朝が来るまでキスをして。

月湖

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133 本当と嘘の愛 side hikaru

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あなたが意地悪を言うから、それに対抗しただけなのに。



「・・・・」



さっき、散々俺にバカって言ってくれたけどさ。



「ナガレくんのがバカじゃん」



目の前の彼を抱きしめる。

俺の気持ちは昨日も、さっきも、何度も言った筈なのに。



「なんで、俺には直接言ってくんねえの?」



他の人には言ってたくせにさ。



「・・・何を」



俺の脇に手をついて体重が掛からないようにしている彼を更にキツく抱きしめ、反動をつけて横に転がる。



「俺が、あなたのモノだって」



ナガレくんの腰に跨り、胸に手をついて身体を起こす。

そして、いきなりのことに驚いてるのか何も言わない彼に俺から言った。



「少しは俺にも独占欲を見せてよ」



「・・・」



「あんなの、嘘に決まってるだろ。
俺は一途だからね、好きな人意外とは寝ない。まして男なんて、メンバーですら虫唾が走るよ」



こんな暗い中でも、慣れれば表情が見えてくる。

眉を寄せて、不機嫌そうに俺を見てる。

俺はそんな彼に目一杯優しく微笑んで、言ってやった。



「ナガレくん、俺はあなたを愛してるよ」



「・・・」



「好きだからって、簡単に抱かせたわけじゃない。
ありえないとこにあなたを受け入れるんだから絶対痛いって分かってたよ。
それでもあなたが欲しかったから。俺の全部を引き替えにしてもあなたが欲しかったんだ。
・・・あなたの心が」



だから。

ねえ。



「今は嘘でもいいから、言ってよ。
あなたが忘れられなかった女が言わなかった答えを言ってあげるから」



俺を好きだって。



「・・・言ったら、忘れられる?」



俺が言葉を欲しがると、ずっと黙って俺を見つめていた彼がやっと口を開いた。



「・・・忘れちゃえばいいよ。
それで、俺を初恋にすればいいんだ」



自分に好都合な答えを返すと、ふ・・、と彼が息だけで小さく笑う。

そしてその直後。



「・・・俺、好きになったみたいだ・・・」



穏やかな声で、俺に向かって、多分昔の女にしたであろう告白をした。

だから俺も



「俺も、多分・・・出会った時から好きだよ」



彼を見つめながら返し、ゆっくりを身体を倒して、キスをした。



「愛してる。あなただけだよ。
・・・さっきはあんなこと言ってごめん。俺の全部はナガレくんだけのもんだよ」



もし本当にナガレくんより優しい誰かが俺を想っていたとしても。


俺の気持ちは変わらないから。



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