ざまぁ系ヒロインに転生したけど、悪役令嬢と仲良くなったので、隣国に亡命して健全生活目指します!

彩世幻夜

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就活成功させて亡命しよう!

時には勢いも必要らしい

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 ……気まずい。

 結局あれから横になってもちっとも眠れず、翌朝を迎えてしまっての今だ。
 それはミヒャエルも同様だったらしく、目が若干血走っている。

 悪い事に、事前に分かっていた事とはいえここは狭い馬車の中。
 昨日も列車のボックス席で似たように向かい合わせで座っていたとはいえ、同じ車両の中には他のお客さんも居た上、スペース的にももう少し余裕があった。

 揺れも昨日の列車より激しい馬車の中、ともすれば互いの膝と膝がごっつんこする距離感で、外の御者席にいる御者以外に人の居ない状況。

 泣きたい。
 てか、寝不足で目がショボショボしてるから、実際目は潤んでいる。

 あぁ、寝不足もストレスも、美肌にもダイエットにも健康にもよろしくないのに。
 そういう商売をするための土地を見に行くというのにこれじゃあ幸先が悪すぎる。

 
 しかもまだ街を出たばかりで道もしっかりしているけれど、街を離れれば離れるほど悪路になり、揺れも更に酷くなるのは分かっている。
 このままの雰囲気で視察とか嫌だから!

 ここは一つ。私が腹をくくるしかない。
 意を決して顔を上げ、ミヒャエルの顔を真正面から正視する。

 「え、え、何、どうした?」
 その勢いに圧されたミヒャエルは及び腰に、狭い座席で知りをモゾモゾさせて後退しようとするもそんな余裕がある訳もなく。

 あたふたしつつも、ミヒャエルの顔は相変わらず綺麗だ。
 でも私は面食いじゃない。顔に絆される様な初心な娘でもない。

 「私、ミヒャエルの事、嫌いじゃないよ」

 だから、端的に今の自分の気持ちを言葉にする。

 「私、今は侯爵家の養女だけど、元は平民で……それも娼婦の娘で実の父親も定かじゃない。
 この国に亡命したら、また平民に戻る。
 貴族なら親の決めた政略結婚も当たり前かもしれないけど、大半の平民はそうじゃない。
 結婚する前に彼氏彼女としてお付き合いして、それで相性諸々確認してから……ってのがお約束だと思うの。
 だからさ、ミヒャエル。
 まずは、私の彼氏になってよ」

 私、フィリーネの一世一代の告白だ。
 つい勢い余ってずいずいとミヒャエルに迫り、顔を近づけているのも自覚しないまま私は宣った。

 「え、良いの!?」

 最初こそ怯えた様子だったミヒャエルは、嬉しそうににぱっと微笑んだ。

 「いや、それは私の言うことだけど。ミヒャエルこそ貴族ならもっと形式張ってるものじゃないの、こういう事って」

 「いや、僕も養子だし。
 勿論不倫だとか公序良俗に反した交際はご法度だけど、法律や倫理上問題なければとやかく言われる事はないよ。
 むしろいざというときエスコート出来る女性が居ない方がとやかく言われる」

 こうして。狭い馬車の中、私達は彼氏彼女になり。
 そっと控えめに馬車の座席の上で手を握り合ったのだった。
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