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デス・ゲーム11日目 飛び散る鮮血
しおりを挟む真莉愛から逃れるために林の中をショウと走る優笑。
「はっ……はぁ……はぁ」
まだレベル1の優笑は体力もそれほどもたない。
息が切れて、走れなくなってしまった。
「大丈夫か?」
「はい……すみませ……ん」
「いい、少し休もう。林の中の様子も伺いたいし……」
真夜中の林も、様々な音がする。
虫の音、夜鳥の声。
昼間でも都会暮らしの女生徒にとって不気味に感じるのに、今日は雲に隠れて月も出ていない。
葉のざわめき……の奥。
優笑達が走ってきた方向から声がかすかにする。
「優楽……?」
一瞬、自分を探しに来た優楽かと思ったが……。
「違う……」
「ソフィア~~~~~~~~~~~どこだい……ソフィアーーーーーーーーーーー」
ゾクリとした。
真莉愛はソフィアを探している……!?
「天乃を探しているんだ……」
「私を……」
真莉愛もソフィアの血を継いだ優笑を無意識に意識していたんだろう。
「ソフィア~~~~~~~~喰ってやるよ~~~~~~~~~~~~美味しく~~バリバリと~~」
しかしそれは敬愛でもなんでもない。
彼女にとっては疎ましい余計な感情だったのだ。
「逃げるぞ!」
「は、はい……っ」
どうして正確に二人を追ってきたんだと恐怖にかられながらも二人は走る。
倒れそうになる優笑をショウは支えた。
「灰岡さん……一人で逃げてください……あいつは私を追ってきている……」
「ふざけるな」
昨日、少しだけ感じた平穏。
続くとは思っていなかったが、まさかこんな風に砕かれるとは……。
北の遊園地へ行っても、隠れる事はできないだろう。
迷路もバーサーカー化した真莉愛にとっては逆に有利になってしまう。
「やはり図書館の方へ行くしかないか……」
「優楽は……まさか……真莉愛に……」
「いや、この短時間で優楽が喰われるとは思えない。バーサーカーになっても結局はまだ優楽と戦うリスクを真莉愛も考えているんだ!合流まで頑張るんだ。僕もそうやすやすと喰われるつもりはない!」
「合流……でもどうやって……」
「寮に戻るぞ、端末だ」
「はい……!」
とりあえず今できる事は走る事だけだ。
しかし後ろを追う真莉愛は、夜空に向かって吠えたかと思うと手を地につけ獣のように走り出した。
後ろから迫りくる真莉愛の速さ。
これでは寮へ着くまでに追いつかれてしまう!?
「図書館……」
しかしあの寮を粉砕したのは真莉愛だ。
「灯台は……どうですか!?」
「そうだな……なんだか匂いを追っているようにも見える。海風が吹けば誤魔化せるかもしれない」
「まずは鍵を……」
図書館の一階の机に鍵があった。
それを手に入れる必要がある。
そこまで辿り着けるかだ!
でももう苦しい。
それでも走らなければ殺される。
でも、でも苦しい!
「僕が足止めするか……」
「絶対にダメです!」
優笑が叫ぶ。
「私なんかのために……灰岡さんが足止めなんて……」
「ソフィアあああああああああああっ!!」
しかし後ろからとうとう嵐のように唸る獣が二人に襲いかかる!
一気に迫る死の恐怖!
「やめてぇ!」
丁度、牙を向けた真莉愛の顔に、壁を出現させた。
「ぐぅ!?」
顔面から壁に激突した真莉愛はわけもわからない様子だ。
その隙にショウが真莉愛の背中に血のナイフを突き刺す。
「ぐぎゃああああ!! ちくしょう! グゾォオオオオオオオ!!」
優笑は真莉愛をバリアの応用で拘束するが、腕が拘束された状態だけだ。
それでは牙も足の爪も鋭い真莉愛の攻撃力はそこまで下がらない。
ショウは咄嗟に足払いをして、真莉愛を土の上に転がした。
二人はすぐに真莉愛から離れて走り出す。
転ばされた真莉愛は更に怒髪天を衝く形相で吠えた。
少し離れれば、拘束も解けてしまうだろう。
二人は必死で走る。
図書館はすぐそこだ……!!
林から抜け出し、整地された芝生になる。
「ふざけんじゃねえぞおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
しかし猛スピードで追いかけてきた真莉愛。
更にバーサーカー化した右手の爪で優笑を切り裂こうとする。
「きゃあああっ!!」
夜空に血が舞う。
切り裂かれる肉体。
真っ赤な鮮血。
「はっ灰岡さぁんっ!!」
優笑をかばったショウが、血の中に倒れた。
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