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私、ざまぁ系ヒロインに転生してしまったかも……!?
エンデ港
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これは……、大きいわね……。
それを前に私――フィリーネは言葉を無くした。
あの地獄の筋肉痛その他からも開放されてすぐ、私達は入学試験を受ける為、隣国のフライハイト王国にある試験会場へ赴く事になった。
そして、その隣国フライハイト王国に行くには国境を分かつこの広大な湖を渡らねばならない。
「いやもう、湖ってか海だよね? 向こう岸なんて見えないし」
海との違いなんて、淡水か潮水かってだけじゃないの?
いや、隣の地方との境になってる2つの川、ノーブル川やノエル川も日本の小川の感覚でつい想像してしまうけど、教科書を読む限りは長江とか黄河とか、外国の大河の方を想像するほうが近いかもしれない姿っぽいんだけど。
日本最大と言われていた琵琶湖すら庭の池に見えそうな規模感の、その広大な湖に面する、セイントランド聖国の港の一つがこのエンデ港。
聖都お膝元の港とあって、客船や商船が行き交い、沖では軍船が賊の船や密航、密輸等の犯罪者に目を光らせている。
その中、一際大きく優雅な船。
港が目に入った瞬間から否が応でも目に入るその船。
目にしたときは素直に「スゲェ」と思い。
私達を乗せた馬車がどうもその船の方へと進んでいるように見えて「まさかな」と思ったけれど、船は他にも何艘も並んでいるのだから、と。
試験のために隣国へ渡るのは私とロジーネお義姉様達、その従者達、合わせてそこにミヒャエルも加えてさえ十人に満たない。
ジークリンデ様は公爵令嬢だし、ロジーネお義姉様は侯爵令嬢、マルグリット様とて辺境伯令嬢なのだから、そこらの平民よりは旅行の荷物は多いけど、今回の目的はあくまで入学試験を受けるだけなのだから、必要最低限の荷物しかなく、私達が乗るこの馬車の後ろに4台ほどが連なるだけ。
……本来なら一人につき十台並べても足りない位が貴族令嬢の当たり前なのだというから、どれだけ少ないか分かって貰えるかしらね?
まぁ、前世含めた平民感覚ではそれでもびっくりだけど。
この程度の人員と荷物なら、普通の定期船で充分に間に合う。
……まぁ、フライハイト王国との定期旅客船なんて無いに等しいのだから、チャーターするか商船に乗せてもらうかだろうな~と思っていたのにですよ?
「やぁ、お嬢様方、お待ちしていましたよ。もちろんカイ殿も。愚息は……、まぁ彼女達のエスコート役ご苦労だったね?」
にこにこ微笑む紳士が出迎えてくれたのは、今港に停泊している船の中一番大きく立派な帆船だった。
流石に軍船ではないようで、沖で睨みを利かせているセイントランド聖国軍の軍船に比べれば少し小ぶりだけれど、設えの質は段違いだ。
「……その笑顔、胡散臭いよ。宮廷の古い狸が相手なら良いけど、ここにいるのはご令嬢方だよ?」
その紳士――フライハイト王国の大使にミヒャエルが渋い顔をする。
「しかし、ただのご令嬢ではないよね?
ジークリンデ嬢は将来の第二王子妃、ロジーネ嬢は第二王子補佐の奥方、マルグリット嬢は将軍の奥方……。
社交ではそこらの喚くしか能のない狸より余程も敵に回したくない方々だと私は考える。
ミヒャエル、目の前の目に見える物だけで判断するのは良くないよ。
外交を担うなら尚更に。
自分の背後に居る者と、目の前の者の周囲と先、それらを踏まえて考え行動する癖をつけなさい」
「……はい」
大使は声を荒げる事なく論理的にミヒャエルを諭す。
ミヒャエルは悔しげだがそれでもその応えを返した。
「さて、君達には記念すべき我がフライハイト王国とセイントランド聖国の平和な未来の礎となって貰わねばならない。
で、あるからして我が国の威信をかけてお送りせよとの本国からのお達しにより、いまこのセイントランド聖国に向かわせて問題のない船のうち一番上等なのを用意させていただきましたよ」
「道理で、型落ちの船のはずだ。
そりゃそうか、下手に最新式の船なんかで乗り付けたらまたいらん難癖つけられかねないし」
「こ、これで型落ち……?」
マルグリット様がミヒャエルの呟きを拾い愕然とする。
「これは……楽しみではあるが、少し恐ろしくもあるな……」
そのマルグリット様の言葉にロジーネお義姉様とジークリンデ様も頷いた。
「さぁ、間もなく出港だ。
荷物の積み込み船員にまかせて、船へどうぞ。
私はこの港でお見送りだから、一緒に乗っては行けないけど、ミヒャエルに案内は任せてあるから。
頼んだよ?」
「……言われるまでもないよ」
そして、ガタイの良いお兄さん達が手際よく荷物を運び込み、バサリと船の帆が風に翻る音がして。
船は、静かに動き出すのだった。
それを前に私――フィリーネは言葉を無くした。
あの地獄の筋肉痛その他からも開放されてすぐ、私達は入学試験を受ける為、隣国のフライハイト王国にある試験会場へ赴く事になった。
そして、その隣国フライハイト王国に行くには国境を分かつこの広大な湖を渡らねばならない。
「いやもう、湖ってか海だよね? 向こう岸なんて見えないし」
海との違いなんて、淡水か潮水かってだけじゃないの?
