ざまぁ系ヒロインに転生したけど、悪役令嬢と仲良くなったので、隣国に亡命して健全生活目指します!

彩世幻夜

文字の大きさ
45 / 114
私、ざまぁ系ヒロインに転生してしまったかも……!?

エンデ港

しおりを挟む
 これは……、大きいわね……。

 それを前に私――フィリーネは言葉を無くした。
 あの地獄の筋肉痛その他からも開放されてすぐ、私達は入学試験を受ける為、隣国のフライハイト王国にある試験会場へ赴く事になった。
 そして、その隣国フライハイト王国に行くには国境を分かつこの広大な湖を渡らねばならない。

 「いやもう、湖ってか海だよね? 向こう岸なんて見えないし」

 海との違いなんて、淡水か潮水かってだけじゃないの?
 いや、隣の地方との境になってる2つの川、ノーブル川やノエル川も日本の小川の感覚でつい想像してしまうけど、教科書を読む限りは長江とか黄河とか、外国の大河の方を想像するほうが近いかもしれない姿っぽいんだけど。

 日本最大と言われていた琵琶湖すら庭の池に見えそうな規模感の、その広大な湖に面する、セイントランド聖国の港の一つがこのエンデ港。
 聖都お膝元の港とあって、客船や商船が行き交い、沖では軍船が賊の船や密航、密輸等の犯罪者に目を光らせている。

 その中、一際大きく優雅な船。
 港が目に入った瞬間から否が応でも目に入るその船。

 目にしたときは素直に「スゲェ」と思い。
 私達を乗せた馬車がどうもその船の方へと進んでいるように見えて「まさかな」と思ったけれど、船は他にも何艘も並んでいるのだから、と。

 試験のために隣国へ渡るのは私とロジーネお義姉様達、その従者達、合わせてそこにミヒャエルも加えてさえ十人に満たない。

 ジークリンデ様は公爵令嬢だし、ロジーネお義姉様は侯爵令嬢、マルグリット様とて辺境伯令嬢なのだから、そこらの平民よりは旅行の荷物は多いけど、今回の目的はあくまで入学試験を受けるだけなのだから、必要最低限の荷物しかなく、私達が乗るこの馬車の後ろに4台ほどが連なるだけ。
 ……本来なら一人につき十台並べても足りない位が貴族令嬢の当たり前なのだというから、どれだけ少ないか分かって貰えるかしらね?

 まぁ、前世含めた平民感覚ではそれでもびっくりだけど。

 この程度の人員と荷物なら、普通の定期船で充分に間に合う。
 ……まぁ、フライハイト王国との定期旅客船なんて無いに等しいのだから、チャーターするか商船に乗せてもらうかだろうな~と思っていたのにですよ?

 「やぁ、お嬢様方、お待ちしていましたよ。もちろんカイ殿も。愚息は……、まぁ彼女達のエスコート役ご苦労だったね?」

 にこにこ微笑む紳士が出迎えてくれたのは、今港に停泊している船の中一番大きく立派な帆船だった。
 流石に軍船ではないようで、沖で睨みを利かせているセイントランド聖国軍の軍船に比べれば少し小ぶりだけれど、設えの質は段違いだ。

 「……その笑顔、胡散臭いよ。宮廷の古い狸が相手なら良いけど、ここにいるのはご令嬢方だよ?」

 その紳士――フライハイト王国の大使にミヒャエルが渋い顔をする。

 「しかし、ただのご令嬢ではないよね?
 ジークリンデ嬢は将来の第二王子妃、ロジーネ嬢は第二王子補佐の奥方、マルグリット嬢は将軍の奥方……。
 社交ではそこらの喚くしか能のない狸より余程も敵に回したくない方々だと私は考える。
 ミヒャエル、目の前の目に見える物だけで判断するのは良くないよ。
 外交を担うなら尚更に。
 自分の背後に居る者と、目の前の者の周囲と先、それらを踏まえて考え行動する癖をつけなさい」

