奴隷と過ごす毎日

宝。

文字の大きさ
4 / 19

4話ケーキ♪ケーキ♪

しおりを挟む
現在時刻1時20分。此処へ来たのが正午を過ぎたあたりで、それからお風呂に入り、チャーハンを食べ、色々あって今わたしは…キッチンに立っている。何故かと聞かれたら理由はたくさんあるが、強いていうならこれだろう。ひとえに‘ハルトの為’に他ならない。
先程の甘いものの話を振り返ってみる。

「僕はやっぱりチョコケーキが好きかな。チョコホイップとチョコクリームがスポンジによく合っててさ!胡桃とか苺とか入ってるのもまた違う味わいがあっていいよね!」
ハルトは甘いものの話になると饒舌になるらしい。
「わたしは…ミルクレープ…が、1番…好き…です」
「う~んーーーミルクレープも捨てがたいよね!あの一層一層をフォークで切る感覚は病みつきになるレベルだし!」
「それ…に、生クリーム…とクレープ…生地だけ…なのに」
「そう!なんであんなに美味しいんだろうね!」
「でも、作る…のが大…変です」
「やっぱりそうなんだ。ん?てことはつくったことあるの?」
「一度だけ…でも、うまく…いかなくて…」
「そっか」
「でも…チョコケーキ…なら…つくれます」
「本当!?」
「あ、でも…材料が…」
「それなら、冷蔵庫に一通り入ってると思う」
自分ではつくれないのになんで材料だけ…
「シロナ…図々しいのはわかってるんだけど…チョコケーキ、つくってもらえないかな?」
そんな子犬みたいな目でみられたら…胸の奥がキュッてした。不思議な感じだったけど、特にこれといったこともないので返事を返す。
「も、勿論…です」

先程の会話を振り返りながらも、ケーキをつくる手は休めない。今はスポンジをオーブンで焼いている。今回つくるのはスポンジをチョコでコーティングしたケーキ。ハルトには少し申し訳ないけど、クリームを塗るタイプのケーキはまた今度つくることになった。材料の都合上。ちなみにこの方法はグラサージュ・オ・ショコラ?というらしい。よく知らないけど。チーン
スポンジが焼き上がったようだ。これにもココアパウダーが使われていて、美味しそうな茶色だ。これに固く絞った濡れ布巾をかけて冷ます。冷めたら丸くカットし、チョコに取りかかる。材料はグラニュー糖、ココア、水、生クリーム、そしてゼラチン。初めにグラニュー糖とココアを混ぜ、水、生クリームを入れて空気が入らないよう静かに混ぜる。2分程弱火にかけて、ゼラチンを加える。たまにかき混ぜながら冷えるのを待つ。35度くらいになったらスポンジにチョコをかける。後は冷蔵庫でよく冷やせば完成。その後片付けをしてハルトの様子を覗いてみた。
ハルトは書斎にいたはず。そう思って書斎のドアを静かに開けると、そこには…
誰もいなかった。
わたしは訳がわからず数秒固まって、再起動した頭に浮かんだのは両親の顔だった。ただしそれは笑顔でも泣き顔でもなく、ただただ冷ややかな目をした、わたしの親ではない誰かだった。またわたしは捨てられたのだろうか…そんなことが一瞬頭をよぎった。しかし、それはすぐさま断じられた。わたしは新しいわたしをくれたハルトを信じる。そう決めた。
「あれ?シロナ?」
ほら、やっぱりこの人はわたしを捨てない。裏切らない。
「ケーキ…今冷やして…て、様子…みようと…」
「そっか。ありがとう。お疲れ様シロナ」
チョコの甘い香りが、キッチンとは遠いはずの書斎でほのかに香った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

まなの秘密日記

到冠
大衆娯楽
胸の大きな〇学生の一日を描いた物語です。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

処理中です...