『・・・お前は、七瀬くんが好きなんだよ』


『気付いてないならちゃんと考えろ』


『お前が俺に向けた目は、どうしたって恋する男の嫉妬する眼だった』




悲しげなヒカルの顔を見ていると何故か、さっきの電話の内容がフラッシュバックした。



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