現代に生きる吸血鬼が異世界に勇者として召喚されたました。

彩世幻夜

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この世界の生き方

隣国の宿屋で

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    「……ここまで来れば大丈夫だろう」
    国境の壁が遠く後ろの地平線に半分以上隠れる様に見える場所で、俺達は自分達で掘り進めた穴から這い出た。
    夜の暗闇の中では尚更この距離で俺達を発見するのは困難だろう。

    それもはなから居るのが分かっていて探すのならともかく、漫然とした見張り方では余程運が悪くなきゃまず見付かるまい。
    そして夜が明けるまで数時間、途中休憩を挟みつつ歩けば壁は完全に見えなくなり、代わりに前方に国境のそれと比べて造りの甘い土壁が見えてきた。
    どうやら街らしい。
    ここのところずっと穴の中だったし、いい加減体を洗いたいしベッドでゆっくり眠りたかった。

    「朝イチで街に入って宿屋を探すぞ」
    「賛成……。てか、もう当分穴は見たくない……」

    ああ。暗い穴の中はそういう意味では快適だったが、彼女の存在が俺の理性を常に試していた。

    途中吸血を頼んだ時なんか……
    牙を穿たれ血を啜られて、痛みもあるはずが……何故か最近やけに恍惚とした表情を見せる様になった。……俺も吸血鬼とはいえ男だ。
    狭い穴の中に俺ら二人だけ。相手はその気になれば簡単に組敷ける人間の女。
    血だけでなく、彼女自身を美味しくいただく欲に抗うのは実に大変だった。

    今日の宿は二部屋とる。
    でないと俺は自分の理性に自信が無かった。

    ここへ来た当初はそうでもなかったのに。可愛く見える様になった彼女。
    緊急事態とはいえ、吸血鬼の俺をそうと知りながら普通に接してくれる彼女を、俺はいつの間にやら気に入っていたらしい。

    さあ。この国はどんな国か。
    ……現状打破する術が見つかると良いがな。
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