お一人様大好き30歳、異世界で逆ハーパーティー組まされました。

彩世幻夜

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異世界へ

痕跡

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    ……この世界の建物は、基本大正・昭和初期の和風な洋館に似たデザインの物が多く、特に住居家屋はその傾向が強かった。
    日本の時代劇に出てくるような純和風の古民家風の家はこれまで見なかったし、逆にヨーロッパの街並みのような純洋風の建物も無かったのに。
    ――ましてや、日本の住宅メーカー製の、明るい色の瓦葺きの切妻屋根の家が……それも見覚えのありすぎるデザインの家が、こんな異世界に存在する理由は。
    これまで燻り続けていたのにずっと見て見ぬふりをしてきた疑惑がほぼ確定したと言っても過言とはもう言えない。
    「……アオイ?」
    「この建物……他の物とは明らかに趣が異なりますね。――少し探ってみましょうか。影家、念のため侵入を妨害する様な罠がないか探ってくれますか」
    「もうやってる。流石に鍵はかかってるみたいだけど、罠っぽい罠は無いみたい」
    いつの間にか地面を這っていた茨の一部を持ち上げた彼は玄関の鍵穴に刺を差し入れガチャガチャと弄くり回して壊し、扉を開けた。
    ……見覚えのある靴箱が備え付けられた玄関。正面の壁に飾られているのは――家族の写真。
    父と母、そして――弟が写った〝家族〟の写真。
    「へぇ、凄い。こんな実写的な絵は初めて見たよ。それにほら、この女性アオイにちょっと似てるよね?」
     何も知らない影家が写真の中の母を指してこちらを振り返った。
   「……そりゃあね。実の母親なんだもの、似ていて当然よ」
    玄関で靴を脱ぎ、物入れの扉を開いてスリッパを人数分だしてさっさと履き替え、まずはリビングの扉を開けた。
    ――実家を出てからもう何年経ったんだったか。
    キッチンやダイニングテーブルには見覚えがあったけれど、テーブルにかけられたクロスは記憶している物とは違う物がかけられ、キッチンの冷蔵庫も買い換えたのかわりと新しい型の物に変わっていた。
    ――冷蔵庫を開けてみる。
    中は空っぽで、冷えてもいなかった。
    リビングに隣接する和室のテレビも電源がつかない。
    キッチンの水道も止まっているみたいだ。
    階段を上がってみる。
    二階の三部屋は夫婦の寝室と弟の部屋と客間だ。
    この家に私の部屋などあった事は無い。
    細々としたインテリアなど、多少記憶との相違はあれど、基本的には既視感あり過ぎな光景。
    ……間違いない。これは、私の実家だ。
    家ごと転移したのか、それともこの世界には記憶を物質的に再現する技術でもあるのか、それは分からないけど。
    似たような人は世の中に三人は居るって言うけど、ここまで似た家が異世界にある確率って偶然で済ますには無理がありすぎて、私自身すら誤魔化せない。
   「嶺仙、影家。間違いない。これ、私の実家だ……」
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