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4章 農園のヒロイン

第3話 実力と自信と

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 「なぁ、何でアンタはそんなに自信がないんだい?」

 今日も今日とてキャッシーに突っ込まれる。

 「だって……。この世界じゃ凄い凄いと褒め称えられても、私の世界じゃ出来て当たり前の事だったんだもの……」
 「読み書き計算がかい? そりゃ、凄い世界だねぇ」

 「いや、国によっちゃ教育どころか子供が育つのに必要な食事もままならないって所もあるにはあるけど。少なくとも私の国では14歳までに基本の読み書き計算を子供に習わせるのが親の義務として法律で決められてて……、その後も3年はほぼ9割、更に2年から4年程勉強するのが普通な国だったんだよ、余程勉強に向いてないとかお金が無いとかじゃない限りは」

 だから。

 「この世界……アグリ様の世界、キャッシーがこれまで暮らしていた所だと、生活魔法は使えて当たり前なんだよね?」

 「まぁ、そうだね。大魔法を使える奴はエリート扱いだが、ね。
 少なくとも明かりの魔法は誰もが当たり前に使えるね。火種と飲料水を出す魔法は大概が使えるな」

 「でも、私の世界じゃ魔法っておとぎ話の中の話で、現実に使える人は居ないから、もしキャッシーが私の世界でぽんと火種の魔法なんか使ったらあっという間に特別扱いだよ? 当たり前のことで特別扱いされると気まずくない?」

 「……あー、成程、確かにちと戸惑いはするだろうけど。でも、力そのものは間違いなくアタシの力だ。恥じる事なんか何もないだろう?」

 「え?」

 「アンタのその力は、アンタの世界じゃ当たり前かもしれないけど、確かにアンタ自身が学んで身につけた力だろ? 力自体が借り物で自分の物じゃないってんなら気まずいけどな、自分の実力でチヤホヤされるなら良いじゃないか。だろ?」

 キャッシーが突然声を大きくすると、

 「ああ、そうだな。良かったよ、俺たち自体が嫌われてるんじゃなくてさ」
 「いやー、何してもこんなに響かないって初めての経験だったなー」
 「しかし、凄い国もあったものです。見習いたいですが、難しそうですね……」

 「え、え、え!?」

 「ああ、すみません。キャッシーさんに頼んで協力して貰ったのですよ」

 普段から私によくアピールしてくる男性陣がどやどやと入って来る。

 「いやね、誰が何をしても上手くいかないらしく、もう何をしたら良いかも分からなくなってしまって、私達も女心を学ばねばとキャッシーさんにお願いしたら、その……こんな場に連れこられまして。
 盗み聞きする形になってしまったのはお詫びしますが、しかし問題点が明らかになったのは一歩どころか大前進ですよ」

 そして、みんな揃ってにっこり微笑む。
 赤華さんの微笑みはちょっと迫力ありすぎて怖いんだけど……!
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