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薬草園の夫婦
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俺の名前はアダマンテ。
王都から遠く離れた南の街で、夫婦で薬草園を営んでいる。
妻のハンナは若い頃、それなりに美しい器量良しだった。
その片鱗は今も残っていて、性格は今も昔も変わらず明るくて優しい。
薬草園をはじめて間もない頃は、種類によって必要な土の性質や肥料に失敗して、何度も枯らしてしまうこともあったが、今では栽培も安定して出荷出来るようになっている。
ほぼ毎日の水やりと、傷んだ葉の処理や間引き。
地味な薬草園の作業も嫌がりもせず、一緒に付き合ってくれた。
その甲斐あって、今では安定して魔力豊富で瑞々しい薬草を栽培できている。
そんなハンナだが、ひとつだけ俺が不満に感じていることがある。
料理が好きで、ほぼ毎日、手作りの食事を振る舞ってくれるのは良いのだが、彼女の作る料理は時々、とても独創的になる。
個性的というべきか。
何事にも前向きで、明るい彼女らしさと言えなくもない創作料理。
コッコ肉のカラッと揚げや、雉肉の煮込み汁。
炒め野菜にスープ、どれも旨いものばかり。
普通に料理してくれるときは、あれほど美味しいものが作れる彼女だが、何を思うのか時々新しい料理を思い付いてしまうのだ。
まさに魔が差すというのに相応しい。
最近の彼女の流行は、規格外で商品にならない薬草を使った創作料理。
はじめは勿体ないという思いから、野菜のようにスープに足したりする程度だったのに、最近は使い方が大胆になってきて、余計な隠し味まで入っている。
隠し味の正体はわからないが、兎に角物凄く苦くて、薬草の苦味と俺には良さのわからない、絶妙なハーモニーを奏でている。
晩飯の時間になって、ハンナが食事の仕度をはじめ、楽しげな鼻歌が厨房から聞こえる。
しばらくして出てきた料理を恐る恐る俺は見る。
テーブルの中央に置かれたのは、大皿に盛られた肉料理。
「今日は貴方の好物のコッコのカラッと揚げにしたよ。召し上がれ」
「美味しそうだ!」
俺は安堵して早速食事を始める。
大豆のスープと、野菜の付け合わせ、ふかした芋。
どれも好物ばかりだ。
厨房の奥の台に置かれた、布のかかった籠には出来るだけ視線を向けないように、俺は細心の注意を払った。
うっかり視線を向けてみろ、絶対に別の皿が出てきて、先に食わされてしまうに違いないからだ。
あれは明日、手伝いにやって来てくれるリックくんに食べてもらうと決めている。
リックくんはまだ幼いのに、よく働いてくれるし、彼女の料理の良き理解者だ。
夫である俺よりも。
俺はハンナに悟られないように、早く朝がやってくることを神さまに祈った。
明日になれば、リックくんが何もかもきれいさっぱり、美味しく食べてくれるだろう。
それで俺たちの平和が保たれるのだから、リックくんは俺たち夫婦の救世主に違いない。
王都から遠く離れた南の街で、夫婦で薬草園を営んでいる。
妻のハンナは若い頃、それなりに美しい器量良しだった。
その片鱗は今も残っていて、性格は今も昔も変わらず明るくて優しい。
薬草園をはじめて間もない頃は、種類によって必要な土の性質や肥料に失敗して、何度も枯らしてしまうこともあったが、今では栽培も安定して出荷出来るようになっている。
ほぼ毎日の水やりと、傷んだ葉の処理や間引き。
地味な薬草園の作業も嫌がりもせず、一緒に付き合ってくれた。
その甲斐あって、今では安定して魔力豊富で瑞々しい薬草を栽培できている。
そんなハンナだが、ひとつだけ俺が不満に感じていることがある。
料理が好きで、ほぼ毎日、手作りの食事を振る舞ってくれるのは良いのだが、彼女の作る料理は時々、とても独創的になる。
個性的というべきか。
何事にも前向きで、明るい彼女らしさと言えなくもない創作料理。
コッコ肉のカラッと揚げや、雉肉の煮込み汁。
炒め野菜にスープ、どれも旨いものばかり。
普通に料理してくれるときは、あれほど美味しいものが作れる彼女だが、何を思うのか時々新しい料理を思い付いてしまうのだ。
まさに魔が差すというのに相応しい。
最近の彼女の流行は、規格外で商品にならない薬草を使った創作料理。
はじめは勿体ないという思いから、野菜のようにスープに足したりする程度だったのに、最近は使い方が大胆になってきて、余計な隠し味まで入っている。
隠し味の正体はわからないが、兎に角物凄く苦くて、薬草の苦味と俺には良さのわからない、絶妙なハーモニーを奏でている。
晩飯の時間になって、ハンナが食事の仕度をはじめ、楽しげな鼻歌が厨房から聞こえる。
しばらくして出てきた料理を恐る恐る俺は見る。
テーブルの中央に置かれたのは、大皿に盛られた肉料理。
「今日は貴方の好物のコッコのカラッと揚げにしたよ。召し上がれ」
「美味しそうだ!」
俺は安堵して早速食事を始める。
大豆のスープと、野菜の付け合わせ、ふかした芋。
どれも好物ばかりだ。
厨房の奥の台に置かれた、布のかかった籠には出来るだけ視線を向けないように、俺は細心の注意を払った。
うっかり視線を向けてみろ、絶対に別の皿が出てきて、先に食わされてしまうに違いないからだ。
あれは明日、手伝いにやって来てくれるリックくんに食べてもらうと決めている。
リックくんはまだ幼いのに、よく働いてくれるし、彼女の料理の良き理解者だ。
夫である俺よりも。
俺はハンナに悟られないように、早く朝がやってくることを神さまに祈った。
明日になれば、リックくんが何もかもきれいさっぱり、美味しく食べてくれるだろう。
それで俺たちの平和が保たれるのだから、リックくんは俺たち夫婦の救世主に違いない。
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