もう誰も愛さない

ルー

文字の大きさ
4 / 26

退院

しおりを挟む
「そんな・・・。でもその通りだね。あの2人が来月また来て何をするのかわからないからね。」

カンナが理解を示す。

「でも、退院には家族の承認が必要だよ。あの妹さんが承認してくれるとは限らないけど・・・。」

アンナが心配そうに言った。

「大丈夫、お父さんだけは私の味方だから。手紙を書けば来てくれるはず。」

アメリアが言うとアンナがつぶやいた。

「そっか。」







自分の病室に戻ったアメリアは机の引き出しから便箋を出し、父ルイに手紙を書き、その日のうちに出した。父ルイが精神病院を訪れたのはそれから3日後のことだった。

「アメリア、お父さんが来てるよ。」

受付係のアニーが呼びに来た。アメリアは玄関に向かい待っていた父ルイに駆け寄った。

「お父さん!」

「アメリア、すまなかった。」

会って早々の謝罪にアメリアは困惑する。

「エリナとリリアがすまなかった。あんな非常識で最低な家族だとは思わなかった。」

「お父さんが悪いわけじゃないでしょ。」

アメリアが言うと父ルイは首を振った。

「いや、違うんだ。本当に悪いのは断れなかった私なんだ。」

「どういうこと?」

アメリアが問い詰めると父ルイは語り始めた。

「私の産まれは貴族だったんだ。カーレシャス侯爵家の三男だった。三男だったからか政略結婚も求められず平民でも誰でも好きな人と結婚してよいと言われていた。ただし侯爵家が持っている爵位は1つだけでそれは次男・・・兄のイルヤの物だったから必然的に私は平民になることが決まっていた。私は領主騎士団に勤めているから町の警備も担当しているんだ。それでよくある定食屋に行っていたんだ。私はそこで働いていたアリスと恋に落ちた。付き合い始めて1年後に結婚して、定食屋の近くに家を買って暮らした。アリスとの間に産まれたのがアメリア、君だ。だからエリナから見たらアメリアは義娘になる。だけどアメリアが産まれてすぐにアリスは産褥熱でこの世を去った。男手1つで育てようかと思ったがさすがに同僚からとめられて仕方なくアリスの従妹のエリナと再婚した。エリナとの間には契約がいくつかあった。1つは白い結婚であること。私はアリス以外は愛せない。アリス以外の女性との間に子供を作ることなんてできなかった。2つ目はアメリアを育て上げること。将来アメリアが幸せになれることを願っていた。3つめはアメリアが成人したら離婚すること。その際に慰謝料として金貨30枚を支払う。私とエリナは共に寝ていない。だがエリナの妊娠が発覚した。産まれてすぐ親子鑑定をしたが私の子ではなかった。だから私はエリナが浮気の末産んだリリアの養育を行わなかった。自分の子ではないのになぜ育てなければならない?だからリリアを育てるのはすべてエリナに任せ私は1銭も出さなかった。食事代や生活するために必要なお金は出したがリリアが成人したら全額返してもらう約束だった。リリアの生活費を出す条件がアメリアが成人し離婚した後一切アメリアに関わらないことだった。エリナが自分の娘であるリリアを優遇しアメリアを貶めていたことはエリナに直接聞いて把握した。恋人の件もすべて。契約は破棄になり今までの生活費を返さなくていい代わりに離婚することになった。」

