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4話ケーキ♪ケーキ♪
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現在時刻1時20分。此処へ来たのが正午を過ぎたあたりで、それからお風呂に入り、チャーハンを食べ、色々あって今わたしは…キッチンに立っている。何故かと聞かれたら理由はたくさんあるが、強いていうならこれだろう。ひとえに‘ハルトの為’に他ならない。
先程の甘いものの話を振り返ってみる。
「僕はやっぱりチョコケーキが好きかな。チョコホイップとチョコクリームがスポンジによく合っててさ!胡桃とか苺とか入ってるのもまた違う味わいがあっていいよね!」
ハルトは甘いものの話になると饒舌になるらしい。
「わたしは…ミルクレープ…が、1番…好き…です」
「う~んーーーミルクレープも捨てがたいよね!あの一層一層をフォークで切る感覚は病みつきになるレベルだし!」
「それ…に、生クリーム…とクレープ…生地だけ…なのに」
「そう!なんであんなに美味しいんだろうね!」
「でも、作る…のが大…変です」
「やっぱりそうなんだ。ん?てことはつくったことあるの?」
「一度だけ…でも、うまく…いかなくて…」
「そっか」
「でも…チョコケーキ…なら…つくれます」
「本当!?」
「あ、でも…材料が…」
「それなら、冷蔵庫に一通り入ってると思う」
自分ではつくれないのになんで材料だけ…
「シロナ…図々しいのはわかってるんだけど…チョコケーキ、つくってもらえないかな?」
そんな子犬みたいな目でみられたら…胸の奥がキュッてした。不思議な感じだったけど、特にこれといったこともないので返事を返す。
「も、勿論…です」
先程の会話を振り返りながらも、ケーキをつくる手は休めない。今はスポンジをオーブンで焼いている。今回つくるのはスポンジをチョコでコーティングしたケーキ。ハルトには少し申し訳ないけど、クリームを塗るタイプのケーキはまた今度つくることになった。材料の都合上。ちなみにこの方法はグラサージュ・オ・ショコラ?というらしい。よく知らないけど。チーン
スポンジが焼き上がったようだ。これにもココアパウダーが使われていて、美味しそうな茶色だ。これに固く絞った濡れ布巾をかけて冷ます。冷めたら丸くカットし、チョコに取りかかる。材料はグラニュー糖、ココア、水、生クリーム、そしてゼラチン。初めにグラニュー糖とココアを混ぜ、水、生クリームを入れて空気が入らないよう静かに混ぜる。2分程弱火にかけて、ゼラチンを加える。たまにかき混ぜながら冷えるのを待つ。35度くらいになったらスポンジにチョコをかける。後は冷蔵庫でよく冷やせば完成。その後片付けをしてハルトの様子を覗いてみた。
ハルトは書斎にいたはず。そう思って書斎のドアを静かに開けると、そこには…
誰もいなかった。
わたしは訳がわからず数秒固まって、再起動した頭に浮かんだのは両親の顔だった。ただしそれは笑顔でも泣き顔でもなく、ただただ冷ややかな目をした、わたしの親ではない誰かだった。またわたしは捨てられたのだろうか…そんなことが一瞬頭をよぎった。しかし、それはすぐさま断じられた。わたしは新しいわたしをくれたハルトを信じる。そう決めた。
「あれ?シロナ?」
ほら、やっぱりこの人はわたしを捨てない。裏切らない。
「ケーキ…今冷やして…て、様子…みようと…」
「そっか。ありがとう。お疲れ様シロナ」
チョコの甘い香りが、キッチンとは遠いはずの書斎でほのかに香った。
先程の甘いものの話を振り返ってみる。
「僕はやっぱりチョコケーキが好きかな。チョコホイップとチョコクリームがスポンジによく合っててさ!胡桃とか苺とか入ってるのもまた違う味わいがあっていいよね!」
ハルトは甘いものの話になると饒舌になるらしい。
「わたしは…ミルクレープ…が、1番…好き…です」
「う~んーーーミルクレープも捨てがたいよね!あの一層一層をフォークで切る感覚は病みつきになるレベルだし!」
「それ…に、生クリーム…とクレープ…生地だけ…なのに」
「そう!なんであんなに美味しいんだろうね!」
「でも、作る…のが大…変です」
「やっぱりそうなんだ。ん?てことはつくったことあるの?」
「一度だけ…でも、うまく…いかなくて…」
「そっか」
「でも…チョコケーキ…なら…つくれます」
「本当!?」
「あ、でも…材料が…」
「それなら、冷蔵庫に一通り入ってると思う」
自分ではつくれないのになんで材料だけ…
「シロナ…図々しいのはわかってるんだけど…チョコケーキ、つくってもらえないかな?」
そんな子犬みたいな目でみられたら…胸の奥がキュッてした。不思議な感じだったけど、特にこれといったこともないので返事を返す。
「も、勿論…です」
先程の会話を振り返りながらも、ケーキをつくる手は休めない。今はスポンジをオーブンで焼いている。今回つくるのはスポンジをチョコでコーティングしたケーキ。ハルトには少し申し訳ないけど、クリームを塗るタイプのケーキはまた今度つくることになった。材料の都合上。ちなみにこの方法はグラサージュ・オ・ショコラ?というらしい。よく知らないけど。チーン
スポンジが焼き上がったようだ。これにもココアパウダーが使われていて、美味しそうな茶色だ。これに固く絞った濡れ布巾をかけて冷ます。冷めたら丸くカットし、チョコに取りかかる。材料はグラニュー糖、ココア、水、生クリーム、そしてゼラチン。初めにグラニュー糖とココアを混ぜ、水、生クリームを入れて空気が入らないよう静かに混ぜる。2分程弱火にかけて、ゼラチンを加える。たまにかき混ぜながら冷えるのを待つ。35度くらいになったらスポンジにチョコをかける。後は冷蔵庫でよく冷やせば完成。その後片付けをしてハルトの様子を覗いてみた。
ハルトは書斎にいたはず。そう思って書斎のドアを静かに開けると、そこには…
誰もいなかった。
わたしは訳がわからず数秒固まって、再起動した頭に浮かんだのは両親の顔だった。ただしそれは笑顔でも泣き顔でもなく、ただただ冷ややかな目をした、わたしの親ではない誰かだった。またわたしは捨てられたのだろうか…そんなことが一瞬頭をよぎった。しかし、それはすぐさま断じられた。わたしは新しいわたしをくれたハルトを信じる。そう決めた。
「あれ?シロナ?」
ほら、やっぱりこの人はわたしを捨てない。裏切らない。
「ケーキ…今冷やして…て、様子…みようと…」
「そっか。ありがとう。お疲れ様シロナ」
チョコの甘い香りが、キッチンとは遠いはずの書斎でほのかに香った。
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