朝が来るまでキスをして。

月湖

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123 勘違い side hikaru

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今日最後の仕事が終わったのは、ナガレくんに言った時間を少し過ぎた頃。


待ってるかな。


携帯を見ながら思う。


・・・そんなワケないか(笑)


でもすぐに思い直した。

彼はひとりの時間を過ごすのが上手いから、もしかしたら約束自体を忘れてるかもしれない。


はあ・・っ、と溜め息をつきながら、それでも彼の番号を呼び出しコールした。


聞こえてくるのは無機質な音。

5回を数え、終了ボタンに触れようとした時。



「おっせーよ」



と少し不機嫌な声が聞こえてきた。

その言葉に、胸が高鳴る。



「・・・俺の事、待ってたの?」



そんなワケないって、答えは分かり切ってる。

だから、



「な」「悪い?」


んてね、と言う筈だった自分の声を遮られた時、俄かに信じられなかった。



「・・え?」



「約束しただろ?」



あ・・・。



「・・・お仕置き・・・?」



昼間の事を思い出して言うと



「っふ!(笑)」



電話の向こうでいきなり噴かれた。


え? 違ったっけ?

だって、言ってたよね?

いや、されたいわけじゃないんだけども!


若干パニクった俺に



「仕事終わりで連絡するって約束したじゃん?(笑)」



と、笑いの含んだ声で言われて一気に顔が熱くなった。



「っあ、のっ・・っ」



絶対面白がってる。



「ふふ。ヒカルちゃん、されたいんだ? お仕置き」



ほら、声が変わった。

意地悪な声。

なのに、その声にカラダが勝手に反応してしまう。



「ち、が」



「わないっしょ(笑) 期待してたんだろ? お仕置き(笑)」



彼が『お仕置き』と言う度に、熱が上がりそうだ。



「ナ、ガレく・・」



「してやるから、早く来いよ」



その声に逆らうなんて、出来ない。



「今、帰る・・・」



明日はオフ。今夜何をされても、何度されても大丈夫。

ドクドクとうるさい心臓を抑えながら返事をし、通話を切ろうとした時



「あ、」



と聞こえてきたとぼけた声。



「何?」



なんかいるのかな?

てっきりそう思っていたのに。



「俺んチだから」



・・・。



「ハ?」



誰も見てないけど、多分、間の抜けたカオだったと思う。

だって。



「俺んチに来て。もう出るのめんどい」



「・・・う、ん」



いつもスるのは俺んチで、こんなの初めてだ。



「わ、かった」



辛うじてそう返事をし、俺を送ろうと待っていたマネージャーには寄るところがあるからと慌てて断りを入れた。



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