 「……はい」

 大使は声を荒げる事なく論理的にミヒャエルを諭す。
 ミヒャエルは悔しげだがそれでもその応えを返した。

 「さて、君達には記念すべき我がフライハイト王国とセイントランド聖国の平和な未来の礎となって貰わねばならない。
 で、あるからして我が国の威信をかけてお送りせよとの本国からのお達しにより、いまこのセイントランド聖国に向かわせて問題のない船のうち一番上等なのを用意させていただきましたよ」

 「道理で、型落ちの船のはずだ。
 そりゃそうか、下手に最新式の船なんかで乗り付けたらまたいらん難癖つけられかねないし」

 「こ、これで型落ち……?」
 マルグリット様がミヒャエルの呟きを拾い愕然とする。

 「これは……楽しみではあるが、少し恐ろしくもあるな……」
 そのマルグリット様の言葉にロジーネお義姉様とジークリンデ様も頷いた。

 「さぁ、間もなく出港だ。
 荷物の積み込み船員にまかせて、船へどうぞ。
 私はこの港でお見送りだから、一緒に乗っては行けないけど、ミヒャエルに案内は任せてあるから。
 頼んだよ?」

 「……言われるまでもないよ」

 そして、ガタイの良いお兄さん達が手際よく荷物を運び込み、バサリと船の帆が風に翻る音がして。
 船は、静かに動き出すのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

虐殺者の称号を持つ戦士が元公爵令嬢に雇われました

オオノギ
ファンタジー
【虐殺者《スレイヤー》】の汚名を着せられた王国戦士エリクと、 【才姫《プリンセス》】と帝国内で謳われる公爵令嬢アリア。 互いに理由は違いながらも国から追われた先で出会い、 戦士エリクはアリアの護衛として雇われる事となった。 そして安寧の地を求めて二人で旅を繰り広げる。 暴走気味の前向き美少女アリアに振り回される戦士エリクと、 不器用で愚直なエリクに呆れながらも付き合う元公爵令嬢アリア。 凸凹コンビが織り成し紡ぐ異世界を巡るファンタジー作品です。

【完結】悪役令嬢の妹に転生しちゃったけど推しはお姉様だから全力で断罪破滅から守らせていただきます!

くま
恋愛
え?死ぬ間際に前世の記憶が戻った、マリア。 ここは前世でハマった乙女ゲームの世界だった。 マリアが一番好きなキャラクターは悪役令嬢のマリエ! 悪役令嬢マリエの妹として転生したマリアは、姉マリエを守ろうと空回り。王子や執事、騎士などはマリアにアプローチするものの、まったく鈍感でアホな主人公に周りは振り回されるばかり。 少しずつ成長をしていくなか、残念ヒロインちゃんが現る!! ほんの少しシリアスもある!かもです。 気ままに書いてますので誤字脱字ありましたら、すいませんっ。 月に一回、二回ほどゆっくりペースで更新です(*≧∀≦*)

【完結】ヒロインに転生しましたが、モブのイケオジが好きなので、悪役令嬢の婚約破棄を回避させたつもりが、やっぱり婚約破棄されている。

樹結理(きゆり)
恋愛
「アイリーン、貴女との婚約は破棄させてもらう」 大勢が集まるパーティの場で、この国の第一王子セルディ殿下がそう宣言した。 はぁぁあ!? なんでどうしてそうなった!! 私の必死の努力を返してー!! 乙女ゲーム『ラベルシアの乙女』の世界に転生してしまった日本人のアラサー女子。 気付けば物語が始まる学園への入学式の日。 私ってヒロインなの!?攻略対象のイケメンたちに囲まれる日々。でも!私が好きなのは攻略対象たちじゃないのよー!! 私が好きなのは攻略対象でもなんでもない、物語にたった二回しか出てこないイケオジ! 所謂モブと言っても過言ではないほど、関わることが少ないイケオジ。 でもでも!せっかくこの世界に転生出来たのなら何度も見たイケメンたちよりも、レアなイケオジを!! 攻略対象たちや悪役令嬢と友好的な関係を築きつつ、悪役令嬢の婚約破棄を回避しつつ、イケオジを狙う十六歳、侯爵令嬢! 必死に悪役令嬢の婚約破棄イベントを回避してきたつもりが、なんでどうしてそうなった!! やっぱり婚約破棄されてるじゃないのー!! 必死に努力したのは無駄足だったのか!?ヒロインは一体誰と結ばれるのか……。 ※この物語は作者の世界観から成り立っております。正式な貴族社会をお望みの方はご遠慮ください。 ※この作品は小説家になろう、カクヨムで完結済み。

《完》義弟と継母をいじめ倒したら溺愛ルートに入りました。何故に?

