異世界で最強無双〜するのは俺じゃなかった〜

秋元智也

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第二章

30話 クラーケンの討伐

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朝起きると、街の方が騒がしかった。

温かい体温を感じながらゆっくりと目を覚ました。
昨日の事をぼんやりと考えながら横を見るとぐっすりと眠りながら
ケイルの腕にしがみつくイリアの姿が映った。

「あ~そういえば、そのまま寝たんだっけ…おい、起きろ~!お~
 い、朝だぞ」

イリアの鼻を摘むと耳元で声をかけた。
最初はむにゃむにゃ言っていたが息が詰まったのかすぐに飛び起き
てきた。

「おはよ?しっかり寝れたか?」
「う…うん///////」
「じゃ~飯食って観にいくか!」
「そ、そうだね」

そうして冒険者ギルドに立ち寄ってから浜辺まで来ている。
なぜ、ここまでくるかと言うと…


「よかった~お強い方がいてくれて、早速ですけど退治依頼をお
 願いします」
「いや、俺たちは観光で…」
「冒険者はみんなこの祭りで参加義務があるんです!さぁ~始ま
 っちゃいますよ!急いで急いで!」

急かされるように浜辺まで来ると、もう数人の冒険者が戦闘準備
に追われていた。


「おい、こんな子供を送ったのは誰だ?冒険者に成り立てでこんな
 ところに来るんじゃない。早くお家に帰るんだな!」
「ちょっと、失礼しちゃうわね!貴方達よりは断然強いんだから!」
「イリア、もういいから…後ろで見てますね~」
「あぁ、そうしてろ。この祭りは命掛けだからな!」

体格のいい冒険者達は笑いながらケイルとイリアを隅っこに行くよう
に指示してきた。

一応これでも依頼されてきているので、帰るわけにもいかない。
Dランクの冒険者証をつけた冒険者ばかりで、ギルドも不安だったのだ
ろう。
だからこそ、ケイル達をみて、すぐに依頼してきたのだ。

時間になると大きな音と共に大砲が海へと打たれていく。
大きな水飛沫をあげて、なん度も打ち込まれる。
海で大人しくしていたはずの魔物がプカーと浮かぶか、抵抗して向かって
来るかの二者選択を強いられる。

そして一際大きな体を表したのが、ここの主的存在のクラーケンだった。

「出たぞ~、野郎どもいくぞーーー!」

一斉に冒険者達が向かっていく先には、未だ半分は海水に浸かったままの
クラーケンの姿があった。

小舟を使って近づいていくのはどうかと思うが。
陸には上げたくないのだろう。

「足場が悪いわね」
「イリアだったらどうする?」
「もちろん、まずは足場を各場所に作るわ。そしてから足を全部切り落と
 すわね、それから~」
「うん、それで行こうか!」

ケイルが言うと、小舟が壊され逃げ惑う冒険者達のあわれな姿が映った。

「なるほど。それじゃ~いくわよー」
「バフ頼んだよ」

ケイルが剣を抜いて駆け出す間にイリアからバフがいくつもかけられて
いく。
目の前の水の上には幾つかの足場ができておりそれを蹴って飛び上がる。

まずは横から。
切れ味抜群の剣を振り下ろすと一本の足が水飛沫をあげて落ちていた。

落ちてさえも動き続ける異様な光景に目を取られる事なく次の足へと
取り掛かる。

「上くるわよ!」
「おっけ…」

幾つかの足場が形成されるとそっちへ飛び退くと、上から大きな足が
叩きつけられていた。

そのまま後ろに回り込むとすぐに後ろの足を切り落としていた。

何度も逃げながら落としていくと、流石にこたえたのか海へと戻ろう
としていた。

「逃すかよっ…と!」
「逃がさないわ!」

イリアの魔法が入江を凍りつかせ、ケイルの剣が魔石事真っ二つに切
り裂いていた。

観客の歓声が上がると陸から何人もの男達が肉を引き上げようと向か
ってきた。

安全になると一斉に来るとは…。

冒険者達も呆気に取られると、言葉を失っていた。
子供だと馬鹿にした青年に手柄を取られたのだから、何もいえないの
だろう。

目撃者が多い為、虚偽の報告もできない。
報酬のほとんどはイリア達がいただく事になってしまった。

「あら~、隅っこで見てたんだけど~、情けないから手を出しちゃっ
 たわ~」
「イリアっ!あの、俺達帰りますね~…」
「おいおい、今回の主役が帰るんじゃねーよ!今から料理が振る舞わ
 れるんだぜ!食ってけって」
「そうだ、そうだ!今回の主役だからな!」

街の人達の言葉に甘えて、頂く事にした。

帰りにはしっかり報酬を頂いて屋敷に帰った。

「今日は楽しかったな~」
「でしょ!料理も向こうに帰ったみたいな感じがした~よかったで
 しょ!」
「そうだな~、懐かしかったな?あのさ…これからなんだけど…」
「魔族領に行こうよ!ケイルにも同じように生きる為にも必要だよ
 ね?」
「そう…だな。でも、いいのか?」
「大丈夫だよ。世界を見て回るって言うのには魔族領入ってるもん」

観光がてら魔王討伐をこなせば、きっと願いが叶う。
そんな期待を胸に次の日には旅立ったのだった。

街から崖上の屋敷が忽然と消えたのは彼らが旅立ったあとだったとか。
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