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第一章

契約する事になりました。

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    私の出した条件に、奴は頷いた。
    ……が。

    「俺に、本星に住む連中をお前に紹介出来る様な甲斐性は無い」
    「……おい」

    その答えに思わず半眼で睨み付けるも、奴は溜め息一つでそれを受け流す。

    「だが、俺は吸血鬼だ。よって下僕を造り出す能力がある」
    そして私に告げた。
    「しかし、その魔術にはえらく力を使う。今の様に間に合わせの吸血では間に合わない程の、な」

    「それは。以前言ってた“契約”に関わる話かしら?」
    「察しが良いな。……そう言うことだ」
    「けれど、そうして作った下僕を住人として認めて貰えるので?」
    「一応、確認は取った」
    「ちなみに種や家畜は?」
    「……元手の金は用意してやる。店も紹介してやるから、後はお前が商売なり何なりして稼いでどうにかしろ。俺はそこまで面倒見る気はねぇ」
    「……分かりました。良いでしょう」

    ――元々やる気の無かった男にこれだけ譲歩させたのなら上出来だろう。

   「――取り敢えず話は屋敷でする。こんなクソ寒ぃ場所にこれ以上居たくねぇ」
   「屋敷のエリアを広げてくれるのならここもそう寒く無くなると思いますがね?」
   「それは、お前の能力次第だな」
   「……は?」
   「契約すれば俺は力を得られる……が、契約相手の血のグレード次第で得られる力の格も変わってくるからな。使える力の量次第で出来る範囲も違って来るからな」

    ……食事の栄養価値次第でパフォーマンスが変わってくる、という事らしい。

    「ちなみにグレードを上げる方法は?」
    「徳を積み上げて能力を上げるとか?    ああ、この場合はお前の食事事情とか健康状態は関係ないから。それが関係するのは純粋に血の味だけだから。……まぁ、不味い血は飲みたくねぇからそういう意味では無関係でもないけど」

    良く分からないけど。取り敢えず一番の問題が解決したならまずは良しとしよう。

    「――じゃ、さっさと終わらせるぞ」
     屋敷へ戻ると、すぐに彼は嫌そうな顔でそう言った。
    「これは、いわば魔法契約だ。契約内容を反故にすれば命は無い。……覚悟は良いか?」
    「因みにその契約内容は?」
    「お前は、俺の望む時には何時でも――健康上命に関わる事由が無い限りは必ず俺に血を差し出さなければならない。代わりに俺は契約者を庇護する義務を負う。……つまり今までは親父の仕出かした所業から仕方なくお前をここに置いていたが、それがこれからは俺の責任でお前の命を守らなければならなくなる」

   「それは、つまり……」
   「俺から積極的にこの課題を失敗して処分される選択を選べなくなると言う事だ」
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