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4章 農園のヒロイン

第1話 優良物件、って何だっけ?

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 「食堂に新しいスイーツメニューが出たらしいんだが、一緒にどうだ?」
 本日誘いに来たのはユージーンだった。

 イケメンからお茶に誘われる。
 日本でだったら喜んでついて行っただろう。

 でも、結婚前提のお付き合い、となるとそう簡単には頷けない。

 次の日には赤華が、
 「森できのこと山菜が沢山採れたんだ」
 とおすそ分けを持ってきてくれる。
 ……山菜おこわが好きな私的にはありがたいおすそ分け、なんだけど。
 「まだまだあるから、明日にでも山菜採りに行かないか?」
 と、お誘いもセットなので困る。

 誰も彼も、嫌いじゃないから困るんだ。

 神であるアグリ様が認めた善良な人々。
 しかも、イケメン。
 その上タイプもよりどりみどりに揃ってる。

 ……私の好み的にはユージーン君とか良いなぁ、とか思わない事はない。

 ただ、今まであまりにも異性に対する免疫がなく、いきなり結婚、となるとどうしても躊躇ってしまって前に進む勇気が出ない。
 少なくともバンジージャンプ飛ぶよりは、命の危険も皆無で簡単な覚悟のはずなのに。

 ラノベでよく居る逆ハー狙う乙女ゲームの転生ヒロイン、ああいう娘達のメンタルを心底尊敬するよ。
 私なんか毎日精神を何かがゴリゴリ削り取ってる気分になるのに。

 「人としては問題のある方はここには居らっしゃしませんし、もうユリの好みで選んで結婚しちゃえば全て丸く収まりますよ? 人のものになってしまえば他の方は素直に諦めるでしょうし、逆恨みしたりストーカー化するような人は喚んでませんから」

 アグリ様もこの件ではアテにならず……。

 今日もまた。
 「農園最初のブドウで作ったワインが出来たそうだよ。まだ若いが、味見の為に呼ばれているんだ。一緒にどうかな?」
 貴族の若様が。……まぁもう今は貴族も何もないから、と自ら誰にでもフレンドリーに対応していて、人気も高い人なんだけどね?

 「……ねぇ、どうしたらいいと思う?」

 数少ない同性のキャッシーに相談を持ちかけてみるも……
 「いや、アンタの好きなの選べばええやん。よりどりみどりやろー? あ、でも気がないなら赤華は選ばんといてな! ……本気なのやったら受けて立つけど」

 「いや、赤華どころかその気がそもそも……ね?」
 「何で?」
 「いや、だって……。それこそキャッシーとか、少ないとはいえ他にも女のコが居るのに何で私か分からなくて……」
 「いやいや、だってアンタ美人じゃん? しかも教養もあるやろ? 字が読めて書けて、計算も出来る。超優良物件やんか」

 ……は?
 私が優良物件だと?
 それは……何の冗談かな?
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