朝が来るまでキスをして。

月湖

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101 落ち目の女 side hikaru

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楽屋を出て適当に空き楽屋にノックしそれを4回繰り返した時、やっと求めていた返事が返って来た扉があった。



「ナガレくん?」



間違いないと思うけど、一応名前を呼び確認する。

すると、



「ヒカルちゃんが来たんだ?」



ゆっくりと扉が開き、そんな事を言いながらニヤッと笑われた。



あなたがあいつらに言ったんでしょ。

探しに来いって。



「頼まれたから」



俺は見たくなかったよ。

そんな、胸元のボタンを直す女なんて。

いったい、何してたの。



「んふふ。じゃ、行くか」



俺が後ろにいる女を見てるのに気付いてるくせに、それには触れないでさっさと部屋から出ようとする彼。

そんな彼に、ボタンを上まで留めた彼女が声を上げた。



「付き合ってくれないなら、週刊誌に売るわよ」



その言葉に俺は二人の話の内容を悟り、彼女に背を向けた彼はピタッと動きを止めた。

それに勝ち誇ったように彼女が続ける。



「ねえ、ナガレ、キスして?」



わざとらしい声に反吐が出そうだ。

そして同時に哀れに思う。

そんな事したらますます彼の心が離れるって分かんねえの?



「リエコ・・・」



ほら、ね。

ナガレくんが彼女を名前で呼ぶ。

でもその声には何の感情も無い。



「ふふ・・ナガレ、来て?」



そんな事にも気付かないバカ女。

名前を聞いて思い出したよ。


俺は彼が出ようとしてた扉を開け、彼と一緒に中に入った。

そして彼女を睨み付ける。



「落ち目らしいじゃん、アンタ」



前はテレビにも出たりしていた、元カリスマモデル。

それこそナガレくんと付き合ってた頃だ。

それが2年前くらい?

その後はあんまり見なくなった。



「自分じゃ這い上がれないからって、この人利用すんのやめてくれない?」



ナガレくんがじっと俺を見ているのに気付いていたけど、彼女に対する黒い感情が止められない。



「最初に近付いたのだって、そのつもりだったんじゃねえの?」



「な・・っ!違うわよ!」



顔を赤くして叫ぶ彼女に、俺は更に畳み掛ける。

こんな女、二度と近づけさせない。

そんな思いで。



「だいたい、売るったって証拠も無いだろ?
言ったところで、アンタが潰されて終わるだけだと思うけど?
俺らは邪魔な虫がいなくなって都合いいけどね(笑)」



「っナガレ、違うから!私ホントにあなたの事・・!」



もう、うるせえよ。

脅して手に入るくらいなら、俺だってやってるさ。



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