桐生桜月姫
恋愛
公爵令嬢たるクラウディア・ローズバードは自分の前に現れた天敵たる天才な義弟と継母を追い出すために、たくさんのクラウディアの思う最高のいじめを仕掛ける。 だが、義弟は地味にずれているクラウディアの意地悪を糧にしてどんどん賢くなり、継母は陰ながら?クラウディアをものすっごく微笑ましく眺めて溺愛してしまう。 「もう!どうしてなのよ!!」 クラウディアが気がつく頃には外堀が全て埋め尽くされ、大変なことに!? 天然混じりの大人びている?少女と、冷たい天才義弟、そして変わり者な継母の家族の行方はいかに!?

小説主人公の悪役令嬢の姉に転生しました〜モブのはずが第一王子に一途に愛されています〜

みかん桜
恋愛
第一王子と妹が並んでいる姿を見て前世を思い出したリリーナ。 ここは、乙女ゲームが舞台の小説の世界だった。 悪役令嬢が主役で、破滅を回避して幸せを掴む——そんな物語。 私はその主人公の姉。しかもゲームの妹が、悪役令嬢になった原因の1つが姉である私だったはず。 とはいえ私はただのモブ。 この世界のルールから逸脱せず、無難に生きていこうと決意したのに……なぜか第一王子に執着されている。 ……そういえば、元々『姉の婚約者を奪った』って設定だったような……? ※2025年5月に副題を追加しました。

疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!

ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。 退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた! 私を陥れようとする兄から逃れ、 不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。 逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋? 異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。 この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?

【本編完結】伯爵令嬢に転生して命拾いしたけどお嬢様に興味ありません!

ななのん
恋愛
早川梅乃、享年25才。お祭りの日に通り魔に刺されて死亡…したはずだった。死後の世界と思いしや目が覚めたらシルキア伯爵の一人娘、クリスティナに転生!きらきら~もふわふわ~もまったく興味がなく本ばかり読んでいるクリスティナだが幼い頃のお茶会での暴走で王子に気に入られ婚約者候補にされてしまう。つまらない生活ということ以外は伯爵令嬢として不自由ない毎日を送っていたが、シルキア家に養女が来た時からクリスティナの知らぬところで運命が動き出す。気がついた時には退学処分、伯爵家追放、婚約者候補からの除外…―― それでもクリスティナはやっと人生が楽しくなってきた!と前を向いて生きていく。 ※本編完結してます。たまに番外編などを更新してます。

悪役令嬢ってもっとハイスペックだと思ってた

nionea
恋愛
 ブラック企業勤めの日本人女性ミキ、享年二十五歳は、   死んだ  と、思ったら目が覚めて、  悪役令嬢に転生してざまぁされる方向まっしぐらだった。   ぽっちゃり(控えめな表現です)   うっかり (婉曲的な表現です)   マイペース(モノはいいようです)    略してPUMな侯爵令嬢ファランに転生してしまったミキは、  「デブでバカでワガママって救いようねぇわ」  と、落ち込んでばかりもいられない。  今後の人生がかかっている。  果たして彼女は身に覚えはないが散々やらかしちゃった今までの人生を精算し、生き抜く事はできるのか。  ※恋愛のスタートまでがだいぶ長いです。 ’20.3.17 追記  更新ミスがありました。  3.16公開の77の本文が78の内容になっていました。  本日78を公開するにあたって気付きましたので、77を正規の内容に変え、78を公開しました。  大変失礼いたしました。77から再度お読みいただくと話がちゃんとつながります。  ご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした。

処理中です...