朝が来るまでキスをして。

月湖

文字の大きさ
上 下
94 / 141

94 らしくない

しおりを挟む




・・・けれど。


さっき蹴りを入れられた衝撃が頭に残り、安眠できそうにないと脳味噌が訴える。



「・・・・・」



俺は隣で軽いイビキを掻きながら眠るヒカルちゃんの様子を窺いながらモゾモゾと身体を動かしベッドから降りた。

眼下には全裸の腰に薄い掛け布団を巻き付けたヒカルちゃんと、その手に握られた俺の今まで着ていたTシャツ。

とりあえず起こさなかった事にフーっと息を吐き、ベッドの下に落ちていた自分の服を拾って寝室を出た。







「寝相悪すぎだろ(笑)」



とりあえず服をソファに投げ、適当に出したコップで水を飲みながら呟く。

散々聞いていた話は盛られていた訳じゃなく本当だった。

って事に呆れた。



「・・・帰るか」



目の前にソファがあるけれど、端には雑誌やら新聞やらが幾つか置かれていて、とてもそこで寝ようという気にはならない。


服を手に取り、裸の上にシャツを羽織ると上ふたつのボタンを開けてデニムを穿き、ジャケットを着て玄関に向かうと靴を履きドアノブに手を掛けた。



「・・・・」



けど扉を開けようとしたところで暫し考えた。


このまま帰ったら、殊俺との付き合いにだけは考え方がネガティブなヒカルちゃんはまたすぐ帰ったって泣くのかね?


自分でもらしくないと思いながら、リビングに戻り、テーブルの上に置いてあった手帳の一枚を破る。


ちょっとくらいは愚痴ってもいいんじゃね?


そう思いながら短いメモを残し、まだ夜が明けきらない中、ヒカルちゃんの部屋を出た。



しおりを挟む
1 / 2

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!


処理中です...