「り、離婚?お父様に悪いところがあるとは到底思えない。契約を了承したのはあの人だよ。不満あるのなら契約の時に言わないとだめだよ。」

アメリアが言うと父ルイは答えた。

「すでに離婚は成立し、アメリアの親権は私が、リリアの親権はエリナが取得した。」

「そう、なんだ。」

「退院について保護者である私が承認する。紙はありますか?」

ルイはアニーに尋ねた。

「はい、こちらです。」

アニーは書類を手渡す。胸ポケットからペンを取り出したルイは受付の前のカウンターで紙にサインした。

「これでいいですか?」

「はい。大丈夫です。」

確認したアニーがうなづいた。

「院長先生を呼んできます。」

アニーは紙をもって院長のもとに向かった。

「そうだ、アメリア。これからどこに行くんだ?」

「隣国アスラに行って夢だったクッキー屋さんをひらきたいなって思ってる。」

「・・・一緒に行ってもいいか?」

ルイの言葉にアメリアは目を見開いた。

「え?でも、お父さんは騎士だからいけないんじゃ・・・。ま、まさか。」

「ああ、騎士団を辞めてきた。あのままあそこにいたらまた絡まれそうで。嫌だったからな。ちゃんと退団理由に今までに起こったこと全部書いてきたから大丈夫だ。」

「本当に?お父さんもついてきてくれるの?」

「ああ、アメリアが良ければだが。」

ルイの言葉にアメリアは何度も頷いた。

「うん!ついてきてほしい。お父さんがいたら心強いよ。」

「良かった。じゃあ、今日にでも出発するか。」

「いえ、今日は泊っていってください。院長である私が許可します。」

現れたのはこの精神病院の院長リラエルだった。





しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】私の婚約者は、親友の婚約者に恋してる。

山葵
恋愛
私の婚約者のグリード様には好きな人がいる。 その方は、グリード様の親友、ギルス様の婚約者のナリーシャ様。 2人を見詰め辛そうな顔をするグリード様を私は見ていた。

妹だけを可愛がるなら私はいらないでしょう。だから消えます……。何でもねだる妹と溺愛する両親に私は見切りをつける。

しげむろ ゆうき
ファンタジー
誕生日に買ってもらったドレスを欲しがる妹 そんな妹を溺愛する両親は、笑顔であげなさいと言ってくる もう限界がきた私はあることを決心するのだった

【完結】私の小さな復讐~愛し合う幼馴染みを婚約させてあげましょう~

山葵
恋愛
突然、幼馴染みのハリーとシルビアが屋敷を訪ねて来た。 2人とは距離を取っていたから、こうして会うのは久し振りだ。 「先触れも無く、突然訪問してくるなんて、そんなに急用なの?」 相変わらずベッタリとくっ付きソファに座る2人を見ても早急な用事が有るとは思えない。 「キャロル。俺達、良い事を思い付いたんだよ!お前にも悪い話ではない事だ」 ハリーの思い付いた事で私に良かった事なんて合ったかしら? もう悪い話にしか思えないけれど、取り合えずハリーの話を聞いてみる事にした。

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

妹の嘘を信じて婚約破棄するのなら、私は家から出ていきます

天宮有
恋愛
平民のシャイナは妹ザロアのために働き、ザロアは家族から溺愛されていた。 ザロアの学費をシャイナが稼ぎ、その時に伯爵令息のランドから告白される。 それから数ヶ月が経ち、ザロアの嘘を信じたランドからシャイナは婚約破棄を言い渡されてしまう。 ランドはザロアと結婚するようで、そのショックによりシャイナは前世の記憶を思い出す。 今まで家族に利用されていたシャイナは、家から出ていくことを決意した。

お姉様から婚約者を奪い取ってみたかったの♪そう言って妹は笑っているけれど笑っていられるのも今のうちです

山葵
恋愛
お父様から執務室に呼ばれた。 「ミシェル…ビルダー侯爵家からご子息の婚約者をミシェルからリシェルに換えたいと言ってきた」 「まぁそれは本当ですか?」 「すまないがミシェルではなくリシェルをビルダー侯爵家に嫁がせる」 「畏まりました」 部屋を出ると妹のリシェルが意地悪い笑顔をして待っていた。 「いつもチヤホヤされるお姉様から何かを奪ってみたかったの。だから婚約者のスタイン様を奪う事にしたのよ。スタイン様と結婚できなくて残念ね♪」 残念?いえいえスタイン様なんて熨斗付けてリシェルにあげるわ!

【完結】留学先から戻って来た婚約者に存在を忘れられていました

山葵
恋愛
国王陛下の命により帝国に留学していた王太子に付いて行っていた婚約者のレイモンド様が帰国された。 王家主催で王太子達の帰国パーティーが執り行われる事が決まる。 レイモンド様の婚約者の私も勿論、従兄にエスコートされ出席させて頂きますわ。 3年ぶりに見るレイモンド様は、幼さもすっかり消え、美丈夫になっておりました。 将来の宰相の座も約束されており、婚約者の私も鼻高々ですわ! 「レイモンド様、お帰りなさいませ。留学中は、1度もお戻りにならず、便りも来ずで心配しておりましたのよ。元気そうで何よりで御座います」 ん?誰だっけ?みたいな顔をレイモンド様がされている? 婚約し顔を合わせでしか会っていませんけれど、まさか私を忘れているとかでは無いですよね!?

【完結】誕生日に花束を抱えた貴方が私にプレゼントしてくれたのは婚約解消届でした。

山葵
恋愛
誕生日パーティーの会場に現れた婚約者のレオナルド様は、大きな花束を抱えていた。 会場に居る人達は、レオナルド様が皆の前で婚約者であるカトリーヌにプレゼントするのだと思っていた。

処理中です...