いや、隣の地方との境になってる2つの川、ノーブル川やノエル川も日本の小川の感覚でつい想像してしまうけど、教科書を読む限りは長江とか黄河とか、外国の大河の方を想像するほうが近いかもしれない姿っぽいんだけど。
日本最大と言われていた琵琶湖すら庭の池に見えそうな規模感の、その広大な湖に面する、セイントランド聖国の港の一つがこのエンデ港。
聖都お膝元の港とあって、客船や商船が行き交い、沖では軍船が賊の船や密航、密輸等の犯罪者に目を光らせている。
その中、一際大きく優雅な船。
港が目に入った瞬間から否が応でも目に入るその船。
目にしたときは素直に「スゲェ」と思い。
私達を乗せた馬車がどうもその船の方へと進んでいるように見えて「まさかな」と思ったけれど、船は他にも何艘も並んでいるのだから、と。
試験のために隣国へ渡るのは私とロジーネお義姉様達、その従者達、合わせてそこにミヒャエルも加えてさえ十人に満たない。
ジークリンデ様は公爵令嬢だし、ロジーネお義姉様は侯爵令嬢、マルグリット様とて辺境伯令嬢なのだから、そこらの平民よりは旅行の荷物は多いけど、今回の目的はあくまで入学試験を受けるだけなのだから、必要最低限の荷物しかなく、私達が乗るこの馬車の後ろに4台ほどが連なるだけ。
……本来なら一人につき十台並べても足りない位が貴族令嬢の当たり前なのだというから、どれだけ少ないか分かって貰えるかしらね?
まぁ、前世含めた平民感覚ではそれでもびっくりだけど。
この程度の人員と荷物なら、普通の定期船で充分に間に合う。
……まぁ、フライハイト王国との定期旅客船なんて無いに等しいのだから、チャーターするか商船に乗せてもらうかだろうな~と思っていたのにですよ?
「やぁ、お嬢様方、お待ちしていましたよ。もちろんカイ殿も。愚息は……、まぁ彼女達のエスコート役ご苦労だったね?」
にこにこ微笑む紳士が出迎えてくれたのは、今港に停泊している船の中一番大きく立派な帆船だった。
流石に軍船ではないようで、沖で睨みを利かせているセイントランド聖国軍の軍船に比べれば少し小ぶりだけれど、設えの質は段違いだ。
「……その笑顔、胡散臭いよ。宮廷の古い狸が相手なら良いけど、ここにいるのはご令嬢方だよ?」
その紳士――フライハイト王国の大使にミヒャエルが渋い顔をする。
「しかし、ただのご令嬢ではないよね?
ジークリンデ嬢は将来の第二王子妃、ロジーネ嬢は第二王子補佐の奥方、マルグリット嬢は将軍の奥方……。
社交ではそこらの喚くしか能のない狸より余程も敵に回したくない方々だと私は考える。
ミヒャエル、目の前の目に見える物だけで判断するのは良くないよ。
外交を担うなら尚更に。
自分の背後に居る者と、目の前の者の周囲と先、それらを踏まえて考え行動する癖をつけなさい」
「……はい」
大使は声を荒げる事なく論理的にミヒャエルを諭す。
ミヒャエルは悔しげだがそれでもその応えを返した。
「さて、君達には記念すべき我がフライハイト王国とセイントランド聖国の平和な未来の礎となって貰わねばならない。
で、あるからして我が国の威信をかけてお送りせよとの本国からのお達しにより、いまこのセイントランド聖国に向かわせて問題のない船のうち一番上等なのを用意させていただきましたよ」
「道理で、型落ちの船のはずだ。
そりゃそうか、下手に最新式の船なんかで乗り付けたらまたいらん難癖つけられかねないし」
「こ、これで型落ち……?」
マルグリット様がミヒャエルの呟きを拾い愕然とする。
「これは……楽しみではあるが、少し恐ろしくもあるな……」
そのマルグリット様の言葉にロジーネお義姉様とジークリンデ様も頷いた。
「さぁ、間もなく出港だ。
荷物の積み込み船員にまかせて、船へどうぞ。
私はこの港でお見送りだから、一緒に乗っては行けないけど、ミヒャエルに案内は任せてあるから。
頼んだよ?」
「……言われるまでもないよ」
そして、ガタイの良いお兄さん達が手際よく荷物を運び込み、バサリと船の帆が風に翻る音がして。
船は、静かに動き出すのだった。
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