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4章 農園のヒロイン
第2話 デキる女!?
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私、日本では極々普通の、けれど明確にランク付けされれば並より若干下くらいのものだったと思う。
容姿も、能力も。勿論女性としての魅力的にも、だ。
しかし、このアグリ様の世界では、日本の様に教育が行き届いていない。
最低限の読み書き計算ですら少し裕福な平民でないと学ぶ機会がなく、大半の者はせいぜい市場の値札が読めれば良しというレベルの教養しかなく、読めもしない契約書を使った詐欺や搾取なんて日常茶飯事で。
ましてや日本の大学を出ている私レベルの教養は、貴族――それも権威と財力両方を持ち合わせたごく一握りの者しか身に着けられないものなんだそうで。
しかもOLという、どちらかといえばホワイトカラーな職種に就いてデスクワークが中心で、肉体労働なんて滅多にしない私の手は確かに労働者の多いこの農園の女性に比べると手は綺麗な方だ。
勿論料理洗濯などの水仕事はしていたけれど、気軽にお湯が使えて洗濯は自動洗濯機、しかもハンドクリームなど薬も使ってのお肌のケアもしていたのだ。
肌のケアなんて考えもせず、洗濯も手洗いが当たり前、食器洗い程度にお湯を使うなどあり得ないと言うこの世界の女性たちの手は、まぁいわゆるお姫様の手には似ても似つかない、逞しい手だ。
私もこの一年の農園生活でかなり労働経験を積んだつもりでいたけど、結局所詮はたった、一年。
物心ついてから常に労働してきた彼女たちとは比べるべくもなく。
つまり、ここに居る大半の男性にとっては私は育ちの良いお嬢様に見える……らしい。
けれど、当然私はお嬢様なんかじゃないから最低限の家事はできる。
だから、こぞって皆が私を嫁にしたいと、そう思っているのだとキャッシーは言った。
ねぇ、そのスーパーウーマンが私とか……無いでしょう?
本当に私はごく普通の事務職なのよ?
日本じゃ掃いて捨てるほど居る、今の職を失えば同じ職の求職者は沢山居るから埋もれかねない、その程度の存在。
容姿も地味めで、派手な特技も趣味もない。
どこにでも居る普遍的な女。
それが、異世界で、特に変わった自覚もないのに突然スーパーウーマンになってモテてるとか。
「いや、マジで乙女ゲームのヒロインポジションとか、あり得ないから」
そう思うのに、でも考えれば考える程今の自分のポジションが正にそのものだと理解できてしまう。
これは、いよいよ覚悟しないといけないのだろうか。
未だ女としての自分に自信の持てないユリは、現実逃避したい気持ちとそれを許さない現実との葛藤にしばし頭を悩まされるのだった。
容姿も、能力も。勿論女性としての魅力的にも、だ。
しかし、このアグリ様の世界では、日本の様に教育が行き届いていない。
最低限の読み書き計算ですら少し裕福な平民でないと学ぶ機会がなく、大半の者はせいぜい市場の値札が読めれば良しというレベルの教養しかなく、読めもしない契約書を使った詐欺や搾取なんて日常茶飯事で。
ましてや日本の大学を出ている私レベルの教養は、貴族――それも権威と財力両方を持ち合わせたごく一握りの者しか身に着けられないものなんだそうで。
しかもOLという、どちらかといえばホワイトカラーな職種に就いてデスクワークが中心で、肉体労働なんて滅多にしない私の手は確かに労働者の多いこの農園の女性に比べると手は綺麗な方だ。
勿論料理洗濯などの水仕事はしていたけれど、気軽にお湯が使えて洗濯は自動洗濯機、しかもハンドクリームなど薬も使ってのお肌のケアもしていたのだ。
肌のケアなんて考えもせず、洗濯も手洗いが当たり前、食器洗い程度にお湯を使うなどあり得ないと言うこの世界の女性たちの手は、まぁいわゆるお姫様の手には似ても似つかない、逞しい手だ。
私もこの一年の農園生活でかなり労働経験を積んだつもりでいたけど、結局所詮はたった、一年。
物心ついてから常に労働してきた彼女たちとは比べるべくもなく。
つまり、ここに居る大半の男性にとっては私は育ちの良いお嬢様に見える……らしい。
けれど、当然私はお嬢様なんかじゃないから最低限の家事はできる。
だから、こぞって皆が私を嫁にしたいと、そう思っているのだとキャッシーは言った。
ねぇ、そのスーパーウーマンが私とか……無いでしょう?
本当に私はごく普通の事務職なのよ?
日本じゃ掃いて捨てるほど居る、今の職を失えば同じ職の求職者は沢山居るから埋もれかねない、その程度の存在。
容姿も地味めで、派手な特技も趣味もない。
どこにでも居る普遍的な女。
それが、異世界で、特に変わった自覚もないのに突然スーパーウーマンになってモテてるとか。
「いや、マジで乙女ゲームのヒロインポジションとか、あり得ないから」
そう思うのに、でも考えれば考える程今の自分のポジションが正にそのものだと理解できてしまう。
これは、いよいよ覚悟しないといけないのだろうか。
未だ女としての自分に自信の持てないユリは、現実逃避したい気持ちとそれを許さない現実との葛藤にしばし頭を悩まされるのだった。
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